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Sunday, July 24, 2022

Shopify Plusを使ったECサイト開発の要件定義ってどうやるの?~電通デジタルの要件定義フレームワーク~ | ウェブ電通報 - 電通報

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前回の記事ではShopify Plusとその機能と拡張性についてご紹介しました。

Shopify PlusはすぐにECサイトを立ち上げる仕組みが多く揃えられていますが、ECサイトが通常のサイトと異なるのは、前回でもご紹介をしました「倉庫、外部システム、既存会員、販売チャネルといったマーケティング施策を担うツールやシステムと連携し、時には新たに別のシステムを構築していかなければならない」という点です。

それらを一つ一つ洗い出し、対応方法や運用方法を決定していくのがECサイト立ち上げ時の超重要フェーズである「要件定義」です。

第2回ではShopify Plusを使った場合の要件定義の考え方や進め方を電通デジタル流のフレームワークに沿ってご紹介します。

ECサイト開発において要件定義が重要な理由

「要件定義」はシステム開発を行う上で欠かせない工程です。

具体的には、自社の事業戦略、社内の組織体制や業務内容、マーケティング施策といったゴール、目的、そしてそれに向けて実現したいことといった要求を元に、システムの方向性、サイト上で実装する機能、さらには具体的な開発方針を定義する工程です。

さらにはそこで定義したものについて、自社の要求が満たせるかどうか、その進め方は問題ないかどうかを、自社とベンダーの双方で合意を取るフェーズです。

特にECサイトはサイト上にコンテンツを表示するだけではなく、

  • 会員登録、購入、レコメンドなどのフロント機能
  • 商品管理、会員管理、注文管理などのバックオフィス機能
  • 外部システムやツールとの連携機能

をメインとしたECサイト独自の複雑な機能が絡み合って構成されているため、ただのWebサイトではなくWebアプリケーションといっても過言ではありません。また、購入フローや情報設計といったユーザー体験の視点や、EC運用をどのように行うかといった業務の視点からの検討も必要です。

このように、複雑なECサイトだからこそ、ユーザー/開発の両方の視点でシステムに求めるものを理解し、明確にする要件定義フェーズを慎重に丁寧に進めることで、後工程である開発フェーズもスムーズに進めることができるのです。

また、プロジェクト管理の視点では、要件定義フェーズでしっかりと定義をすることで、スケジュール遅延、予算オーバー、システムの品質低下を防ぐこともできます。

電通デジタルのShopify Plusを使ったECサイト開発における要件定義フレームワーク「7つのポイント」

ではここから、電通デジタルが要件定義フェーズで使用している独自の切り口である「7つのポイント」をご紹介します。この「7つのポイント」はShopify Plus以外のECプラットフォームの要件定義にも活用できますので、ぜひ参考にしてください。

shopify plus

電通デジタル独自の要件定義フェーズ「7つのポイント」

1.商品

商品はECサイトの中で一番の要となる要素です。その為、ECサイト開発の要件定義では最初に整理をします。

・商品の種類/商品数/価格帯
要件定義フェーズでは商品の概要情報である「商品の種類/商品数/価格帯」を整理します。そのため、この時点では商品ページに掲載する商品の詳細情報の定義や商品マスタの作成は不要です。

商品数についてはフロントエンドのデザインやユーザビリティにも影響があるため整理しますが、商品数が膨大な場合は別の観点として「商品情報をどのように登録するか」といった検討も必要となってきます。場合によっては商品を登録するためのツールの開発が必要となることもあり、プロジェクト全体のスケジュールへも影響するため、できるだけ早めに整理することをおすすめします。

・商品カテゴリ/検索軸
商品の種類/商品数/価格が整理できたら、次に検討するのが商品カテゴリ/検索軸です。検索軸とはブランド、色、価格帯といった商品カテゴリ以外での検索条件となるものを指します。ECサイトでは「ユーザーがいかに商品を検索しやすく・見つけやすくするか」がポイントとなるため、商品カテゴリ/検索軸の情報設計が大変重要です。

