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Tuesday, June 1, 2021

日常に寄り添うD2Cファッションブランド「O0u」が目指すサーキュラーエコノミー | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン - IDEAS FOR GOOD

ファッション業界の環境や社会的責任が必須のものとして捉えられている今、ファッション業界におけるビジネスモデルが変化してきている。「グローバルワーク」「ニコアンド」「ローリーズファーム」など30を超えるブランドを国内外で展開するカジュアルファッション専門店チェーンであるアダストリアもその一つだ。

「ファッションのワクワクを、未来まで。」をCSRポリシーとして掲げるアダストリアグループは、ファッション業界におけるサーキュラーエコノミーの実現を目指すとともに、アダストリアのサステナビリティ経営を加速させる役割を担う子会社としてADOORLINK(アドアーリンク)を2020年12月に設立。

そのアドアーリンクから、2021年春に新ブランドが立ち上がった。その名も「O0u(オーゼロユー)」。「O0u」という名は、循環する円弧O(オー)、多様性と包括の0(ゼロ)、そしてあなたのu(ユー)を表している。一人一人に寄り添うブランドであるという意味もある。

今回編集部は、アドア―リンクのマーケティングディレクターを務める高橋朗氏と営業部長の穂積亜矢子氏にお話を伺った。

D2Cモデルを軸としてサステナブルなブランドを目指す

O0uは、ミッションに「一人ひとりがありのままにかっこよく生きられる世の中をつくる」を掲げ、「自分にも地球にも、誠実でやさしい日本発のグローバル・ライフスタイルブランド」を目指している。そのビジネスモデルにはD2Cが採用された。どのような意図があるのだろうか。

高橋氏「弊社は、ものづくりから販売まですべてを一貫して取り組んでいる製造小売業という強みを生かしてD2C(Direct to Consumer)のビジネスモデルを選びました。その強みをより強化することによって、さらなる事業価値を生み出していきたいと考えています。」

マーケティングディレクターの高橋朗氏

マーケティングディレクターの高橋朗氏

アダストリアは元々店頭での販売が主軸であるため、顧客起点の姿勢を持っている。結果、顧客の声を商品に反映していくスピードが速いことも強みの一つだ。アドア―リンクが手がけるD2Cというビジネスモデルにおいても、オンラインから顧客の声を拾って直接生産側に反映することで、今までにない価値をさらに提供できるという。

穂積氏は次のように語る。「O0uは店舗を持たないことで、コストが大幅に削減できます。削減したコスト分は、価格や商品の質に還元していきます。コスト削減を実現することで、より良いものを適切な価格でお客様に届けることも重視しています。」

次に、製造過程で重要となる原料について伺った。O0uは、すべての原料にサステナブル素材を使用することを宣言している。特に土壌分解する天然素材を積極的に採用し、原産国のトレーサビリティの担保や、国際的な基準で認証されている生産者から仕入れている。

穂積氏「土壌分解する天然素材の麻や綿を使用する他には、再生ポリエステルを使用しています。再生ポリエステルと一言にいっても、再生素材含有率は会社ごとに基準があります。弊社は40%以上という水準を担保することで、よりサステナブルな製品であることを証明するよう心がけています。」

製品に使用している天然素材

製品に使用している天然素材

これらの素材の他にも、地域へ貢献する目的で国内産素材を積極的に採用しているという。

無駄なものは作らない。テクノロジーを駆使して、商品供給の最適化を図る

サーキュラーエコノミーへの移行をするうえで重要なポイントとなるのは、廃棄物を減らすこと。同ブランドでは3DCGやAIなどのテクノロジーを活用してこの課題に取り組んでいる。

製造過程では、特にサンプル製作の量が問題となっていた。例えば一着の商品を製造するために3回以上サンプルを製造し、それらは販売できず廃棄しなくてはならない。そのため、3DCGを活用し物理的なサンプル製作をなくすことで、顧客の要望を反映しながらもサンプル製造に伴う廃棄削減が可能になるという。

テクノロジーを活用していることを説明したボード

テクノロジーを活用していることを説明したボード(期間限定で開催された展示の様子)

高橋氏は次のように述べる。「従来のアパレル慣行においては、ブランドは完成した商品の在庫を管理するという考え方を持っていました。ですが、我々は素材から開発しているため、素材を在庫として管理し、無駄なく無理なく商品を作ることを重要視しています。加えてAIを活用して需要予測を行い、無駄なものを出さないモノづくりを実現しようと模索しています。難しいことも多いのですが、まずは挑戦することが重要だと思っています。」

