ヤマトホールディングス(HD)は5月21日、共同輸配送のオープンプラットフォームを提供する新会社「Sustainable Shard Transport(略称SST)」を同日付けで設立すると発表した。社長にはヤマト運輸の高野茂幸(たかの しげゆき)グリーン部物流推進部長が就任。2024年度中の事業開始を予定している。
新会社設立にあたり行われた会見では、ヤマト運輸の福田靖 執行役員(グリーンイノベーション開発、サステナビリティ推進統括)が、「持続可能なサプライチェーン構築へ多種多様なパートナーと、新たな物流・新たな価値を創造していきたい。パートナーのビジネスのグリーン化をともに創造し、あらゆる商流・物流が一体となったサステナブルな取組みがスタートする」と挨拶。
<SST 高野社長>
ヤマトHDがこれまで宅配事業で培ってきた輸配送ネットワーク・オペレーション構築のノウハウを活かし、法人向けBtoB領域の輸配送効率化に進出する。
SSTの主な事業内容は、標準パレット(1100mm×1100mm)を中心とした輸配送サービスの提供と、共同輸配送のオープンプラットフォームの提供・管理。プラットフォーム上で荷主企業の出荷計画・荷姿・荷物量などの情報と物流事業者の運行計画などの情報を繋ぎマッチングを行い、輸配送はヤマトグループに限らずリソース情報を登録した物流事業者が担う。
高野社長は「BtoB輸送の標準化は海外に比べ進んでいない。業界ごとに商慣習が全く違い、個々での取組みには限界がある。2024年問題を社会全体で解決していくため、企業間の垣根を超えた共同輸配送を提供する。社会課題をスピーディーに解決するため意義あることだと考えている」と、新会社設立の目的を語った。
同プラットフォームの基盤システムは、内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の「物流・商流データ基盤」を構築した富士通と共同で構築を進めており、4月から一部企業と既に実装を開始。2024年冬頃にはフルオープンでの利用開始を予定している。
特徴はSIPの「物流情報標準ガイドライン」に準拠し、同業他社からの閲覧や外部からのアクセス制限などにより、安心・安全で円滑な共同輸配送が可能なこと。ガイドラインに準拠していれば、あらゆる荷主・物流事業者のデータベースや他システムとシームレスに連携できる。
これにより地域の複数の物流網を集約し共同輸配送を行うことで、これまで低積載・長時間労働で幹線輸送を担っていた地域の物流事業者が、効率的に複数社の域内配送(集荷)を行うことができ、積載率および稼働率が向上し、地域内での持続可能な物流構築に繋がる。
また「標準パレットの使用」「定時運行」「セミトレーラーやダブル連結トラックなどの高積載車両の活用」により、高積載で安定した運行を実施。さらに中継拠点によりドライバーの負担軽減にも取り組む。2024年度は東京・名古屋・大阪間で1日40線便を運行する予定だ。さらに2025年度末には1日80便の運行を目指しており、想定される効果としてGHG排出量42.2%削減、省人化率65.1%と試算している。
今後、SSTでは2024年度中に第三者割当増資を予定しており、荷主企業や物流事業者に限らず幅広いステークホルダーから出資を募る。公益性の高いオープンプラットフォームを構築し、3年後の黒字化を目指す。さらに次のステップとして、鉄道や船舶と連携する物流網のマルチ連携や、自動運転、再生可能エネルギーの活用へも事業を拡大する計画だ。
高野社長は「担い手不足や環境問題など、課題解決には商慣行の見直しが重要だが、これは荷主と一体となって変えていく必要がある。加えてサステナビリティをどうビジネスに変えていくか。この危機感をビジネスチャンスだと思っていただける企業であればぜひ参画してほしい」と呼びかけた。また、既に複数の企業からの明確な意志表明を受けていることも明らかにした。
今後の展望については「法人であれば誰でも利用できるオープンなものとしたい。よりサスティナブルな未来を描ける会社(プラットフォーム)にパートナーが集まってくるのでは」と語った。
■SSTの概要
会社名:Sustainable Shared Transport(サステナブル シェアード トランスポート)(英文表記:Sustainable Shared Transport Inc.)
所在地:東京都中央区銀座 2-16-10
資本金:3億5000万円
設立日:2024年5月21日
事業内容
・標準パレットを中心とした輸配送サービスの提供
・共同輸配送のオープンプラットフォームの管理・運用など
株主構成:ヤマトホールディングス100%
■高野茂幸(たかの しげゆき)プロフィール
2001年3月 名古屋工業大学大学院 生産システム工学専攻 修了
2001年4月 ヤマト運輸入社
2011年4月 同 情報システム部 情報システム課長
2013年4月 ヤマトホールディングス財務戦略担当マネージャー
2015年3月 同 経営戦略担当マネージャー
2017年3月 同 営戦略立案推進機能 シニアマネージャー
2017年10月 ヤマト運輸 法人営業部 部長
2019年4月 同 地域共創プロジェクト部長 兼
ヤマトホールディングス地域共創プロジェクト シニアマネージャー
2021年4月 ヤマト運輸 デジタル機能担当 ゼネラルマネージャー
2022年4月 同 コーポレート デジタル戦略推進部 ゼネラルマネージャー 兼
ヤマトシステム開発 Oneデジタル推進本部長
2023年4月 同 コーポレート グリーンイノベーション開発部
グリーンイノベーション開発グループ シニアマネージャー
2024年2月 同 コーポレート グリーン物流事業推進部
グリーン物流事業推進部長(現任)
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