Shopify/Shopify Plusでは商品カテゴリ(Shopify上ではコレクションと呼びます)を複数階層で設定することができないという制限があるため、商品カテゴリの設計に工夫が必要です。また、検索軸についてはShopify/Shopify Plusの制限がある機能の中でどのように設定するかといった機能側での検討も必要となります。

2.在庫

商品と一緒に検討が必要なのが在庫です。ECサイトでの在庫管理はとても難しく、在庫管理の方法を間違うと「売り越し」や「売り逃し」が起こってしまい、クレームや機会損失というリスクにもつながるため慎重な検討が必要です。

・各商品の在庫数をどこで管理するか
まず、Shopify/Shopify Plusでは、管理画面で登録した各商品に対して在庫数を登録する必要があります。この機能は必要最低限の在庫管理機能でもあるため、ECサイトをミニマムで開発したいという場合はShopify/Shopify Plus内で在庫を管理するという選択も可能です。

一方、既に基幹システムやOMS(受注管理システム)といった外部システムを使って在庫管理をしている場合は、引き続きその仕組みを使うという選択もあります。その場合は、後述の外部システムとShopify/Shopify Plusの在庫数をどのように反映させるかといった検討が必要となります。

また、デジタルコンテンツを販売する場合は在庫管理が不要という場合もあるでしょう。

・外部システムで在庫を管理する場合、ECサイトにどのように連携させるか
基幹システムやOMSなどの外部システムで在庫管理を行っている場合は、Shopify/Shopify Plusに在庫を反映するシステムを検討・開発する必要があります。

具体的な連携方法としては、APIを使った自動連携や、CSVファイル等を使った手動連携がありますが、在庫は常に変動があるものですので、できるだけ自社の運用担当者に負荷がかからない方法を選択するのがよいでしょう。

またShopify/Shopify Plusと親和性の高い在庫管理ができるOMSなどのサービスもあるため、そちらの導入を検討してみてもよいかもしれません。

3. 商品の受取方法

ECサイトでの購入~商品受取までの流れは「ECサイト上で商品を購入し自宅に配送してもらう」といったパターンがほとんどでしたが、

  • 多種多様な商材/価格帯の商品をオンラインで購入したいというニーズの増加
  • 高騰し続けている配送料を少しでも抑えたいというビジネスサイドの判断
  • オンラインとオフラインを垣根なく行き来しながら買い物をする購入体験の多様化

といった理由により、様々な受取方法が採用されています。

主なものとしては、直接配送、店頭受取、店頭受取/店頭支払が挙げられますが、どれを選ぶかによって管理画面上での設定や、場合によっては追加で開発が必要となることもあります。

また、事業フェーズに合わせて商品の受取方法を変えたい・増やしたいという要望が出てくる場合もあるため、先を見据えた機能検討が必要です。

なお、Shopify/Shopify Plusでは基本機能や公式アプリを使うことで直接配送、店頭受取、店頭受取/店頭支払の受取方法を実現できるため、その点とても安心です。

4.決済

ECサイト独自の機能とも言えるのが決済です。Shopify/Shopify Plusでは選択できる決済代行会社と決済方法が限られているため、その中から選んで導入しなければならないのですが、選ぶポイントは大きく2つです。

・商材とターゲットに合わせた決済方法
「高価格帯商品はクレジットカードを使う場合が多い」「若年層をターゲットにした商品の場合は後払いも必要」といったように商材やターゲットによって導入すべき決済方法は異なります。エンドユーザーが使いたい決済方法が無いとサイト離脱にも繋がるため、慎重な検討が必要です。

・決済手数料/販売手数料
決済手数料と販売手数料はECサイトでの利益に直結する要素です。各決済代行会社でも決済方法の種類によって決済手数料が異なりますし、Shopify独自の決済であるShopify Paymentを使えば取引手数料が0円になるといった仕組みもありますので、俯瞰した判断が必要です。

5.配送/倉庫

「配送」、「倉庫」と一言で言っても検討範囲はとても広く、ECサイトを運営していく上でのランニングコストの1つでもあるため、既存の仕組みやシステムを使うという方法も視野に入れながら検討していきます。