これらのテクノロジー活用の延長線上に在庫を持たない受注生産の仕組みづくりを構築する展望がある。

情報をオープンにしてトレーサビリティと透明性を担保し、サーキュラーエコノミー化を加速させる

O0uの挑戦はそれだけにとどまらない。同ブランドは製造工程でのトレーサビリティを確保するため、「Higg Index Score(ヒグ・インデックス・スコア)」を導入した。Higg Index Scoreとは、持続可能なアパレル産業構築を目指す非営利団体であるSustainable Apparel Coalition(サステイナブル・アパレル・コーリション)が開発した環境負荷を見える化する指標のことを指す。O0uでは、CO2の排出量や水の使用量を開示し、全商品のトレーサビリティを確保している。

「サステナブルやサーキュラーエコノミーという海外から来た言葉は敷居が高く、それらがどういうことなのかを生活者に分かりやすく伝える方法がまだ確立されていないと感じています。このHigg Index Scoreを使って、全商品の環境負荷を開示し、まだ足りていない部分も含めて素直に顧客に伝えていくことが事業側のやるべきファーストアクションだと考えています。」と穂積氏は話す。

営業部長の穂積亜矢子氏

営業部長の穂積亜矢子氏

まだ達成できていないことも公開することでブランドに信頼が生まれ、応援されるブランドになる。しかし、このような情報を公開するその意図は信頼を得るためだけでなく、あらゆるステークホルダーのサーキュラーエコノミー化を加速させるためでもあるという。

穂積氏「サーキュラーエコノミーを実現するためには、オープンソース化することが理想です。Higg Index Scoreは我々だけのデータではなく、我々が得たデータを他社も活用していただくきっかけになれば嬉しいです。世の中のために我々ができることは積極的に提供していきます。」

サーキュラーエコノミーを目指すうえでは、排除せずに誰でも参加でき、協力し合うことで大きな変化を生み出すことができる。

「共感」で長く付き合う。顧客起点のブランドでありたい

素材や製造工程にこだわりサーキュラーブランドを目指しているO0u。衣服を循環させるためには、あくまでも顧客のニーズや声を重要視することが必要だという。

穂積氏「まずはお客様の声をいただきたいと思います。ECサイトでは、修理・リペア・アフターリペアなどの対応をお問い合わせいただく仕組みを作っています。これまで様々な企業のリペアの実績がありますが、まずはお客様にどのようなリペアのニーズがあるのかを知りたいと考えています。お客様と対話をしながらサービス拡充を図っていきます。」

顧客の声を聞く姿勢の根底には長期的な関係性を構築したいという想いがある。

高橋氏「ブランドとして大切にしていきたいのは、お客様と長いお付き合いができる関係性です。今までは複数回買っていただくことで関係性を継続するビジネスモデルが大半でしたが、今後はひとつの商品を長く気に入っていただくことも重要視されます。長く着ていただいて、縁があれば再び我々から買っていただくにはどうすればよいのか。これを考えることが、ブランドのマーケティングを形作っていくと考えているのです。」

穂積氏「ブランド立ち上げ期から、お客様には『憧れよりも共感』で長く付き合っていただきたいという想いを大切にしています。心に訴えるサービスは利益と反する部分もありますが、誠実にいることで長期的にみると利益に還元できるのではないかと実感しています。」

今までは数多くの選択肢の中で、「これでいい」という物の選び方をしていたが、「これがいい」という理由がないと物を買わない傾向が増えつつあるのだという。「これがいい」と思ってもらうには、公明正大さやより長く着られるサステナブルな要素を基準にするほかに、ブランドへの共感も大切な基準として捉えられるべきだということだろう。

その共感を得るために、同ブランドは「多様性を包み込む優しさや、ありのままの自分に合わせることを価値観に持つ、地球にも自分にも誠実でやさしいブランド」を目指している。

ライフスタイルに寄り添った、インクルーシブなブランドであり続けるために

そのようなブランドを実現するために実践する「多様性を包み込む優しさ」や、「地球にも自分にも誠実でやさしいブランド」について詳しく伺った。それは、顧客に寄り添いながら日常のシーンを提案する姿勢を持ち、結果的にサステナブルなブランドだと気づいてもらうことだという。実際にウェブサイトでの見せ方や製品デザインにも、日常のシーンが提案された工夫が凝らされている。

穂積氏「お客様が商品を選ぶ基準となる日常生活のシーンをイメージできるようなサイト作りにこだわっています。アダストリアが展開するウェブストア『.st』では、スタッフが着用しているアイテムを参考にされる傾向があります。その傾向から、O0uのサイトではお客様の日常に寄り添う形で提案し、着心地を想像しやすくするための工夫をしています。」

