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Tuesday, May 9, 2023

プライシング専門組織はどのようにつくればよいのか - 日経ビジネスオンライン

 前回(「価格体系を短期目線から長期目線に プライシング専門組織の重要性」)は、提供する価値に合わせて最適な価格に変更する長期目線のプライシングを実現するためにプライシング専門組織を置くことの重要性について解説した。今回は、プライシング専門組織を立ち上げる際に、何を決めればいいのかを整理し、3つの項目に分けて解説する。

①プライシング組織の必要性、目的、目標、役割の定義

 まず初めに重要なのは、定義と周知である。プライシング組織のような新しい組織を立ち上げる場合、その組織がなぜ必要であるか、その組織の目的や目標、役割を定義し、それを周知する必要がある。

 どれだけ周到に準備された業務であったとしても、立ち上げ当初は業務負荷が高くなり、インシデントが起こることもある。組織の定義と周知がされていれば、各組織とうまく連携でき、組織の立ち上げもスムーズに進めることができるだろう。

②他部門との連携方法

 プライシング専門組織を立ち上げるに当たって、他部門との連携も重要となる。図1を見てほしい。業務はこのようにInput、Process、Outputの順番で進んでいく。

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 Inputの段階では、プライシングを行うに当たっての必要な情報(経営方針・コスト・競合・顧客・販売情報など)を円滑に取得できるように、適切な部門との連携フローを構築する必要がある。その情報を処理し、価格の検討や変更、組織構築を行う。またOutputで得られた成果物を実際に適用していくために、関係部門との連携や顧客反映までを円滑に実施することのできるフローの構築も重要である。

 補足だが、Inputの情報として販売情報(販売価格、誰に? いつ? どうやって?)を取得する必要があるのは、決定した価格が現場でのディスカウントなどが要因で意図通りに運用されないことがあり、それを検知する目的があるためだ。また「誰に?」「いつ?」「どうやって?」という情報は支払い意欲差を生むトリガーとなる場合もあり、情報は取得しておくべきである。

 例えば、「利用期間が短い顧客ほど支払い意欲が高い」「クレジットカード決済の顧客は支払い意欲が高い」「〇〇というチャネルから購買した顧客は支払い意欲が高い」といった傾向が、当社が過去に取り組んだプロジェクトで分かったことがあった。これらは、あくまでもそのビジネスにおいて分かった傾向なので、すべてのビジネスに当てはまるわけではないが、こういった変数も支払い意欲に影響を与えるトリガーになり得るということである。

新設か既存組織に設置か

③プライシング組織の位置づけ

 組織を立ち上げると言っても、組織を新設する場合と既存組織内に設置する場合がある。そのどちらかを選ぶことで、その組織での推進力や意思決定のスピードが異なるため、プライシング組織を、どう位置づけたいかによって比較検討する必要がある。

 ここからは図2を参照してほしい。組織を新設する場合、「独立事業部門型」「全社企画・支援型」「企業新設型」がある。一方、既存組織内に設置する場合には「企画部門推進型」「マーケティング部門推進型」「その他部門推進型」と複数のパターンが考えられる。場合によっては、それぞれの要素を組み合わせて、プライシング組織が位置付けられる場合もある。以下ではそれぞれのメリット・デメリットについて解説する。

プライシングを優先

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1. 独立事業部門型

 営業部門、マーケティング部門、コーポレート部門といったような既存の部門と並列する新部門を設置し、プライシングを推進するケースがこれに該当する。つまり、各事業のプライシング機能を1つの部門にまとめることとなる。この場合、既存組織の構造や役割に変化がないため、既存部門への負担が少なく、既存事業の強みを残したまま、プライシングに取り組むことができる。

 ただし、既存の事業部門とプライシングの観点での連携が必要になる。しかし、権限も他部門と並列であるため、KPI(重要業績評価指標)の違いなどから部門同士のコンフリクトが起きる可能性があるので注意が必要である。例えば、営業部門が件数目標を追っており、価格を上げたくない場合、プライシング部門が値上げをしようとするとコンフリクトが起こるといったケースである。

2. 全社企画・支援型

 経営陣の直下で全社のプライシング戦略を立案・サポートするケースがこれに該当する。この場合、独立事業部門型とは違い、支援するという形で他部門に横断的に関わるため、協力を仰ぎやすく、プライシング組織の推進力が強くなるのが特徴である。

 ただし、これは暫定的な対応となることが好ましいと言える。プライシングが常に経営の最優先となると、他の施策がおろそかになる可能性があるからである。プライシングの業務が一定成果が出始めたら、1.独立事業部門型に切り替え、定常的に運用していくのがよいだろう。

3. 企業新設型

 子会社を設立し、プライシングを推進するケースがこれに該当する。子会社設立の場合、自社のカルチャーなど既存企業の制約にとらわれずに、プライシングを推進することが可能になる。グループ企業が多い場合、大なり小なりカルチャーや思想もバラバラであることが想定される。

 その際、設立した子会社は、どの企業からも中立的な位置付けになり、フラットな目線から業務を推進でき、真価を発揮しやすいと言える。また、グループ企業のプライシングに特化する企業のため、アセットも蓄積しやすく、プライシング業務の効率化という観点でもメリットがある。

 一方で、企業を設立するため、他のタイプと比較し、資金や人的なリソースが必要であり、仮に失敗した場合を考えると、最もリスクが高いとも言える。

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