世界的にウイスキーブームが到来している昨今、2021年に日本に上陸したのが日本ではMHD モエ ヘネシー ディアジオ(MHD MOET HENNESSY DIAGEO)が輸入販売するライ・ウイスキーの「ホイッスルピッグ(WHISTLEPIG)」だ。「ホイッスルピッグ」の特徴は、原料にほぼ100%ライ麦を使用しているという点だ。
来日した「ホイッスルピッグ」のブレンダー、ミッチ・マハール(Mitch Mahar)氏によると、かつてアメリカではウイスキーといえばライ・ウイスキーが王道だったという。しかし、1920~33年に施行された禁酒法が撤廃された後は、そのお株をバーボンやモルトウイスキーなどに奪われていったという。しかし2007年に「ホイッスルピッグ」の創業者デイブ・ピッカレル(Dave Pickerell)が同ブランド立ち上げ、研究を重ねた結果、17年にはアメリカ最大の出品数を誇る「サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション」で最優秀ウイスキーの称号を獲得するなど、注目を集めている。
とはいっても日本ではまだ認知度が低いライ・ウイスキー。マハール氏にその魅力や暑い日本の夏にぴったりの飲み方を聞いた。
WWD:ライ・ウイスキーの特徴は?
ミッチ・マハール「ホイッスルピッグ」ブレンダー(以下、マハール):ライはすごく存在感があって表情豊かです。クラッシュしたブラックペッパーのようなノートにクローブやシナモンの風味も感じることができます。シングルモルトウイスキーは、シェリーやバニラ、キャラメルが強いものもありますが、ライ・ウイスキーはライ麦が持つスパイシーさが前面に出ます。
WWD:アメリカにはほかにもライ・ウイスキーのブランドはある?
マハール:ライを扱っている蒸留所はありますが、ライ麦は作業過程ですごく粘着性が強くなって扱いが難しいので、われわれのようにライ麦をメインで使うところは少なくなっています。われわれはライ麦の風味や特性にほれ込んでいるので、ライ麦を使わないという選択肢は考えたことがありません。
WWD:マハールさんが新興の「ホイッスルピッグ」に参画したきっかけや理由は?
マハール:私はワイン業界でキャリアをスタートさせたんですが、友人からバーモント州のブリュワリーで働かないかと誘われ、ビールの世界に飛び込みました。その後、「ホイッスルピッグ」からオファーが来たので即座に参画を決めました。というのも、蒸留所は部外者が非常に入り込みづらいタイトなコミュニティなので、そのチャンスが目の前に来たら絶対に逃がしてはいけないと思ったんです。
WWD:ワインとビール、ウイスキーではそれぞれ製造方法も異なるので未経験者には難しい世界だった?また、“ブレンダー”という仕事で難しい点は?
マハール:ウイスキーとビールの製造工程は途中まで似ているから、私の場合、完全にゼロからのスタートということにはならず、これまでの経験が非常に役に立ちました。ウイスキー作りで最も難しいのは蒸留の部分で、狙い通りのフレーバーを作るのが非常に難しいと感じます。
WWD:狙いどおりのフレーバーにするコツは?
マハール:第一に考えることは、ライ特有のフローラルでスパイシーなフレーバーをどうやったら引き立てられるかということ。初めのころは、原酒を味わってそれが樽の中で熟成された10年後にどんな味に変わるのかを想像することに苦戦しました。原酒はアルコール度数が高いので、ワインのように舌の上で味わうなんてこともできません。1滴でものすごいインパクトとアルコールがやってくるので、そこから10年後の完成形を想像することは非常に難しいんです。
WWD:ブレンダーとしての使命は?
マハール:私の仕事は消費者が体験したことのないフレーバーを届けることです。仕事の多くがイノベーションとも言えますね。常に新しいことを考え、これまでになかったものを生み出すことが難しくもありやりがいでもあります。
ブレンダー直伝!「ホイッスルピッグ」のオススメの飲み方
WWD:日本でも「ホイッスルピッグ」は愛される存在になれると思う?
マハール:気に入ってもらえるはずです。日本のバーテンダーは、常に新しいことに挑戦し続けていて、新しいフレーバーにも臆さない。シングルモルトやバーボンの一部はカクテルに使うとほかの素材が勝ってしまいますが、ライ・ウイスキーはそれ自体の存在感が強いから、何と組み合わせても他の素材を引き立てつつ自己主張もして、非常に良いバランス生み出してくれると思います。
WWD:カクテルでもストレートでも楽しめるということだが、オススメの飲み方は?
マハール:アメリカではハイボールはあまりメジャーではありませんが、「ホイッスルピッグ10年 スモールバッチ・ライ(以下、10年)」を使ったハイボールを試してみたらとても美味しかったです。10年は、ハイボール以外のカクテルとも非常に相性がいいと思います。
「ホイッスルピッグ 12年 オールドワールド・ライ(以下、12年)」は、それ自体でいろんなフレーバーを楽しめるので個人的にはストレートで飲むことが多いですね。でも12年を使ってカクテルの“オールドファッションド”を作るのはオススメです。12年はポートワインのような甘さがあり、カクテルに甘みをたくさん足す必要がありません。
日本の夏は暑くて湿度も高いですが、「ホイッスルピッグ 15年 エステートオーク・ライ(以下、15年)」はストレートかロックで飲むといいと思います。15年は使用する樽のおかげでハイランドスコッチのような軽いスモーキーさをかすかに感じ取ることができるので、それを楽しんでほしいですね。あと、かすかなバニラのノートも感じます。マシュマロのような感じともいえますね。
こんな感じで私のオススメをお伝えしましたが、これはあくまで1つの提案にすぎなくて、「ホイッスルピッグ」の飲み方に正解はないですし、私自身イノベーションを追求する身としても、ぜひいろんなものと合わせて楽しんでほしいと思います。
からの記事と詳細 ( “ライ・ウイスキー”ってどんな味? 「ホイッスルピッグ」ブレンダーが夏にぴったりの飲み方を伝授 - WWD JAPAN.com )
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