高橋氏「新型コロナウイルスの影響によって、様々な境界線がなくなりました。オフラインとオンラインが融合したり、晴れ着と家着の差がなくなったり、あらゆる境目があいまいになった感覚があります。O0uの商品についても、性別問わず自分が良いと思ったものを着ていただけるユニセックスデザインかつインクルーシブであることを意識してプロダクトストーリーを伝えている点も特徴として挙げられます。」

「インクルーシブ」というキーワードと関連して、「共創」も重要なポイントとなる。他社と差別化することが従来のビジネスの手法だったが、今後は共創や共存していく方法を模索することが重要になってくる。そのため、O0uは、古着と着合わせることや他社ブランドと組み合わせするコーディネートも積極的に取り入れているのだという。全身自社ブランドで打ち出したとしても実際は古着や異なるブランドで組み合わせることが多いため、より現実に即したコーディネートを提案することに徹底してこだわっている。

穂積氏「ウェブサイトのキービジュアルにはビジネスシーンや家族で過ごす場面をつくって表現しています。それは、よりリアルな生活シーンの提供に重きを置きたいという考えからです。」

まずは着心地の良さを追求することやシンプルさを追求することの延長線上にサステナビリティがあるという。デザインについても詳しく伺った。

穂積氏「例を挙げさせていただくと、シャツからカフスをなくすことによって袖を捲くりやすくなり、家の中で着やすくなることにつながります。他にも、オールインワンやつなぎは丈が長いので収納しにくい傾向にありますが、ズボンの裾にハンガーにかけられるフックを作りました。そのフックをハンガーに通すとトップスと同じ長さで収納できる、といったことなどです。このように、日常に寄り添うために、小さな課題を解決するようなデザインをプラスしています。」

ユニセックスで着心地が追及されたデザインの商品

ユニセックスで着心地が追求されたデザインの商品

サーキュラーブランドを目指してはいるが、消費者が服のデザインや着心地を気に入ってもらい、ブランドを好きになってもらうことを優先しているのだという。

高橋氏「ファッションは楽しいものであって欲しいので、あえてお客様の対象をセグメントせずインクルーシブな姿勢をとっています。サステナビリティやサーキュラーエコノミーを前面に出すよりも、生活に寄り添った着心地の良いデザインに注力しています。デザインを魅力に感じて買ってもらい、採用素材や生産方法を知ったときにサステナビリティを意識しているブランドだと認知してもらえることを狙っています。」

また、将来的には新たな原料を極限まで使用せずに服から服を作ることを理想としている。

高橋氏「すでにアダストリアでは『PlayCycle!(プレイ・サイクル)』というサービスがあります。これは、お客様の不要な衣料品を回収して燃料や衣服の素材へリサイクルする取り組みです。O0uでも服のリサイクルやリペア、リユースの対応をしていきたいと考えています。他にも、アダストリアの事業の一つ『FROMSTOCK(フロムストック)』があります。これは、着古した衣服を黒く染め直してアップサイクルするサービスで、O0uでも活用したいと思います。さらに、例えばデニムからカバンにアップサイクルして顧客に喜んでいただけるラインナップを作ることも模索してます。」

まだ立ち上がったばかりのブランドだが、グループの既存アセットを活かしつつも、同じような価値観や未来への目線を持ったパートナーを探していくという。

「業種問わずコラボレーションしていくことで輪が広がっていきます。結果、より世の中への影響力が高まるのではないかと思います。ライフスタイルブランドとして我々が特に欠けていると感じているのは食や住の領域なので、パートナーさんたちと強みをかけあわせて我々の理想とするライフスタイルを作っていきたいと思います。」

編集後記

近年、国内でも耳をする機会が増えた「サステナビリティ」や「SDGs」、「サーキュラエコノミー」。これらの言葉の流行と共に、一個人から企業、政府まで行動の変化が求められている。しかし、環境や社会に配慮する行動や気候変動対策は「多くの場合,生活の質を脅かすものである」と感じている人が世界平均27%に対して日本では60%という調査結果がある。

そんななか、今回の取材を通じて「寄り添う」という同ブランドの姿勢が特に印象に残った。環境や社会に配慮し、廃棄物を減らし、資源価値を最大限に有効活用するサーキュラーエコノミーの要素をビジネスモデルに取り入れてはいるものの、生活者の視点に立つことを優先させ、より豊かなライフスタイルを実現させたいという姿勢を前面に出している。

このような生活を豊かにするライフスタイルブランドを通じて、日本において「サステナビリティ=生活を脅かすもの」という認識ではなく、楽しみながら環境配慮型ライフスタイルを送ることができるという認識が広がることを期待したい。

【参照サイト】O0u公式WEBストア
【参照サイト】アダストリア公式サイト
【参照サイト】Sustainable Apparel Coalition

※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「Circular Economy Hub」からの転載記事となります。

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