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Monday, March 23, 2020

<西濃あるある> だし、味も天下分け目 関ケ原:岐阜 - 中日新聞

的場さんが論文で示しただしの分水嶺

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 天下分け目の関ケ原は、関東と関西のだし文化の境目。カップ麺の「どん兵衛」は、西日本と東日本が買えることが自慢です。(関ケ原町、30代男性)

    ◇    ◇

 一九七六(昭和五十一)年に発売された日清食品のロングセラー「どん兵衛」に、関東向けと関西向けがあったとは。しかも、関ケ原では、その両方が買えるという。今年で関ケ原の戦いから四百二十年だが、もしや、だしも関ケ原が「天下分け目」なのか。現地へ向かった。

岐阜県と滋賀県を境に「E」「W」と表記が分かれているどん兵衛=大垣支局で

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 昼夜を問わずトラックや乗用車が行き交う国道21号を西へ。関ケ原町に入って間もなく、「決戦 関ケ原天下分け麺処」の看板が見えてきた。「やまびこ路(じ)」という屋号の麺専門店だ。

 のれんをくぐり、うどんを注文。と、店を切り盛りする桑原陽子さん(71)が「東にする? それとも西?」と尋ねてきた。三十五年ほど前の開業当時から、うどんやそばのつゆを東西の二種類作り、選べるようにしているのだという。

 悩んだ末、せっかくだからと両方を注文した。

 「昔は不破の関という関所があってね、今も東と西の人が行き交うの。だしも東西で甘さや濃さが違っていて…」と、うどんが出来上がるまでの間、桑原さんはあれこれと解説してくれた。ここでは、東はカツオだしに濃い口しょうゆがベースの汁。「しょうゆがクッとくるでしょ」と桑原さん。一方、西は昆布だしに薄口しょうゆ。さらりとしてまろやかだ。

 周りの客を観察してみた。普段食べない方を注文したり、何人かで東西両方を食べ比べたりしている。全体だと西がやや多めか。ちなみに隣の垂井町出身の桑原さんは「おうどんは関西、おそばは関東やね」。

 東西のどん兵衛は、関ケ原駅前観光交流館で売られていた。

 ぱっと見、違いが分からない。調べると、容器に「E」(East=東)か「W」(West=西)の文字が印字されているとのこと。指で追ってやっと見つけた。

 誕生までのいきさつを、日清食品ホールディングス広報部に聞いた。

 四十年以上前のこと。開発担当者は東海道新幹線のこだまで一駅ずつ下車。駅周辺の店に入り、片っ端からうどんを食べ歩いた。その結果、関ケ原町が東西の境目だと確信したそうだ。

 商品化にあたっては、具材も工夫。東はしょうゆのうま味と甘みを強めたあげとピリッと辛めの七味を、西は和山椒(さんしょう)を利かせた七味を使った。販売の境界は、新潟、岐阜、三重県から東を「E」、富山、滋賀県から西を「W」とした。

カツオだしに濃い口しょうゆがベース「東」((右))と、昆布だしに薄口しょうゆの「西」のうどんを提供する桑原さん=関ケ原町野上のやまびこ路で

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 家庭の味はどうか。関ケ原町が二〇一六年三月にまとめた「東西文化の調査報告書」によると、やはり「関ケ原町付近が境界線」。

 調査対象は関ケ原町と、周辺の垂井町、大垣市、滋賀県米原市の住民。だしを含む食文化のおおむねの境目は、関ケ原町西部にある標高一七五メートルの今須峠だったという。

 ちなみに、今須峠の西側、滋賀県境に接する今須地区の二十代女性は、本紙のネットアンケート「中日ボイス」で「関西寄りだからでしょうか。濃い口のだしは、あまり口に合いません」と答えた。

 調査報告書によると、だしだけでなく、いなりずしの形(東=俵形、西=三角)、餅(東=角餅、西=丸餅)なども、この辺りで分かれているようだ。ただ、近年では、今須地区でも、元々の丸餅文化と、東の角餅文化が混ざるなど“東化”が進んでいる、と結論づけている。

 では、なぜ、関ケ原付近が境界線なのか。日本の食文化に詳しい奈良女子大名誉教授の的場輝佳さん(77)は、学生とともに全国のうどんつゆを取り寄せ、傾向を調査。福井、岐阜、三重県を南北に通る線を「だしの東西分水嶺(ぶんすいれい)」とする考えを二〇〇五年に発表した。

 的場さんは、だしそのものの考え方の違いを指摘。関西風は、昆布や魚の節で取っただしに薄口しょうゆなどで調味するため、色も味も薄め。関東風は、濃い口しょうゆやみりんなどで作った「本返し」が基本となり、だしと合わせてつゆを作るためしょうゆの香りが強くなるという。

 「分水嶺」でくっきりと分かれているのは、地形の影響だと分析する。宝暦治水や明治の治水工事により、現在に近い形になるまで洪水が多かった木曽三川。その難所を越えても、三重、滋賀県境には鈴鹿山脈。東西の人の流れが止まり、文化が固定されたというのが的場さんの見立てだ。

 今では交通は至便になったが、「人々の食べ物へのこだわりは強く、当時のまま残ったのでは」と的場さん。そして、こう締めくくった。「『違う』というのは、個性であり、文化。こうした地域性はずっと、大事にしていってほしい」

 (服部桃)

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 【土平編集委員のコメント】今日紹介したのは、岐阜県大垣市や関ケ原町などを対象にした西濃版の記事です。名古屋市の高校から京都市の大学に進み、初めて京都でうどんを食べた時、つゆの違いに驚きました。透き通って丼の底まで見える。「黒い」といってもいいような名古屋のつゆしか知らなかった身には新鮮でした。「東」と「西」の境目が関ケ原町付近というのは何となく想像していましたが、実際に両方を頼める店があるのには感心しました。ちなみに私は東西どちらの味も好きです。

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March 24, 2020 at 11:09AM
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