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Monday, October 30, 2023

仕事中毒から抜け出し、活力を取り戻す方法 人が休暇を取らない ... - DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

仕事中毒から抜け出し、活力を取り戻す方法

Orbon Alija/Getty Images

サマリー:人が休暇を取得しない本当の理由は、暇を持て余すよりも忙しさを好み、仕事を通じて自己の価値を見出していることにある。仕事に夢中になりすぎて「ワーカホリズム」(仕事中毒)に陥ると、燃え尽きやすく、生産性の... もっと見る低下や死亡リスクの増加を招きかねない。だが、仕事に依存的であると気づくのは難しい。筆者の経験を踏まえ、仕事中毒から抜け出し、活力を取り戻す方法を提案する。 閉じる

人はなぜ仕事に依存してしまうのか

 ピュー・リサーチ・センターの最近の調査によると、米国の働き手の半分近くは、取得できる休暇日数をすべて消化していない。その理由として、やらなくてはならないことが多すぎること、仕事が遅れるのが心配なこと、同僚に業務を肩代わりしてくれと頼みづらく感じることなどが挙がる。

 しかし、筆者らが思うに、最も本質的な要因は、この調査の回答者たちが述べておらず、多くの場合は自覚すらしていないことにある。それは、誰もが仕事に物足りなさを感じるくらいなら、キツい仕事のほうがよいと考えていることだ。ほとんどの人は、暇すぎるより忙しすぎるほうを好む。なぜなら、働いていない時より、働いている時のほうが自分という人間に価値を感じるからだ。仕事は、単に忙しく過ごす手段でなく、自分が価値ある人間だと、ほかの人たちや自分自身に証明する手段でもあるのだ。

 暇な時間を過ごしていると、自身の能力への疑念、不安、孤独、悲しみ、空虚感などが湧き上がってくる時があるが、仕事に没頭することで、そうした感情を遠ざけておくことができる。私たちには、退屈を恐れる性質がある。たとえその仕事に特別な喜びや情熱を抱いていなくても、仕事から離れるよりも仕事に打ち込むことで、不安を感じずに済むケースが多い。その結果として、しかるべき安全装置を設けない限り、無意識に雇用主と結託して、雇用主の望みどおりに、自分自身を過重労働へと追いやってしまう。

 Chained to the Desk(未訳)の著者で心理学者のブライアン・ロビンソンによれば、ワーカホリズム(仕事中毒)とは「強迫症の一種」であり、「自分自身に厳しい要求を課し、仕事上の習慣を制御できず、仕事に過度にのめり込むという形で表れる。この状態に陥ると、人生のほかの活動はほとんど排除されてしまう」という。

 ワーカホリズムという言葉で呼ばれるのも、アルコホリズム(アルコール依存症)にちなんでおり、自分自身に麻酔をかけて感覚をマヒさせるような作用があるためだ。依存先(ドラッグ)が仕事であろうと、アルコール、違法薬物、インターネット、コンピュータゲーム、食事、買い物、あるいはほかのどんな活動であろうと、その目的は、すべて何らかの感情から逃れるために行われる。

 ところが、皮肉なことに、長時間ぶっ通しで働き続けて、いつも仕事のことばかり考えていると、かえって仕事に没頭したり夢中になったりすることが難しくなる。次第に燃え尽き症候群(バーンアウト)に陥りやすくなり、生産性は低下して、さらには死亡リスクまで高めてしまう。2021年の世界保健機関(WHO)の調査によると、週に55時間以上働く人は、35~40時間の人と比べて、脳卒中を発症するリスクが35%高く、心臓病で死亡するリスクが17%高いという。

 ワーカホリズムとほかの依存症との違いは、カネを礼賛する資本主義経済において、ワーカホリズムが社会で許容されやすく、もっと言えば、金銭面でも社会的評価の面でも報われやすいという点にある。たいていの人は、みずからを過重労働へと突き動かす要因が何かを振り返らない限り、そもそも自分が仕事に関して依存症的な状態になっていることにすら気づくことができず、その状態を悪化させてしまう。

