■物量投入型ではなく、精密で軽い素材へ
コンポーネント・オーディオにとって、システム構成を合理的に使いやすく配置するために、オーディオラックは大切な役割がある。また、ラック内に整然と収まった機材を視覚的に楽しむこともマニアの生きがいとして趣味のオーディオを支えていた。
オーディオ全盛時代、オーディオラックは重くしっかりした板材で作られていることが有利であるという認識が専門誌で伝えられた。手で叩き、響きの軽い製品は敬遠され、物量投入型のラックが主流になった。1980年頃の理想は現在も継承されている要素ではあるが、現在の最先端オーディオラックの設計は飛躍的に研究が進んだ。まるで精密機器のようなデリケートで精度の高い、そして素材の物性も最適な研究が進んでいるのが動向である。
オーディオラックはどのようにして性能を高めるのか。構造は、機器を設置する板材と床に向かい垂直に支持する支柱材によるシンプルなものである。それだけに、機器を直接支えるボード材は重要である。しかし、この材料も単に鳴きがなく分厚い材料が理想というわけではなくなった。広い帯域特性のなかで中間帯域のレスポンスと中高域の性能を高SN比で引き出すためには、MDF材は無難なようで損失が多く最適ではないと判断することができる。
現在、高性能ラックで採用されている板材は驚くほど薄く、それでも優れた効果を発揮するのはSN比が高く振動歪が少ない広帯域な性能ゆえである。
さらに重要なのが、板材を支える支柱の素材と構造であった。ティグロンは、マグネシウム円筒構造をさらに改良し、内部の制振材を見直し、インジウム製Oリング、ステンレスのスパイクなどで構成したのが、今回のグランドマグネシア・シリーズである。
■スパイク構造の威力は絶大。洗練された高SN比に激変
オーディオラックが単なる棚ではなく、オーディオ機器の一部と考えるのが先端メーカーの考えであり、この影響力からすれば同感である。グランドマグネシアは、支柱を改良した新規構造を採用しているのが注目するポイントである。
今回、1段式の「GMR-1」と同社の従来製品である「TMR-1」との音質を比較してみた。搭載したのはアキュフェーズのパワーアンプ「P-4500」で、床の状態はカーペットである。「GMR-1」にすると、洗練された高SN比に激変する。こんなに違いが発生することに正直驚いた。音は純度が高く歪みや混濁が少ない。
TMR-1はマグネシウム円柱がそのまま設置される構造であるため、これは新開発のスパイク構造の威力と考えて間違いない。空間は広く澄みきり、音は静かに、中高域のトランジェントに優れる。低音は強力なエネルギーを引き締めダンピング性能が高い。TMR-1はぬるくて甘く、低音は太くゆるく感じてしまう。「GMR-1」の方が価格は高くなるが、その価値は高い。パワーアンプの真価を限界まで引き出してくるような性能をみせる。
パワーアンプの設置はどのようにしているだろうか? フローリングでは床に直接設置することが多いかもしれない。ただ、床はスピーカーの振動がそうとう流れ伝わってくるため、対策した方がいい。とかくパワーアンプはあまりデリケートではないと考えやすいが、設置環境の条件を受けていることが理解できるテストであった。
なお、ボード材はロシアンバーチの9mmと12mmを合わせた複合構造で、さらに剛性を工夫した設計になっている。この優れた組成をリフォームで部屋の壁材に採用したり、ボードを自作して検討したこともあり、板材の中では使いやすく信用している材料である。
今回はオーディオラックの主に支柱材の違いの効果を体験することができ、私の新しい知識に加えられた。
(提供:ティグロン)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.183』からの転載です。
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