牛や豚などの肉は人間にとって貴重なタンパク源ですが、畜産は温室効果ガスの主要な排出源のひとつであるため、近年では環境のために肉の消費量を減らしたり、昆虫食に切り替えたりする必要があるという主張も強まっています。そんな中、オーストラリアやベトナムなどの研究チームは、牛や豚などの主要な食肉より環境に優しい代替品として「ヘビ肉」が有望であるという研究結果を報告しました。
Python farming as a flexible and efficient form of agricultural food security | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-024-54874-4
You Should Seriously Think About Eating More Python, Scientists Say : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/wild-new-study-suggests-we-should-put-more-python-on-our-plates-in-future
「環境のことを考えれば牛や豚の肉を食べるのを控えた方がいい」とわかっていても、いきなり菜食生活に切り替えることは大変であり、タンパク質の摂取量が不足して健康を害してしまうリスクもあります。また、昆虫食や人工肉などの代替策も提案されていますが、一般に普及する上でさまざまな課題があります。
そこでオーストラリア・マッコーリー大学の生物学者であるダニエル・ナトゥシュ氏らの研究チームは、環境に優しい食肉の選択肢としてニシキヘビが有望なのではないかと考えました。
研究チームによると、ヘビなどの変温動物はほ乳類をはじめとする恒温動物よりもはるかにエネルギー効率が高いそうです。また、は虫類の肉は鶏肉と似て高タンパクかつ味もよく、すでにアジアの一部ではニシキヘビの養殖体制が確立されているとのこと。
研究チームはタイとベトナムの商業農場で12カ月以上飼育され、人道的にと殺された2種のニシキヘビについて調査を行いました。その結果、生産された肉に対する食物の消費量が、その他の畜産動物と比較してはるかに少ないことがわかりました。
生産される肉の量と餌の消費量の比率は牛で「10」なのに対し、豚肉は「6」、鶏肉は「2.8」、サケは「1.5」でしたが、ニシキヘビはなんと「1.2」という結果になりました。ヘビは他の食肉産業で生じた廃タンパク質でも成長できる上に、数カ月間絶食してもほとんど体重を減らさないでいることが可能であるため、食料や水の供給が不安定な環境での飼育に最適だとのこと。
研究チームは、「絶食したニシキヘビが代謝プロセスを調整して体調を維持する能力は、不安定な環境下での食糧安全保障を強化するものであり、ニシキヘビの養殖が世界的な食糧不安に対する柔軟かつ効率的な対応策になる可能性を示唆しています」と主張しています。
しかし、依然として「ヘビにエサをやる作業は労働集約的、つまり人間の労働力への依存度が高い分野であり、人的コストを省いて大量飼育するノウハウが確立されていない」「ヘビ肉を食べることへの抵抗感を持っている人が多い」という課題もあるため、すぐにヘビ肉が普及するとは考えにくいとのこと。研究チームは、「人間がヘビに抱いている一般的な恐怖心も相まって、ニシキヘビの農業的可能性が世界規模で実現するのはまだ先のことかもしれません」と述べました。
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