定年退職を控えた50代は、老後の資金計画や資産形成を考えておくべき重要な時期です。
この記事では、50代から資産運用を始めるべき理由や、おすすめの資産運用方法、活用すべき制度などをわかりやすく解説します。
<目次>
1.50代からの資産運用は遅い? 今からでも始めるべき理由
「50代から資産運用を始めても遅いのでは?」と不安を感じている人もいるかもしれません。しかし、資産運用はむしろ50代から始めるべきです。
この章では、50代から資産運用を始めるべき理由を三つご紹介します。
(1)子どもが手を離れて金銭的負担が減るから
50代は、子供が社会人になって教育費がかからなくなる人や、マイホームの住宅ローンを完済する人が多くなってくる時期です。自分たちのためにお金をかける余裕ができてくる世代だからこそ、投資を始める時期に適しています。
(2)退職前から投資の知識を身につけられるから
退職金を資産運用に回して、老後の資金作りをしようと考えている人もいるかもしれません。しかし、知識や経験がないまま投資を始めると、失敗するリスクが高く、大切な老後のための資金まで失ってしまう可能性があります。
収入を得ている50代のうちから資産運用を始めると、退職前から投資の正しい知識が身につき、じっくりと経験を積めるため、失敗するリスクの軽減につながります。
(3)退職後の生活がクリアに見え始める時期だから
50代になると、これまで納めた年金の額から、実際に受け取る年金の金額に近い額がわかってきます。
また、老後の生活はどのように過ごしていきたいか(住まい・趣味・旅行など)という希望に向けたプランも具体的に立てやすくなってくる時期です。
退職後の生活がクリアに見え始める50代だからこそ、資産運用を始めるべきだといえます。
2.50代におすすめの資産運用3選
「50代から資産運用を始めてみたいという気持ちにはなっているけど、具体的に何をすればよいのかわからない」という人も多いでしょう。
この章では、50代におすすめの資産運用方法をメリット・デメリット・始め方なども含めて三つご紹介します。
(1)株式投資
株式投資とは、株式会社が発行する株式を売買して利益を得る手法です。株式投資で得る利益には、以下の三つのタイプがあります。
1.株の売却による「売買差益」
2.株を保有することによって得られる「配当金」
3.企業から独自商品や金券などを得られる「株主優待」
①メリット
●株価が値上がりすると高いリターンが期待される
●株主になると、企業から配当金や株主優待などを得られる銘柄もある
●株主総会で議決権を行使するなど、会社の意思決定に関与する権利がある
②デメリット
●個別企業の株価は毎日の値動きが激しいため、値下がりをして大きな損失となる可能性がある
●株式の売買単位が100株であるため、ある程度のまとまった資金力が必要となる
●投資先の企業が倒産した場合、投資した金額を失うリスクがある
●情報収集や売買取引は全て自分でおこなう必要がある
③始め方
取引口座へ入金をする方法は各種異なりますが、一般的なオンライン証券サイトの場合は、以下のような流れで株式投資を始めます。
①口座開設
②購入に必要な額を入金
③銘柄を選定
④注文
始めるためのおおよその費用は、株価 × 単元株数(1単元:100株)+ 証券会社の手数料で計算をしてみましょう。
例えば、トヨタ自動車の株価が1,960円だった場合は、以下のような計算になります。
1,960円 × 1単元(100株) = 19万6,000円 + 証券会社の手数料
一方、ファーストリテイリングの株価が3万4,000円だった場合、以下のようになります。
3万4,000円 × 1単元(100株) = 340万円 + 証券会社の手数料
一見大きな額にみえますが、中型株や小型株なら、10万円程度でも十分株式投資が始められます。
株式投資は大きなリターンを得られる可能性がありますが、銘柄の選定と売買取引を自分でおこなわなければならないため、投資の知識や経験が必要です。投資信託や債券投資よりも、やや難易度は高めといえます。
(2)投資信託
投資信託とは、ファンドマネジャーと呼ばれる投資のプロに資産運用を任せる(信託する)金融商品を指します。ファンドマネジャーが多くの投資家から集めた資金を元手に株式や債券などに投資をし、そこで運用益が発生したら各投資家に分配するという仕組みです。
投資信託で得る利益は「値上がり益」と「分配金」の二つが挙げられます。運用のプロに任せるため、「仕事が忙しくて投資に時間を割くことが難しい」という人におすすめです。
①メリット
●小額から投資を始めることができる
●運用をプロに任せるので、値動きのチェックや情報収集などをする必要がない
●多数の銘柄に分散投資をするため、破綻(はたん)リスクが少ない
