第12話
決算書から見抜く、生き残る会社、生き残れない会社
3年後、5年後といった、会社の長期的な経営を見ることは、大切です。一つひとつの会社の動向はもちろん、経済全体の動向も見えてくるからです。長期的な経営を見るためには、やはり拠りどころとなる「ものさし」が、いくつかあります。それをご紹介していきます。
EPSとBPSが示すもの
気になる会社があって、その長期的な経営を展望しようとする際に、私がよく使っている「ものさし」として真っ先に紹介したいのは、「1株当たり当期純利益(EPS;Earnings Per Share)」と「1株当たり純資産(BPS;Book-value Per Share)」です。
EPSは文字通り、その決算期に稼げた当期純利益を発行済み株式数で割ったものです。株主は持株分に応じて、どれだけ当期純利益をあげてくれたのかがわかります。当期純利益は配当の原資になるので、EPSが大きくなれば増配を期待できます。そして、EPSは前にも触れた「PER;Price Earnings Ratio(株価収益率)」を算出する際の「株価÷EPS」という計算式に利用されます。
一方のBPSは、決算期末の純資産を発行済み株式数で割ったものです。株主は持株分の純資産がどれだけあるのか、BPSを用いて弾き出せます。BPSも前に触れた「PBR;Price Book-value Ratio(株価純資産倍率)」を算出する際の「株価÷BPS」の計算式に利用されます。つまり、EPSもBPSも、株価が割高か割安かを判断するベースの指標なのです。
それに加えて、私は「1株当たり」ということの意味を重視しています。2024年3月期に4兆5000億円の当期純利益が見込まれているトヨタ自動車と、5億円程度の当期純利益が予想されている中堅企業とを、単純に比較しても仕方ありません。「世界に冠たるトヨタ自動車だからね」の一言で片付けられてしまいます。
そこで、1株当たりどれだけ利益を稼ぎ、持株分の純資産を増やしているのか、「1株当たりの株主への貢献度合い」という尺度を用いたら、公平な比較ができます。また、1株当たりで評価することによって、稼ぎやすい業種、稼ぎにくい業種の違いによる影響も除けます。
そのEPSとBPSを過去5~7年分調べて、グラフにしてみましょう。5年以上にするのは、前にも説明したように景気のサイクルがだいたい一巡する年数だからです。EPS、BPSともに右肩上がりのトレンドになっていれば、その会社は長期的に伸びて、経営は安泰だと予測できます。逆に右肩下がりの場合は、この先もジリ貧傾向が続き、経営が厳しくなると見たほうがいいでしょう。利益と純資産の両面から、その会社の長期的な経営を手っ取り早く展望するのなら、この方法がお勧めです。
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