日本経済をデータで理解する方法
経済に関する議論で、実際のデータに反する内容がしばしば言われることがある。経済を正しく理解するには、統計データによって正確な状況を把握することが不可欠だ。以下では、日本経済をデータによって把握することとしよう。私は、noteで作成した「使える日本経済データ ナビゲーション」に、日本経済と世界経済のデータに関するリンク集を作成している。以下で用いるデータは本稿にもリンク先を示してあるが、上記のリンク集にも示してある。そこから簡単にアクセスできるので、是非、積極的に利用していただきたい。
一般に、データサイトにはさまざまな統計が示されているが、(特に政府のデータサイトの場合は)あまりにたくさんの統計表があるため、どれを見たら良いかがわからない場合が多い。どの表が必要になるかはもちろん目的によって違うが、まず基本の表を見て全体像をつかみ、必要に応じてほかの表を見るのが効率的だ。
以下では、データサイトにあるさまざまな統計表のうち、最も基本的なものがどれかを示してある。なお、サイトによっては、データベースの形式でデータを提供しているところもある。この場合は、必要なデータだけを抽出できるので大変便利だ。
しかし、完成された統計表がすぐに得られるわけではないので、使い方に慣れていないと、かえって使いにくいと感じる時もある。ただし、いったん使い方を習得すると、極めて便利であることが分かる。
付加価値で見る製造業:全産業の56%から25%に
日本の産業構造は、いくつかのデータによって知ることができる。1つの方法は、GDP(国内総生産)統計で産業別の付加価値を見ることだ。付加価値とは、売上から売上原価を差し引いたもので、これが賃金や利益の原資になる。そして付加価値を合計したものがGDPとなる。GDP統計としてしばしば使われるのは、GDPを支出面から見た需要項目別の統計だが、本稿では産業別の付加価値を見るために、「2020年度国民経済計算」の「主要系列表」にある「経済活動別国内総生産」を見る。
この表によって2020年の名目付加価値生産額を見ると、製造業は106兆円であって、GDPの538兆円の19.7%となっている。製造業は日本の基幹産業だと思われることが多いが、その付加価値生産は卸売り・小売業の68兆円と不動産業66兆円の合計より少ないのだ。
GDPのデータはデータベースの形式では提供されていないので、長期的な時系列分析など、分析を行うには不便だ。分析という目的のためには、法人企業統計調査のデータベースを用いるのが便利だ。
このデータは、法人企業だけを対象としており、かつ金融保険業と公務が含まれていないので、GDP統計より範囲が狭い。したがって、全産業付加価値の合計は2020年度で273兆円と、GDP(538兆円)よりかなり少ない。
このように、法人企業統計調査は日本経済全体をカバーしているわけではないのだが、その主要な部分はカバーできている。このため、日本経済の時系列的な変化を見るには、GDPデータより法人企業統計データのほうが便利だ。
1960年からの時間的な付加価値の推移を見ると、図1の通りだ。
日本の高度成長を実現した主力産業である製造業の比率が、継続的に低下していることがわかる。
全産業に対する製造業付加価値の比率は、1960年度には56.7%であり、60年代を通じて50%台だった。つまり、製造業は日本の全産業付加価値の過半を生産していた。その後、比率は次第に低下し、1970年代から1980年台初めまでは40%台となった。2007年度までは30%台で、2020年度では25.5%だ。
なおこの図では、製造業の付加価値の絶対額が1990年台以降、減少傾向にある。
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