②デメリット
●元本が保証されない
●購入時、運用中、売却時に手数料がかかる
●基準価値は1日1回しか動かないため、リアルタイムでの値動きがわからない
●海外資産に投資をする銘柄は、為替変動の影響で損失が発生することもある
③始め方
一般的なオンライン証券サイトの場合、投資信託は株式投資と同じ以下の手順で始めることができます。
①口座開設
②購入に必要な額を入金
③銘柄を選定
④注文
投資信託は、証券会社やオンライン証券サイトだけでなく、郵便局や銀行などさまざまな金融機関で購入できます。購入方法は「単発で購入をする方法」と「毎月積み立てをする方法」の2通りです。一般的には1万円程度から購入が可能ですが、100円、1,000円程度から始められるものもあります。
投資信託は、少額から挑戦できるうえに、プロに運用を任せられるため、投資の知識に自信がない人でも比較的挑戦しやすい資産運用だといえます。
(3)債券投資
債券投資は、債券を受け取ることで、償還日まで利子を利益として得続ける手法を指します。「債券」とは、国、地方団体、企業などが発行体となり、投資家から資金を調達するために発行する「借用証書」のようなものです。
債券を発行して投資家から資金調達した発行体は、投資家に対して償還日までの利子を払い、償還日には元本(額面金額)を返さなければいけません。
なお、代表的な債券には、「国債」「地方債」「社債」「外国債」の四つがあります。
①メリット
●定期的に利息を受けとれる
●償還日に額面金額で償還される(発行体の倒産や破綻などの財政難は除く)
●途中で売却をして換金することが可能である
●手軽で運用の手間がかからない
●選択肢が豊富であるため、ライフプランに合わせた選択が可能である
②デメリット
●発行体が破綻してしまう、財政難に陥って決められた額面の利息や償還が受けられなくなるなどの「信用リスク」がある
●途中で売却をした場合に売却金額が購入金額より下がってしまい、損失が出てしまう「価格変動リスク」がある
●利息の受取時や償還時に為替レートの変動によって元本を割ってしまう「為替変動リスク」がある
●償還日前に売却をする場合、市場の変動・発行体の信用度の変化などの理由から、必要なときに思うような価格で売却できない「流動性リスク」がある
③始め方
債券投資は、一般的なオンライン証券サイトでの取引の場合、投資信託や株式投資と同様の以下の手順で始めることができます。
①口座開設
②購入に必要な額を入金
③銘柄を選定
④注文
社債や外国債などは、証券会社で購入できます。国債は、証券会社以外にも、郵便局、銀行などの金融機関で購入が可能です。
新規に発行される債券のことを「新発債」、すでに市場に出回っている債券を「既発債」といいます。「新発債」は発行価格で募集されますが、「既発債」は時価で取引されるのが特徴です。
購入をするために必要な金額は債券によって異なりますが、個人向け国債であれば1万円から、普通社債などは10万円程度から100万円以上など、企業によって額面や単位が異なります。
債券投資は運用の手間がかからないため、株式投資よりも挑戦しやすい資産運用です。しかし、投資信託とは異なり、自分で投資する銘柄を選ばなければなりません。ある程度の知識は必要ですが、リスクの少ない国債から資産運用を始めてみるのもよい勉強になります。
3.50代の資産運用で活用したい制度
ここでは、50代の資産運用を始める際に活用したい制度を二つご紹介します。
紹介する制度は、資産形成をする人を後押しするために、国が実施している制度です。賢く活用をして、より豊かな老後生活への資金作りに役立てましょう。
(1)iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは個人型確定拠出年金の愛称で、公的年金(国民年金・厚生年金)とは別に給付を受けられる、老後の資金作りを目的とした私的年金制度のことです。
65歳まで任意で加入することができ、毎月自分で決めた額の掛け金を積み立て、自分が選んだ運用商品(預貯金・投資信託・保険など)を選択して運用します。
掛け金と運用益の合計額からなる給付額は運用実績によって決まり、原則60歳以降に年金または一時金として受け取ることができます。
iDeCoは
1.毎月の掛け金が全額所得控除の対象となる
2.利息や運用益は非課税になる
3.将来受け取る年金・一時金ともに税制優遇を受けられる
など三つのメリットがあります。
月々の掛け金は5,000円からスタートすることができ、掛け金の限度額は加入対象者の職業タイプなどによって異なります。
注意点としては、
●原則として60歳以降でないと引き出せない
