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Saturday, September 17, 2022

「モデルナはコロナワクチンの会社ではない」来日したバンセルCEOは何を語ったか | AnswersNews - Answers(アンサーズ)

(写真:ロイター)

新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンをいち早く実用化し、一躍、世界有数の製薬企業となった米モデルナ。来日したステファン・バンセルCEO(最高経営責任者)が9月14日、東京都内で記者会見を行い、事業の展望や日本市場への期待を語りました。

46の開発プログラム

バンセルCEOが記者会見で最も強調したのは、mRNAのワクチン・治療薬としての可能性です。バンセル氏は、生物の遺伝情報が4種類の塩基で構成されていることを、2進法をとるコンピューターになぞらえ、mRNA医薬を「デジタルメディスン」と表現。「モデルナはコロナワクチンの会社ではなく、非常にエキサイティングなプラットフォームであるデジタルメディスンmRNAを有する会社だ」と話しました。

バンセルCEOによると、モデルナでは今年8月時点で46の開発プログラムが進行中。新型コロナ、季節性インフルエンザ、RSウイルスなどの呼吸器感染症に対するワクチンや、サイトメガロウイルス、HIV、ジカウイルスといった感染症に対するワクチンの開発を進めているほか、治療薬として「がん免疫療法」「希少疾患」「循環器系疾患」「自己免疫疾患」の4領域で14の新薬候補を抱えています。

東京都内で記者会見した米モデルナのステファン・バンセルCEO(2022年9月14日、提供写真)

インフルエンザワクチン 来年の承認取得目指す

季節性インフルエンザワクチンは来年の承認取得を目指しており、新型コロナと季節性インフルエンザの混合ワクチンも24年の承認取得を目指して開発が進んでいます。バンセルCEOは、mRNAを活用することで地域ごとに流行株に応じた最適なワクチンを提供できるようになると強調。RSウイルスを含む3種混合ワクチンの実用化にも意欲を示し、地域ごとにカスタマイズされた混合ワクチンを使って呼吸器系ウイルス全般を年1回の接種で予防するビジョンも披露しました。

治療薬では、米メルクと共同開発している個別化がんワクチンや、希少疾患であるプロピオン酸血症/メチルマロン酸血症治療薬、心筋虚血治療薬が臨床試験を実施中。特に個別化がんワクチンは「世界でも最良クラスの治療選択肢になる」と期待しました。

バンセルCEOは「世の中には人々を保護する手段がないウイルスがまだ多くあり、できるだけ多くのワクチンを開発したい。向こう1~2年の間に、ラボから臨床試験に展開していきたい」とし、「プラットフォームについても拡大していきたい。mRNAにはまだたくさんの可能性があり、さまざまな患者に成功裏に届けていけたらと思っている」と話しました。

日本に製造拠点

かつて日本に住んだ経験があり、親日家だというバンセル氏。日本市場について「医療体制が非常に高いレベルにあり、魅力的な市場だ。非常に魅力的な機会が備わっている。日本は私にとって思い入れのある国でもあり、できるだけ迅速に製品を届けたい」と語りました。

日本への投資についても意欲を示し、「新しいイノベーションを日本でも展開していきたい。日本でも最高の治療選択肢が備わるべきだと考えており、mRNA医薬の製造工場を日本に建設することを検討している」と表明。会見に同席した日本法人の鈴木蘭美社長は「日本に製造拠点をつくり、国産の最高品質のワクチンを日本の皆さんに届けたいと考えている。これが叶えば、次にパンデミックが起きたとすると、日本政府の指示を受けてから数カ月以内に全国民にワクチンを届けることができる」とし、「今回の来日でステファンが政治家や官僚の皆さんと対話することによって、われわれが成し遂げようとしていることの重要性や意義を理解してもらえたらと期待している」と話しました。

特許訴訟「すべての特許は尊重されなければならない」

モデルナは先月、mRNAに関する自社技術の特許を侵害しているとして、米ファイザーと独ビオンテックに対して訴訟を起こしました。モデルナは従来、パンデミック中は特許権を行使しない方針を示していましたが、このことについて問われたバンセルCEOは「今はワクチンに対するアクセスは問題になっていない。すべての特許、発明は尊重されなければならない」と語りました。

パンデミックの初期の段階でファイザー/ビオンテックのワクチンがモデルナの特許を侵害している可能性を認識していたといいますが、「パンデミックの中で特許について争うのは適切ではないと判断した。当時はモデルナやファイザーを含め、さまざまな企業がワクチンを届けようと懸命に努力していた。共通の敵はウイルスだったからだ」と説明。「しかし今は状況が変わっている。知的財産はこの業界にとって基盤だ。10年以上かけてつくってきたものに対して知財が行使されないということであれば、モデルナの強さは生かされない。それはほかのバイオテックについてもしかりだし、ビオンテックも同じだと思う」と話しました。

バンセルCEOは、WTO(世界貿易機関)が6月の閣僚会合で合意した新型コロナワクチンに関する特許の放棄にも言及。「新しいテクノロジーに投資することはリスクが高い。イノベーションはしかるべき報酬を受けるべきだし、そうでないと社会に悪影響が及ぶ」と訴えました。

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