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Monday, January 30, 2023

社長に聞く「あなたの会社がないと世の中の人、困りますか?」 - 日経ビジネスオンライン

2100代表・国見昭仁さん(後編)

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澤本 嘉光

電通グループ エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター

(前回から読む

国見さんと澤本さんは、ともに広告を手がけるクリエーティブ・ディレクターである、という共通項があります。ただし、前編で伺ったように、その方法論はずいぶん違います。端的にいうと、澤本さんは宣伝部と仕事をする。国見さんは社長と仕事をする。その違いの意味をさらに聞いていきたいと思います。

国見昭仁さん(以下、国見):まず、澤本さんも僕も、課題解決業という基本は同じです。

国見昭仁(くにみ・あきひと)

国見昭仁(くにみ・あきひと)

1972年、高知県生まれ。クリエーティブ・ディレクター、経営戦略家。 96年、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)に入行。アサツーディ・ケイ(現・ADKホールディングス)を経て、2004年に電通に入社。10年、社内で経営/事業変革のクリエイティブユニット「未来創造グループ」を立ち上げる。同グループは17年に「電通ビジネスデザインスクエア」に拡張。18年、エグゼクティブ・プロフェッショナル(役員待遇)に就任。20年、電通を退社し、6人の仲間とともに「2100」を創業。主なクライアントにダイセル、パナソニックエナジー、スノーピークほか。(写真:大槻純一、以下同)

澤本嘉光さん(以下、澤本):クライアントに何か課題があったら、それに対して一番いいソリューションを提出する、という仕事ですね。僕は「広告表現をお願いします」と頼まれるので、その表現をつくっています。

 ただ「テレビCMをお願いします」と言われても、「この予算でこの時期で、この商品だったら、テレビはやらずに、全部デジタル媒体に回した方がいいですよ」って言うかもしれないですし、「むしろ日本中の駅にポスターを張りまくった方がいいですよ」って言うかもしれない。枠内で、そういった提案はいろいろしていきます。

国見:澤本さんは「超」が付くプロフェッショナルです。過去に業界初の広告方法論を山ほどやってこられていて、提案と表現には必ずストラテジーが入っています。究極のクリエーターは、究極のストラテジストでもあるというのを証明している存在だと僕は思っています。

ソフトバンクの「白戸家」シリーズの「犬のお父さん」は、澤本さんのひらめきというか、着想先行の方法論に見えますが、そこにもストラテジーがあったのでしょうか。

破綻していることが魅力につながる

澤本:これって、説明を間違えて誤解されてしまうことが怖いんですが、ストラテジーがあるというのは、ガチにストラテジーを立ててから考えている、ということじゃないんです。考えているうちに、こういうふうになればいいだろうな、というふうにやり方が見えてくる。CM制作は、予算とか、出演俳優へのお願いとか、いろいろな制約があって、その中から、最適のアウトプットを見つけていくわけです。

国見:そのやり方がロジカルなんです。見る人にストラテジーを感じさせないで、記憶に残るCMを作る、ということは、超絶に難しいことだと思っています。

澤本:別方向から付け加えると、ストラテジーに必要なロジックって、それが正しいだけじゃなくて、一部破綻している方が結果がいいんです――という経験則が僕にはあるんです。ロジック通りだと、結局、そこ止まりで終わっちゃって、商品は売れても、めちゃくちゃには売れない。

 それで、「どこかで論理が一部破綻している方が人に引っ掛かるから、破綻をつくりましょう」というようなプレゼンっぽいこともしています。

そういうことを言われたとき、クライアントって分かってくれるものでしょうか。

澤本:通常は絵コンテでアイデアを出します。絵コンテを出すときは、「これ、実は論理が破綻しています」って、いちいち言わないです(笑)。

 そもそも「犬の父」なんて発想は、どう考えてもおかしくて、論理なんかないわけです。それをムリして言語化すると「本来、人間である父が犬であることは、大変におかしい。おかしさは違和感として人の記憶に残る。ゆえに、違和感とともに商品が人の記憶に定着する」という言い方になりますが、それでは面白さと、その先にある費用対効果は伝わらないですよね。

澤本さんの方法論の正しさは、「白戸家」のCMが国民的な長寿シリーズになったことで証明されてはいます。

澤本:犬のお父さんは、セリフはすごく平易なんです。すべてが平易なんだけど、顔だけが犬なんです。そうなると、そこに引っ掛かって、記憶に残るんです。その引っ掛かる部分をあえて、一生懸命つくろうとしているところはあります。と、こういうふうに説明をしていると、後で記事になったときに、すごい昔のオジさんが、自分がやっていたものは正しいと力説しているふうな、そんなものとして読まれるかも……。

そんなことはないでしょう。

澤本:この場にいる同世代の人たちはそう言ってくださるでしょうけど、若い人が読むと、こいつ、何言っているんだ、って。

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