2023年6月19日、先天性胆汁酸代謝異常症治療薬コール酸(商品名オファコルカプセル50mg)が発売された。同薬は3月27日に製造販売が承認され、5月24日に薬価収載されていた。用法用量は「1日量5~15mg/kgを1回または数回に分けて食事中に投与する。なお、患者の状態により適宜増減すること」となっている。
先天性胆汁酸代謝異常症は、肝臓内でのコレステロールから胆汁酸までの生合成経路に関与する酵素のうち、いずれか一つの遺伝性欠損を病因とする、常染色体潜性遺伝性疾患である。中間代謝物である胆汁酸前駆物質(異常胆汁酸もしくは胆汁アルコール)の肝細胞内蓄積により肝機能障害を生じる。極めて希少な疾患で、小児慢性特定疾病である。通常、乳児期に発症する重篤な胆汁うっ滞性肝疾患や、小児後期または成人期に発症する進行性の神経系疾患、脂溶性ビタミン欠乏症などを引き起こすことがある。未治療の場合は肝硬変および肝不全により死亡に至る恐れがある。
先天性胆汁酸代謝異常症の患者では、ヒトの胆汁中に最も多く含まれる一次胆汁酸のコール酸が不足しているため、コール酸を補充することで肝臓におけるCYP7A1活性を制御、異常胆汁酸などの産生を抑制する。また、胆汁の流れを賦活化し、異常胆汁酸などの肝クリアランス促進により肝機能を改善する。さらに、脂溶性ビタミンと脂肪の吸収促進により、成長阻害を改善する。
海外における本疾患の治療では、コール酸およびケノデオキシコール酸(CDCA:商品名チノ)の使用実績が蓄積されており、臨床研究も多数報告されている。このことから欧米では、コール酸製剤が先天性胆汁酸代謝異常症の適応で承認されている。一方、日本ではコール酸製剤は無く、CDCAは胆石溶解薬としてのみ承認されていた。
以上のことから、日本小児栄養消化器肝臓学会および日本先天代謝異常学会から開発要望書が提出され、厚生労働省の「第35回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」(2018年7月)で高い評価を受け、開発・承認に至った。海外での使用実績や日本人患者を対象とした国内第Ⅲ相試験から、同薬の有効性および安全性が確認された。海外ではEUを中心とした国および地域で承認されており、日本では2020年8月に希少疾病用医薬品の指定を受けている。
副作用として、低カルシウム血症(1%以上)が報告され、下痢、胆石症、そう痒症、トランスアミナーゼ上昇の可能性があるため十分注意する必要がある。
薬剤使用に際しては下記の事項についても、留意しておかなければならない。
・コール酸からアミノ酸抱合を担う酵素が欠損し、アミノ酸抱合不全をきたす、bile acid-CoA: amino acid N-acyltransferase(BAAT)欠損症、bile acid CoA ligase(SLC27A5、BACL)欠損症では、コール酸合成まで正常に行われることから、効果が期待できない
・定期的に肝機能(AST、ALT、γ-GTPなど)や総胆汁酸濃度などを確認し、用量調節すること。また、必要に応じて、血清または尿中の胆汁酸分画(コール酸や胆汁酸異常代謝産物を含む)の濃度も確認すること
・通常、1日1回または1日2回に分けて投与するが、乳幼児などで必要な場合は1日3回以上に分けて投与できる。なお、投与の時間帯は原則一定とする
・投与量の決定に際しては、添付文書「用法及び用量に関連する注意」に記載されている事項を考慮し、各患者に対して適切な用量を決定すること
・承認までの治験症例が限られていることから、有効性および安全性に関するデータ収集のため、全投与症例で使用成績調査を実施すること
・医薬品リスク管理計画書(RMP)では、重要な潜在的リスクとして「胆石症」「悪性腫瘍」が挙げられている
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