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Tuesday, July 26, 2022

灰付けワカメ 多彩な味 若手がレシピ 伝統つなぐ:北陸中日新聞Web - 中日新聞

地元食材の魅力増幅(2)

 各地の伝統食は先人の経験と知恵が凝縮された財産と言える。朝日町宮崎地区特産の灰付けワカメはその代表格の一つ。江戸時代には始まっていたという製法は保存のためでありながら極上の食感と香りも生む。担い手不足で存続が危ぶまれて久しいが、伝統を絶やすまいとの地元の熱意に、若手の“応援団”がオシャレな調理法を開発、郷土の味を守り抜こうとアピールを始めた。 (中島健二)
灰付けワカメづくりのために早朝、行われるワカメ漁。担い手が激減し今年はわずか2隻の舟が出ただけだった=朝日町元屋敷で

灰付けワカメづくりのために早朝、行われるワカメ漁。担い手が激減し今年はわずか2隻の舟が出ただけだった=朝日町元屋敷で


 今春「灰付けワカメ レシピブック」と題したパンフレットが作られ話題となった。四つ折りにするとワカメ形になるかわいいデザインのパンフに写真付きで紹介されているのは灰付けワカメを使う料理五品の作り方。パスタなど若者受けを意識したものばかりだ。

 製作したのは朝日町観光協会。スタッフの上沢聖子さん(41)が発案し、友人で海産物商品販売を手がける愛場商店の愛場千恵子さん(44)にレシピを考えてもらったという。おいしそうなので愛場さんに実際に調理していただくことにした。

 灰付けワカメを生産する朝日町漁協の水島洋組合長(78)の計らいで六月に開かれた試食会がその舞台。地元の交流施設に水島さんや昨年まで漁協婦人部長を務めた竹谷てる子さん(80)、上沢さんも集まり、愛場さんがパンフに載せたレシピからいくつか披露した。
灰付けワカメを使って調理された料理を試食する、右から上沢聖子さん、水島洋組合長、竹谷てる子さん=朝日町宮崎で

灰付けワカメを使って調理された料理を試食する、右から上沢聖子さん、水島洋組合長、竹谷てる子さん=朝日町宮崎で


 冷たい麺にワカメとタコを加えレモンとオリーブオイルであえた「冷たいパスタ」、ワカメとマダイの昆布締めをしょうゆとオリーブオイル、ゆず胡椒(こしょう)で味付けした「カルパッチョ」、小さなすしを軍艦巻きのようにワカメで巻いた「手まりずし」など、見た目も味も夏らしいものばかり。
 地元の料理に詳しい竹谷さんにもワカメの刺し身や酢の物などを調理してもらい全員で試食したが、いずれも灰付けワカメのシャキシャキ感が抜群。「食感を生かせるように工夫した」という愛場さんの料理も歯応えの良さが素材の味を引き立て「若い人にも楽しんでもらえる」(上沢さん)と高く評価された。
レシピブックに載せた新メニューを調理する愛場千恵子さん。手前左から灰付けワカメを使った「冷たいパスタ」「手まりずし」「カルパッチョ」=朝日町宮崎で

レシピブックに載せた新メニューを調理する愛場千恵子さん。手前左から灰付けワカメを使った「冷たいパスタ」「手まりずし」「カルパッチョ」=朝日町宮崎で


 宮崎産の灰付けワカメは贈答品としても人気商品だが、その成長具合や、収穫してすぐわら灰をまぶし砂浜で天日干しするための気象条件から年に二、三日しか漁ができないという。このため漁業者は激減し今年出漁した舟は二隻だけ。出荷量も最近は多くて百キロほどに落ち込み、注文に追いつかない時もあるそうだ。

 水島組合長が各方面の関係者に呼びかけ存続を図っているが、わら灰の確保も難しくなるなど厳しい状況のまま。この危機を知った上沢さんが愛場さんら知人に声をかけて応援団をつくり天日干し作業などの手伝いを毎年、続けている。

 そんな流れの中で生まれた「レシピブック」。上沢さんは「多彩な楽しみ方があるので、いろんなやり方で味わって」と呼びかけ、水島組合長も「こういったものを若者にも普及させたい」と期待を込めた。

 ◇ 

 「ここにある未来」の七月の連載「地元食材の魅力増幅」、次回は二十九日に掲載します。

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