・送料
送料は配送業者へ支払う送料だけではなく、倉庫保管料、配送業務のコスト等を踏まえ、決定します。最近では送料無料が当たり前になっていますが、梱包用の資材や配送料も高騰しているため、慎重な検討が必要です。

・倉庫
EC事業において、販売する商品をどこで保管するのか検討が必要です。自社倉庫を持っている場合や、倉庫を外部委託するなど、方法はさまざまです。

倉庫ではWMS(倉庫管理システム)というシステムを使い配送業務の管理を行っていますが、Shopify/Shopify Plusの場合、親和性の高いサービスやWMSが複数ありますので、それらを選ぶことで開発・導入コストを抑えることも可能です。

・フルフィルメント
フルフィルメントとは「お客様が商品を注文してから手元に届くまでに発生する業務」全般を指しますが、入庫、検品、梱包、発送などの配送業務やコールセンターもそれにあたります。EC事業を開始するにあたり、これを誰がどうやって担うのか検討・定義が必要です。

6.会員管理

ECサイトでは様々な情報が扱われていますが、マーケティング施策を行う上で重要となるのが会員情報です。会員情報に関して検討する点は大きく3つです。

・新規会員登録の登録項目
ユーザーの特性を把握するために新規会員登録時の入力項目の検討は重要です。ただし、あまりにも登録項目が多くなってしまうとサイト離脱/購入離脱にもつながるため、登録ハードルとデータ取得の重要度のバランスを見ながら検討しなければなりません。

・会員に関するマーケティング機能の有無
会員登録が不要となるゲスト購入機能、新規会員登録数をUPさせるための初回クーポン、購入数や購入金額に合わせた会員ランクなどといったように、会員に関するマーケティング施策はいろいろとあります。これらの施策を実現させるための機能がどの程度必要なのか、要件定義の段階で洗い出す必要があります。

・既存の会員管理システムとの連携(シングルサインオンの実現)
既にECサイト以外のサイトやサービスで会員管理を行っている場合に、そのシステムで使用しているID/パスワードを使ってShopify/Shopify Plusで立ち上げたECサイトにログインさせることができます。これがシングルサインオンです。

シングルサインオンを実現するには、Shopify Plusで使用可能なマルチパスAPIの利用が必須ですので、この要件がある場合は必ずShopify Plusのプランを選んでください。

既存の会員管理システムとの連携についてはシステム側の検討だけではなく、会員登録/会員情報の変更/退会といったユーザーフローの観点から検討も必要です。

7.業務フロー

ECの運用業務は、大きく下の2つに分けることができます。

・フロント業務
コンテンツ制作、商品撮影、プロモーション/マーケティング

・バックエンド業務
商品手配、受注管理、配送、問合せ対応、返品/交換、売上管理

これらの業務を「誰が、どのシステムを使って、どの順番で、手動/自動で」といった観点で、フローチャートで整理したものが業務フローです。

業務フローを作成することで業務を客観的な視点で可視化することができますが、ECサイトを開発する視点から見た場合、Shopify/Shopify Plusの機能では業務を担いきれずカスタマイズが必要となる機能を把握することも可能です。

そのため、できれば要件定義の段階で簡単で構いませんので、業務フローを作成してみることをおすすめします。 

要件定義をスムーズに進めるために

今回の記事では、Shopify Plusを使ってECサイトを構築するための要件定義の重要性と具体的に進める際に活用できる「7つのポイント」をご紹介しました。ただ、これらはあくまで基本的な内容であり、自社の要求内容によって開発範囲も変わり、今回ご紹介した内容以外にも定義していくべき内容が増えるということももちろんあるため、プロジェクト規模や特性に合わせてカスタマイズをしてください。

要件定義を進めるにあたり、 Shopify/Shopify Plusの機能や実現できることといった知見だけではなく、自社の要求を正しくベンダーに伝え、 その要求をもとにベンダーが課題を抽出するための双方でのコミュニケーションが大変重要です。

プロジェクトのゴールや目標、実現したいことだけではなく、時には実現できないこともしっかりと議論をしながら進めることがプロジェクトを成功に導きますので、ぜひコミュニケーションを意識した要件定義を行ってみてください。

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