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Thursday, June 22, 2023

山火事多発で注目リスク分析会社 保険会社を支援 - 日本経済新聞

CBINSIGHTS

山火事の被害に悩まされる米国で、大手保険会社が住宅保険から相次ぎ撤退している。最近の山火事は気候変動などの影響を受けており、従来の損害保険商品の開発手法では採算が取れなくなっているためだ。そこで注目を集めているのが、山火事のリスクを最新のテクノロジーを使って分析する会社だ。保険商品開発の基礎となるデータをより精度の高いモデルで算出する。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

米2大住宅向け損害保険会社のステート・ファームとオールステートはこのほど、山火事リスクの増大を主な理由にカリフォルニア州での住宅と商業用不動産の保険の販売を停止するとそれぞれ発表した。

カリフォルニア州での販売停止は大きく報じられたが、保険各社は山火事リスクが高すぎると見なした他の地域からもひそかに撤退している。例えば、最近の調査では、コロラド州で山火事リスクも一因となり事業を縮小している保険会社が76%に上ることが明らかになった。

山火事は保険会社にとってコストが高く、2018〜22年の保険金支払額は計390億ドル(約5兆5000億円)に上った。気温の上昇や乾燥により、山火事の深刻度は増し、多発するようになっている。カナダでは6月上旬、未曽有の規模の山火事が各地に広がった。この状態が続けば23年のカナダの山火事は過去最悪の水準になる。これは事態がいかに切迫しているかを示している。

山火事リスク分析会社は保険会社のこの問題への対応を支援するため、衛星画像、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」機器、人工知能(AI)を使ってより精度の高い山火事リスクのモデル作成に取り組んでいる。

今回のリポートではCBインサイツのデータを活用し、以下の3つの点から山火事リスク分析会社を評価した。

・資金調達の動向

・従業員数

・ビジネス関係と顧客企業の声

資金調達

インシュアテック(保険テック)分野全体と同様に、山火事リスク分析スタートアップへの出資額は21年に9800万ドルでピークに達したが、22年には4000万ドル余りに減少した。23年の資金調達は公表ベースではまだ1件もない。

大半の山火事リスク分析会社のエクイティ(株式)による資金調達額は比較的少ない。調達総額が最も多いのは米ケープ・アナリティクス(CAPE Analytics)の7500万ドルで、同社の直近の企業価値は2億3700万ドルだった。

従業員数

従業員数を比べると、米コアロジックや米RMS、米ミリマン、米ベリスク・アナリティクスなど従業員が数千人に上る既存の大企業と、小人数のスタートアップとにはっきりと分かれていた。

既存大手は様々なリスク管理・保険サービスを提供しており、山火事リスク分析ツールは総合的な災害モデリングシステムを補完する役割を担っていることが多い。

保険会社はこれまで既存大手のモデルを活用してきたが、山火事リスクの高まりに対応するため、スタートアップが提供する新たなデータやモデルで補ったり、これらに置き換えたりすることを検討している。

こうした小規模スタートアップの一部は陣容を急拡大している。例えば、米ゼスティAI(Zesty AI)の従業員数は過去1年で75%増えた。

ビジネス関係と顧客企業の声

保険会社は山火事リスクのエクスポージャー(リスクにさらされている保有資産)を最適化するため、山火事リスク分析会社と積極的に提携している。

ケープ・アナリティクスに複数回にわたり出資しているステート・ファームなどの保険会社は、こうしたテクノロジーを活用し、採算が合わないと判断した市場から撤退する可能性がある。リスクの状況が刻一刻と変わるなか、収益を得られる機会を見いだそうとしている企業もある。

例えば、ゼスティAIのある顧客企業は妥当な保険料で保険を販売できるよう「物件ごとに山火事リスクを分けてほしい」と要望している。

今後の見通し

山火事リスクは増大し続けており、30年には極端な火災は14%増えると見られている。独創的な解決策や他社との提携により、需要の変化に対応しようとしている保険会社もある。

例えば、自然災害への補償を提供する総代理店(MGA)のケトル(Kettle、英領バミューダ)は23年4月、カリフォルニアの州の公的保険を補う極端な山火事を対象にした商品を提供するため、米アムウィンズ(Amwins)と英領バミューダの再保険大手パートナー・リーと提携した。

ケトルは商業用不動産を対象に、事前に決めた条件に基づいて保険金を自動で支払う「パラメトリック保険」も提供している。保険金の請求処理を簡略化し、山火事リスクが高い地域でも採算が合う保険を提供できるようにするのが狙いだ。

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