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Wednesday, July 29, 2020

押井守に麻雀Vシネを撮らせる会社はあるか? 「DEAD OR ALIVE 犯罪者」(1999)後編 - 日経ビジネス電子版

全10416文字

(イラスト:西尾 鉄也)

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二回にわたって、三池崇史監督の「DEAD OR ALIVE 犯罪者」とVシネの時代についてお話を伺ってきました。押井さんは今でもVシネはご覧になってるんですか。

押井:麻雀Vシネとかいまだに見てるよ。

昔のようにDVDを借りてくるんですか?

押井:衛星放送だよ。Vシネのチャンネルとか、あとはMONDO TV(CSのチャンネル)でも麻雀のVシネはしょっちゅうやってるからよく見てる。「また見てる!」とか奥さんに言われるんだけど、奥さんや猫たちが寝た後で麻雀ものを見る。

麻雀のVシネは、音を消して見てたらみんな同じに見えるんじゃないですか?

押井:いや、結構カメラワークとかいろいろ考えてるよ。だってツモって捨ててツモって捨ててロン、とかやることはだいたい同じなわけじゃん。だから撮る側もたぶん飽きるんだよね。最近は分からないけど、ある時期はカメラワークをみんないろいろ考えてた。だからVシネやるんだったら麻雀ものをやりたいと思ってた。

いいですねえ(笑)。押井監督の麻雀Vシネマ。

押井:いろいろ考えてるんだよ、自分だったらこうやりたいって。そういうジャンルの制約の中でものを考えるというのが、一番燃えるんですよ。僕はそういうのが大好き。だから自分の企画でやるということだけじゃなくて、オーダーでものを考えるというのは演出的に楽しめるというか、やりがいがある。

コラムニストの方が同じようなこと言いますね。コラムは「枠」だと。「なんでもいいよ」と言われるよりオーダーがあった方がいい。

押井:なんでもいいよってなっちゃうと逆に「うーん」って考えちゃう。麻雀ものは「何をやってもいいけど、麻雀のところだけ真面目に撮ってね」というさ。昔のピンク映画みたいなもんだよね。濡れ場さえ撮っておけばあとは何をやってもいいよという、日活ロマンポルノとかと一緒。

 香港映画だって、最初に全部アクションシーンを撮っちゃって、残りの2日ぐらいでドラマを全部撮るという作り方だったよね。僕が香港に行って見せてもらったときもそういう話だった。現場は24時間回し続けるんだよ。

え? どうやって?

押井:監督と役者だけ24時間撮る。スタッフはふた組あって12時間制で交代する。監督と役者は変えられないから、撮り終えるまで寝ちゃダメというさ。そういうやり方で、ドラマは1日か2日でバーッと撮る。アクションだけは命だからさ。そしてそれは殺陣師が撮るから、監督はたぶん裏で寝てるんですよ。そういう話。

麻雀シーンはデタラメでもOK?

押井:麻雀映画も話を聞いたことがあるけど、麻雀のシーンさえ撮っちゃえばあとはどうにでもなる。だけど「麻雀シーンは結構大変だ」とも言ってた。

どの辺が大変なんでしょうか。

押井:ちゃんと真面目に手牌を作らないといけないから。あれはその専門家が、麻雀のプロが指導してやるから、監督はやることないんですよ。そうなるとカメラワークを考えるしかないわけ。だからいろんな監督がいろんなことをやってたよ。さすがにネタが尽きたみたいだけど、僕は「いや、できる」とまだ思ってるから。やりたいことはいっぱいある。でもそういう話が全然来ないね。

じゃあ今からでもやりましょう。押井監督に麻雀Vシネを頼んでみたいというプロデューサーはすぐにご連絡下さい!

押井:役者だって誰でもオッケー。ただし「何をやっても文句言わないよね?」という話。麻雀ものをやるとしても、真面目に手牌を作るとか、そういう気は全くないから。

それで成立しますか?

押井:そういう例があるんですよ。「アントニオ・ダス・モルテス」(1969)っていう映画、昔カンヌで賞を取ったブラジル映画なんだけど、マカロニウエスタンみたいな革命の英雄の話。僕が一番気に入ったのは、悪い奴がビリヤードをやってるの。牧場主か地主だかがビリヤードをやりながら会話してるシーンなんだけど、よく見るとそのビリヤードがデタラメなの。ただ球を突いてるだけ。だから、それが映画なんだということなんだよ。デタラメのビリヤードというのは以前僕も「紅い眼鏡」でやったけど。

DVDのオーディオコメンタリーでも、その映画が元ネタだって仰ってましたね。

押井:麻雀のシーンだって場の緊張感が必要なだけであって、ツモがどういう順番で何が入ってテンパってとか、どうだっていいじゃんそんなものと思うんだけど。漫画の『アカギ』(福本伸行作、竹書房)なんて7割能書きじゃん。負けたら血を抜かれたりとかさ、あの駆け引きがみんな面白いわけでしょ。要するに博打を映画にするとかドラマにする面白さってそこなんだよ。なぜそうなるかというネタなんてほんの少しでいい。

ルールはわからなくても面白い

押井:ヘンリー・フォンダのポーカーの映画もあったじゃん。開拓民の一家がやってきたとある町でポーカーの勝負があって。ヘンリー・フォンダは博打が大好きな役で、足を洗って真面目に牧場を作ろうと思ってるんだよ。だけど、奥さんが「絶対やめて」と言ってるのにポーカーにのめり込んで、大博打を打っちゃうんですよ。ところが――、いう有名な映画なんですよ。なんていったかな?

(調べて)「テキサスの五人の仲間」(1965)ですか。

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July 30, 2020 at 03:11AM
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