●通算加入者等期間が10年に満たない場合は、受給開始可能年齢が60歳以降になる場合がある
などがあるので覚えておきましょう。
(2)NISA(少額投資非課税制度)
NISA(少額投資非課税制度)は、毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品から得られる利益が非課税になる税制優遇制度です。
NISAは一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの3種類がありますが、50代の人はNISA、つみたてNISAが対象となります。投資によって得られた分配金、運用益には通常約20%の税金がかかりますが、NISAを利用すると非課税になります。
一般NISAでは、年間120万円が上限で最長5年間までの非課税枠があり、株式や投資信託などさまざまな金融商品に投資をすることが可能です。
つみたてNISAは年間非課税枠が40万円ですが、非課税期間が20年間となっており、投資可能な商品は長期・積み立て・分散投資に適した一定の投資信託のみに限られています。
2023年度の税制改正によって、2024年以降は新しいNISA制度へと変わります。
主な特徴としては、
1.投資上限金額の拡大
2.「つみたて投資枠」「成長投資枠」の二つとなり併用が可能
3.非課税保有期間の無期限化
4.非課税保有限度額が全体で1,800万円に拡大
などがあります。
つみたてNISAの場合は1年分の利益(40万の非課税分)が加算されるため、筆者は2023年から始めた方がよいと考えています(参照:NISAとは|金融庁)。
4.50代の資産運用 気をつけたいポイント
この章では、50代から資産運用を始めるにあたって気をつけたいポイントを三つ挙げました。
運用に失敗して後悔をしないために、今のうちにしっかりと確認しましょう。
(1)老後にかかる費用を明確にする
投資を始める前に、老後の収入や支出を明確にしておく必要があります。
●夫婦がもらえる年金額はいくら受け取れるのか
●退職金・企業年金はいくら受け取れるのか
●定年後の生活費はいくら必要となるのか
●住居費(固定資産税・リフォーム代など)はいくらかかるのか
●生活費以外の特別支出金(子供の結婚資金、孫へのお祝い、趣味、旅行、友人や近所との付き合いなどにかかるお金)はいくらかかるのか
など、これら収入・支出項目の概算金額を書き出したうえで、いくらまでならリスクを抑えて投資が可能なのかという金額を算出してみましょう。
(2)一つの投資先に集中投資させない
金融商品ごとの配分を決めることを「ポートフォリオを組む」といいます。投資をする際には金融商品ごとのリスクとリターンをよく考えて、ポートフォリオを組みましょう。
一つの投資先に集中投資をしてしまうと、相場の状況で大幅に値下がりをした場合には損失額も大きくなり、資産が大きく減少してしまいます。定年退職までの年数があまり多くない50代は、ひとたび損失を出してしまうと給料から取り戻すことが非常に難しくなるため、集中投資を避けた「分散投資」をおすすめします。
投資初心者の場合は、私たちが日頃から納めている年金保険料を運用している「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIS)」のポートフォリオを参考にするのもよいでしょう。
GPISが運用する資産の構成割合は、国内債券25%、外国債券25%、国内株式25%、外国株式25%というリスクとリターンを考えたバランスの良いポートフォリオとなっています(参照:基本ポートフォリオの考え方丨年金積立管理運用独立行政法人)。
(3)ハイリスク・ハイリターンの投資は避ける
運用期間が短い50代からの投資は、焦って結果を出そうとしてしまいがちです。なかには、短期間でハイリターンを得られる投資に魅力を感じてしまう人もいるかもしれません。
しかし、ハイリスク・ハイリターンの投資は、大きく値が動き利益が出る可能性が高い半面、大きく値が動き損をしてしまう可能性も高いということです。
老後の生活を考えなければならない50代だからこそ、大きな利益を狙った危険な投資は避け、自分に合ったリスク範囲の金融商品を選択して運用するようにしましょう。
5.50代だからこそ資産運用を始めましょう
今回の記事では、おすすめの資産運用方法、活用すべき制度、注意点などをご紹介しました。50代は子供が巣立ち金銭的に少し余裕ができるため、老後の資産計画を立て、資産形成をしていくべき重要な世代です。50代だからこそ、無理のない手元資金で資産運用を始めてみませんか?
(AFP・宅地建物取引士 小泉寿洋)
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