「世界を代表するスーパーカーのひとつ」と断言できる、イタリアのフェラーリ。多少なりとも車に興味がある人であれば、「一度は所有してみたい……」と思ったことがあるかもしれません。しかし、新車だけでなく「中古車」でもかなり高額なフェラーリを買うなんて、実現可能なのでしょうか? リアルな中古車事情に詳しい伊達軍曹さんに聞いてみました。 【写真】このフェラーリなら、なんとか買える? 「360モデナ」の写真を見る 筆者のようなド庶民でも、実は… 男なら一生に一度は……というのも今の時代、ポリコレ的にどうかと思われるため、言い直そう。車というものに興味を持っている人間であれば、「一生に一度くらいは乗ってみたい!」と思う場合が多いのが、イタリアの「フェラーリ」である。 言わずと知れた美しいデザインと素晴らしい音色のエンジンが最大の特徴となるイタリアン・スーパーカーだが、スーパーカーだけあってフェラーリは高い。新車を買うとなれば車両本体価格だけで4,000万円は下らず、そのほかに数百万円レベルのオプション装備も必要となる。 「なら、中古車で」といっても、例えば「458イタリア」という2015年まで販売されていた人気のV8ミッドシップモデルの中古車は、車両価格2,200万円あたりが中心。2,200万円というのは、ファミリー層に人気のトヨタ自動車「ヴォクシーZS “煌 Ⅲ”」でいえば新車7台分以上に相当する金額であるため、普通に考えて、おいそれと買えるものではない。まぁ、“煌 Ⅲ”を7台買う人もいないとは思うが。 それはさておき、ならば筆者のようなド庶民は、「フェラーリを買う」という夢や野望を、今生では絶対に叶えることができないのか? 実は、そんなこともない。その気になれば、筆者レベルのド庶民であっても――さすがに新車は難しいが――中古のフェラーリならば買うことができる。 フェラーリオーナーの2~3割はごく普通の会社員? 正確な統計を取ったわけではないが、これまでの筆者のフィールド調査によれば、フェラーリオーナーの7割か8割くらいは超絶お金持ちで、特に何の問題もなくサクッとフェラーリを購入している。 だが、残る2割から3割のフェラーリユーザーは、「おおむね中流くらい」の勤め人なのだ。なかには年収300万円台くらいの、失礼ながら「中流とは微妙に言い難い」といった層のフェラーリオーナーも確かに存在しているのだ。 そういった勤め人系フェラーリオーナーの多くが利用しているのが「超長期ローン」なのである。 具体的な数字でお話ししよう。 勤め先での額面年収が600万円(要するに中流サラリーマンに相当)であれば、フェラーリ専門店では900万円までのローンが組める場合が多い。 で、例えば「360モデナ」というまあまあ人気のモデルであれば、おすすめできるコンディションの物件の中古車価格がだいたい1,000万円ぐらい。ということは、とりあえず頭金約100万円を用意することができるなら、割といつでも、「360モデナ」のけっこう悪くない中古車を買えてしまうのだ。 「いや、買えてしまうのだって言っても、その支払いはどうするんだよ!」という苦情もあるだろう。当然の苦情である。 そこで登場するのが、先ほどから申し上げている「超長期ローン」なのだ。 勤め人の味方? フェラーリの「超長期ローン」 富裕層のフェラーリオーナーのことはよく知らないが、勤め人のど根性系フェラーリオーナーの多くは「120回払い」くらいで中古フェラーリを購入している。ならば、今回のサンプルである1,000万円の「360モデナ」を120回払いで買う場合のローンシミュレーションをしてみよう。 ●車両価格:1,000万円 ●頭金:100万円 ●ローン元金:900万円 ●支払回数:120回 ●金利:3.0% ●ボーナス月加算:なし ★毎月支払額:86,905円 ……月々約8万7,000円。なんともビミョーな金額ではある。なんとかイケそうな、でもやっぱりキツそうな、という。 頭金を100万円から200万円に増やして再計算してみよう。 ●車両価格:1,000万円 ●頭金:200万円 ●ローン元金:800万円 ●支払回数:120回 ●金利:3.0% ●ボーナス月加算:なし ★毎月支払額:77,249円 月々の支払額は約7万7,000円。先ほどの例よりは1万円ほど下がったが、それでもビミョー(=なんとかイケそう)な、でもやっぱりキツそうな金額であることに変わりはないようだ。 つまり、この金額こそが「その気になれば買える」の「その気」なのである。 人生を賭けるつもりで……というのはやや大げさだが、人生の時間やお金や気合いの多くを「フェラーリ」というものに投入する覚悟があるならば、買えなくもないのである。そして、実際に上記くらい(月々7万円くらい)を、ほかの生活費や遊興費などを節約することで捻出し、見事(中古だけど)フェラーリオーナーとなられた勤め人各位は本当に数多くいらっしゃるのだ。 リセール価格の異常な高さも「夢」を後押しする 「でも、途中で払うのがキツくなっちゃったらどうするの?」という不安もあるだろう。 しかしその場合でも、実は特に問題はない。 フェラーリ(人気モデル)というのはリセール価格がベラボーに高いため、例として挙げた購入価格1,000万円の360モデナであれば、数年後に売却するとしても「ローン残債がチャラになるくらい」か、足が出るとしても少々くらいの金額で売却できる場合がほとんどなのだ。 もちろん、走行距離をガンガン延ばしてしまうとリセール価格もガンガン下がるが、あいにく、フェラーリという車は何もかもがあまりにも強烈であるため、常人は「月に1,000キロ乗る」なんてことはほぼ絶対にできない。せいぜい月に1回か、多い人でも週に1回くらい、ちょっと動かすだけで思いっきり満足できるというか、それだけで十分お腹いっぱいになるのである。それゆえ走行距離は延びず、リセール価格もあまり下がらない――という仕組みになっているのだ。 そして最後の問題は、「でも、フェラーリってそこまでして買う意味があるものなの?」という部分だろう。 これに対しては「まぁ、そのあたりは人それぞれですよね」というのが公式の回答となるが、非公式の回答としては、「筆者が取材した勤め人系フェラーリオーナーさんの99.9%は、『買って良かった!』っていってますよ」というものになる。 あとは、あなたがフェラーリについてどうお考えになるかだ。もちろん、買うも買わぬもご自由である。 伊達軍曹 だてぐんそう 1967年東京都出身。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、大手自動車メディア多数に記事を寄稿している。中古車選びの流派「伊達心眼流」の創始者(自称)。
伊達軍曹
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