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Thursday, December 8, 2022

中国からGaN on GaN技術、パワー半導体とRFの同一チップ統合狙う - ITpro

ニュース解説

IEDM 2022(米国サンフランシスコ、2022年12月3~7日)

大石 基之

日経BP総合研究所 クリーンテックラボ

全1541文字

 中国Xidian(西安電子科技)大学は、半導体製造関連で世界最大級の国際会議「International Electron Devices Meeting(IEDM) 2022」において、人工衛星開発などを手掛ける中国China Academy of Space Technology(中国空間技術研究院)と共同で、窒化ガリウム(GaN)基板上に、パワー半導体向けとRF向けの先端GaN HEMT(高電子移動度トランジスタ)を形成する統合プラットフォーム技術の研究成果を報告した。同一チップ上にパワー半導体とRF半導体を造り込んだり、同一の工場でパワー半導体やRF半導体を製造したりしやすくなる。

 GaN半導体と言えば、現在のところ、パワー半導体ではシリコン(Si)基板上にGaNトランジスタを形成したGaN on Si製品がノートパソコン向けのACアダプターなどで製品化されている。一方、RF半導体では、炭化ケイ素(SiC)基板上にGaNトランジスタを形成したGaN on SiC製品が無線基地局向けなどに搭載されている。

 ただし、Si基板やSiC基板上にGaNトランジスタを形成すると、SiやSiCとGaNの格子定数(結晶の大きさや形状を表す値)が異なることから、高密度の結晶欠陥が両者の間に挟まれるバッファ層などに生じる。これにより、電流コラプス(高出力動作をさせようとするときに、出力電流が時間的に変動したり、低下したりしてしまう現象)や動的なオン抵抗、ゲートリーク電流が発生し、RF半導体ではパワーアンプの性能低下、パワー半導体ではスイッチング性能の劣化などが起こるという課題がある。

 これに対して、今回Xidian大学などが発表した技術では、GaN基板上にGaNトランジスタを形成する、いわゆるGaN on GaN構造であるため、格子定数のミスマッチがない。電流コラプスや動的なオン抵抗を抑えられるとともに、信頼性も高められ、結果、マイクロ波やスイッチングデバイスの性能を向上できるとする(図1)。

図1 GaN on GaNの採用により高品質な結晶界面が得られている

図1 GaN on GaNの採用により高品質な結晶界面が得られている

(図:中国Xidianなどの発表資料)

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 GaN半導体技術の研究はこれまで、パワー半導体とRF半導体でそれぞれ個別に進められてきた。基板とトランジスタの間に挟むバッファ層の設計が異なるからである。パワー半導体では、高いブロッキング電圧を得るために、カーボン(C)をドープしたGaNバッファ層が使われることが多いのに対し、RF半導体では、高いドレイン電圧下でも電流コラプスを抑制するために鉄(Fe)をドープしたGaNバッファ層が使われることが多かった。

 今回、Xidian大学などは、良好な結晶層の形成に向けてパッシベーション(不動態化)の前にN2プラズマ処理を施しつつ、FeとCの双方をドープしたGaNバッファ層を用いた。これにより、同一の製造プラットフォーム上でパワー半導体とRF半導体を造り込めるようにした。採用したGaN基板は2インチで、同基板上にMOCVD法でGaN on GaNエピタキシャル層を成膜した。

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