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Tuesday, October 4, 2022

「レモンケーキ」愛され40年 素朴で爽やかな味 鹿児島の88歳店主 「喜ぶ姿やりがい」 - 読売新聞オンライン

 鹿児島市高麗町の菓子店で40年近く「レモンケーキ」を作り続けている職人がいる。今年88歳の米寿を迎えた「 松和しょうわ 堂」店主の下薗勝志さん。素朴で爽やかな味は地元で愛されており、「体が元気な限りは作り続けたい」と意気込んでいる。

 市電「二中通」電停から西に250メートル。商店街の一角に松和堂はある。ショーケースに並ぶのはレモンケーキ一種類(1個230円)。「昔は色々作ってたんだけど、体がしんどくてね」と笑うが、老若男女の客がひっきりなしに訪れ、200~300個が夕方には完売することもある。

 阿久根市出身。中学卒業後、神戸で和洋菓子の修業を積み、1962年に鹿児島市で松和堂を開店した。最初はかるかんやまんじゅう、餅など和菓子を中心に販売していたが、時代の流れとともにマドレーヌやケーキなど洋菓子にも力を入れた。そうした中で加わったのがレモンケーキだった。

 神戸での修業時代に食べた時、「こんなきれいでおいしいお菓子があるのか」と感銘を受けた。その味を頼りに九州内の職人らに教えを請いながら作り上げた。80年代から看板商品になり、数年前からレモンケーキ一品に絞った。

 朝6時から 厨房ちゅうぼう に立ち、仕込みを始める。レモンが入った生地を型に流し込んでオーブンで焼き、酸味のあるアンズジャムと甘さを抑えたレモン味のチョコレートでコーティングする。しっとりした生地がチョコレートに包まれ、レモンの爽やかな風味が口いっぱいに広がる。

 これまでは隣で妻、 始子ともこ さんが支えてきたが、2020年に78歳で亡くなった。「妻がいてくれたら……」。寂しさから当時は店をたたむことも考えたという。

 それでも「ここのレモンケーキじゃないと満足できない」「おいしいから作り続けてほしい」といった常連の声が聞きたくて、長男・慶三さん(51)の力も借りながら店を続ける。

 小麦や砂糖といった材料が値上がりで採算は厳しい。「90歳まで」という気持ちはあるが、膝の痛みがひどく、体は悲鳴を上げている。それでも「お客さんが喜ぶ姿を見るのが何よりのやりがいだから」と、今日も 厨房ちゅうぼう に立つ。

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