世界中に広まった新型コロナウイルス流行への対応に追われる中国では、マスクや他の医療製品の生産を増やすため、自動車メーカーや世界最大の「iPhone（アイフォーン）」サプライヤー、国有エネルギー企業が生産ラインを転用している。
習近平国家主席は先週、新型コロナウイルスに対する「人民の闘い」を宣言。国が戦時に行うように、重要な供給品の不足を補うべく国中の製造機械を動員している。
新型コロナウイルスに感染した患者に対応する前線の医療従事者にとって、マスクは欠かせない防護品となっている。しかし、外出時にマスクを着けるよう義務付ける省もあるなか、中国国民の需要増大で供給が逼迫（ひっぱく）している。
中国石油化工（シノペック）は7日、マスク生産装置を確保し、生産ラインを11本設定中であることを明らかにした。上海電気はパートナーと共同で、月内にマスク生産ラインを10本設ける計画だと述べた。
アップルのiPhoneを製造する、台湾の鴻海（ホンハイ）精密工業傘下の富士康科技集団（フォックスコン・テクノロジー・グループ）は、深センでマスクの試験生産を開始したことを先週明らかにした。自社労働者用のほか、支援に充てる可能性もあるという。
ゼネラル・モーターズ（GM）の中国合弁は先週、1日に少なくとも170万枚を生産するため14本の製造ラインを設置する計画を示した。
8日には中国の電気自動車（EV）メーカーの比亜迪（BYD）が、1日当たりマスク500万枚と消毒剤5万本の生産体制を月内に整える目標を打ち出した。広州汽車集団は新しいマスク生産ラインの実現可能性を急ぎ検討しているという。
マスク不足は世界的な問題にもなっており、店頭でもネットでも売り切れだ。米スリーエム（3M）や日本のユニ・チャーム、中国広東省の仏山市南海必得福無紡布はいずれも生産を強化しており、一部は1日24時間、週7日体制で生産ラインを稼働している。
中国に工場のある外資系マスクメーカーは、生産工程を地元政府に握られている。地元政府がマスクの輸出を阻止しているケースが多い。
世界保健機関（WHO）のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は7日の記者会見で、マスクなどの医療用防護装置について、「需要は通常より200倍多く、価格は20倍高い」と述べた。
中国では多くの工場が、労働者をウイルスから守るために春節の休暇を延長しており、概して稼働再開は今週の予定だ。そうであっても、それらの工場が急速に生産を増やせる公算は小さい。サプライチェーン（供給網）が混乱しているほか、全国的な移動の制約が帰省している労働者の復帰を妨げるとみられるからだ。
トヨタ自動車とフォルクスワーゲン（VW）は、一部工場での生産再開を17日に延期した。
春節の休暇とウイルス流行でマスクメーカーの多くの工場が生産停止となっていたが、当局は9日、マスクメーカーの73％が7日時点で生産能力を回復したと述べた。
一部の医療専門家らは、新型コロナウイルスの拡散防止にマスクが有効かどうか疑問を呈している。
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February 10, 2020 at 09:20AM
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