 本稿の筆者(セバーソンとシュワルツ)も、大人になってから、仕事をしなくてはならないという強迫観念に苦しめられて、ほかの活動にほとんど時間を割かなかった時期がある。セバーソンは、働き始めて最初の10年間と半年ほど、毎日12時間の仕事をし、それに加えて毎日1時間を通勤に費やしていた。しかし、一連の人生の試練を経て、ついに初のセラピーを受けることに決めた。さらに、毎日瞑想を実践するようになり、燃え尽きに関する文献も読み漁った。

 2009年、アパレル大手のGAPに勤めていたセバーソンは、自身の学びを同社で実践するために尽力した。まず、「完全結果志向の職場環境」(Results Only Work Environment)を築こうと努めた。オフィス勤務の従業員に関して、勤務時間の長さよりも仕事の結果を重んじるようにしたのである。現在は、百貨店チェーンのニーマン・マーカスの最高人材責任者(チーフ・ピープル・オフィサー)を務め、シュワルツとともにリーダーと従業員を対象に研修を実施し、彼らがより上手に自分のエネルギーをマネジメントできるように努めている。人々が休息やリフレッシュによって活力を取り戻し、持続可能な形でエネルギーを満タンにし続けられるようにすることが狙いだ。

 しかし、セバーソンはいまだに「ほかのすべてのことよりも仕事を優先させるべきだ」という重圧をはねのけることに苦労している。強い信念を持って、過重労働を避けるべきだと自分に言い聞かせてきたにもかかわらず、である。ビジネスの世界では、自分を厳しく追い込んで仕事に取り組んだ人物ほど評価される傾向が極めて強い。それは、セバーソンが働いてきたすべての職場で、そしてシュワルツがコンサルティングを行ってきたほぼすべての職場でも見られた傾向である。

 一方、シュワルツは20年前、エナジー・プロジェクトを立ち上げた。断続的な休息と活力を取り戻す時間を確保することは、働き手の健康と仕事への満足度を向上させるだけでなく、持続可能な形で高い成果と高い生産性を実現することにもつながる──この点を科学に基づいて企業に理解させることを目指すプロジェクトだ。実は、シュワルツがこのプロジェクトを通じて広めようとしてきた知識は、自分自身が学ぶ必要のあるものだった。

 それまでシュワルツは数え切れないほどの理由をつくり上げて、長時間働くことを正当化してきた。仕事が好きだとか、別に嫌だと思っていないとか、ほかの人たちの役に立つことに生きがいを感じているなどと、立派な理屈をこねていたが、実のところ、仕事はシュワルツにとって「ドラッグ」のような存在だった。長時間働くことは、自分が価値ある人間だと感じ、難しい感情を遠ざけるための最も手堅い方法だったのである。

 しかし、ある日、シュワルツはふざけ半分で「ワーカホリックス・アノニマス」の会合に出席した(そう、アルコール依存症者のための相互援助団体である「アルコホーリックス・アノニマス」だけでなく、仕事中毒の人のためのこうした団体も存在するのだ)。

 その日の会場はある建物の地下室だった。テーブルを囲んだのは、シュワルツ以外に4人しかおらず、出席者はお世辞にも多いとは言えなかった。会合が終わって退室しようとすると、出席者の一人が声を掛けてきた──「ようこそ、(ワーカホリズム版の)地下抵抗運動へ」。その人物はシュワルツにこう説明した。「ニューヨークには、500万人のワーカホリック(仕事中毒者)がいます。あなたが今日会ったのは、その中で回復途上にある4人だけです」

 では、自分が強迫症的に過重労働をしていると気づいた場合、どのような対策が有効なのか。筆者らの経験をもとに、次の戦略を提案したい。

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