社会慣習や企業形態の差異など多様な条件の違いで、同じ業界の職場でも、地域によって残業動向は小さからぬ違いが生じる。自らの就業状態が全国ではどの程度の範囲にあるのか、他地域では違いがあるのか否か、自分の生活に何か影響が生じるわけではないが、気になる話には違いない。今回は厚生労働省が2020年3月に発表した、賃金関連の情報を調査集積した結果「賃金構造基本統計調査」の最新版「平成元年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況」の報告書を基に、都道府県別の平均的な、残業時間に相当する超過実労働時間数について確認する。
次に示すのは月あたりの平均超過実労働時間数。これは就業場所の就業規則などで定められた所定労働日における、始業時刻から終業時刻までの時間「以外」に実際に労働した時間数、および所定休日において実際に労働した時間数を指す。
また今件はフルタイム労働者を指す「一般労働者」を対象としたもので、フルタイムなら契約社員や派遣社員も該当する。ただしパートやアルバイトは「一般労働者」ではなく「短時間労働者」なので、検証対象外となる。
産業形態によって大きな差異が生じるが、今回はすべての産業を合わせた総合値を見ていく。当然、残業が多い産業での就労者比率が高い地域の方が、残業時間数は多くなる。また、男女差が大きく出る値でもあるため、男女別々にグラフを作成する。
まず男性。全国平均では16時間/月。おおよそ1日あたり1時間の残業。最も残業時間が長いのは愛知県の20時間。一方最も短いのは鳥取県で11時間。意外にも東京都も13時間で少ない領域に含まれる。地域別傾向は特に見られないが、大都市圏そのものではなく、その周辺・近郊都市圏でやや高めのように見える。
女性においては、最長時間は東京都、愛知県、三重県の10時間。最短は大分県と宮崎県の5時間。愛知県では男性も女性も最長時間にあり、納得できる結果ではある。
女性は男性と比べて残業時間そのものが短めなために、一層地域別傾向はつかみにくい。あえていえば関東と近畿圏でやや長く、西日本で短めの傾向があるように見受けられる。
今調査は事業所に対して行われた調査の結果から集計しているため、いわゆる「サービス残業」の類は今件各値には反映されていない。地域別にサービス残業の長さ、比率が異なるか否かまで確認できる統計データが無く、推計による実残業時間の算出もかなわない。その点には注意をしておくべきである。
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