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Saturday, May 13, 2023

食料安保は「農村政策」から 産直アプリ「ポケマル」高橋代表×明大・小田切教授が提言 - 産経ニュース

雨風太陽の高橋博之代表(右)と、明治大の小田切徳美教授(同大提供)

農政の基本方針を定めた「食料・農業・農村基本法」の約四半世紀ぶりの改正に向けた論議が進む中、3本柱の一つ、農村政策をめぐって産直アプリ「ポケットマルシェ」運営会社「雨風太陽」の高橋博之代表(48)と、明治大の小田切徳美教授(63)が音声配信メディア「Voicy(ボイシー)」で対談した。地域のファンである「関係人口」の提唱者として知られる高橋さんと、農村政策の第一人者の小田切教授は「食料安全保障のためには、農村政策を基本法にしっかりと位置づけるべきだ」と提言した。

基本法改正へ論議

高橋「平成11(1999)年制定の食料・農業・農村基本法について、農林水産省は現在、食料・農業・農村政策審議会の基本法検証部会で見直しの議論を続けている。6月に中間取りまとめを公表し、今年度中にも改正案の国会提出を目指している。見直しのポイントは、ずばり何か」

小田切「3つある。1つは食料安全保障。2つ目は資材価格の高騰の中、生産者が価格転嫁するための仕組みの必要性。そして、3つ目でより大きなポイントは、農村政策を基本法の中にどう位置づけるかだ。

というのも、現行の基本法は、法律名に農村という言葉がありながら、『農村の振興に関する施策』は全43条のうち3条しかない」

高橋「最近、愛知県の若手農業者と会ったら、こう言った。『高橋さん、これから平野部の農業は規模拡大して、スマート農業によってプロが稼げる農業をやればいい。けれど中山間地域のような条件不利地域の農業は違う。農業がもたらす国土保全や水源涵養、景観といった多面的機能は農家だけのものではない。本来は多くの人が享受すべきもので、消費者、つまり都市住民も含めて、みんなでやっていく。『農的関係人口』を増やしていく』と」

小田切「農業振興である産業政策と、農村振興である地域政策は『車の両輪』といわれる。農業という産業の土台には、多面的機能を担う農村があるためだ。農政も本来、両方がそろわなければ成り立たない。

その上で、食料安保論議で重要なのは、いまの話のように国民がさまざまな形で農業と関わることだ。もちろん専業的農業者の安定化は大変重要だが、たとえば市民農園でも、農作業ボランティア活動でもよい。多くの人が農業に対する理解を深め、共感を持つようになれば、農業という産業自体の安定につながることが期待できる」

消費者の視点を

高橋「農業の論議は生産者サイドに寄っていて、たとえばスマート農業でもいかに生産性を上げるかといった議論が行われる。だが消費者の視点をもっと考えなければならない。ポケットマルシェでは、産地直送アプリで生産者と消費者とをつなぐ活動を続けているが、消費者にとって、これだけものがあふれ生活が充足したときに、最後に残されたのは生活の質を高めることだと実感している。

消費一辺倒だった暮らしが、『この食べ物を作っているのは誰なんだろう』と生産の現場を知ることから始めて、生産者が何を守りたくて作物を作っているかを知って購入することで、消費に意味が生まれる。生産の現場へ子供を連れていって収穫体験などへ参加すれば、消費者の生活の質は間違いなく高まっていく。

いま、政府が地域活性化策の「デジタル田園都市国家構想」を進め、東京一極集中を緩和していこうとするとき、農村政策、地域政策も併せて考えていくことが必要なのではないか」

小田切「岸田文雄首相は昨年9月、首相官邸で開かれた『食料安定供給・農林水産業基盤強化本部』で、基本法の改正を見据えた見直しを指示した。ロシアのウクライナ侵攻を背景に、自国民の食を確保する食料安全保障の強化を打ち出したもので、重点政策としては次の4点を掲げた。(1)食料安保の強化(2)ITを活用したスマート農業の推進(3)農林水産物の輸出促進(4)農林水産業の脱炭素化―だ。

ここには農村政策の位置づけが見られない。だが、農業の成長産業化を追求するにしても、その担い手が地域に住み続けられる条件がなければ、安定性は期待できない。また、逆に農業が持続的に行われてこそ、美しい農村景観は維持される。産業政策と地域政策の両者のバランスと好循環が政策として意識される必要がある」

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