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Wednesday, January 11, 2023

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【解説】今こそ知りたい! 資産形成の強い味方「ドル・コスト平均法」の基本を解説のイメージ

2001年以降、政府は「貯蓄から投資へ」と資産形成を推奨するスローガンを掲げ、2022年5月には岸田首相がイギリスの金融街シティにおける講演で「資産所得倍増計画」を打ち出した。これまで以上に積極的に投資の考え方を浸透させる方針を明らかにした。政府はなぜ、ここまで資産形成を推し進めるのだろうか。その理由は、さまざまなライフステージに必要なお金が、給与などの収入や預貯金だけでまかなうことが現実的に難しくなってきたためと考えられる。

そうはいっても、「資産形成には興味はあるが、日々の仕事に追われているのに、リスクや動向について細かく考えるのは億劫(おっくう)だ」と思うことも多いだろう。そんなビジネスパーソンに適している投資手法が「ドル・コスト平均法」と呼ばれるものだ。

この「ドル・コスト平均法」は簡単な投資手法であり、しかもリスク低減効果も見込める。今回は資産形成の必要性とともに、投資が複雑になることを避けつつ、リスクの低減も目指す「ドル・コスト平均法」を紹介する。

資産形成はなぜ必要なのか

資産形成を図る上で、最初に思いつく金融機関といえば、やはり銀行だろう。預金には各行が定めた金利(利息)が付き、預けておけば自動的にお金が増えていく。預け入れ期間が決まっている定期預金や定額預金は、普通預金と比べ金利が高いとされている。しかし、今の日本は超低金利の時代と言われて久しい。では、金利はどれほど変動したのだろうか。今回は、30年以上前に遡って金利がどのように推移してきたのかをみるため、ゆうちょ銀行(と民営化前の日本郵政公社)の定額預金(3年以上)を例に挙げてみた。バブル景気(平成景気)の崩壊が始まったとされる1991年では6.33%、2022年は0.002%(2022年11月7日現在)と大きく低下している(図1)。

図1:郵便局(ゆうちょ銀行)3年以上のものの定額郵便貯金(定額貯金)の金利推移

図1:郵便局(ゆうちょ銀行)3年以上のものの定額郵便貯金(定額貯金)の金利推移

出典:日本銀行「郵便貯金金利(2003年3月まで)」、ゆうちょ銀行「民営化以降の貯金金利の沿革(平成19年10月1日~)」「民営化以前の貯金金利の沿革(平成8年4月22日~)」2021-2022年は「金利一覧定額貯金(2022年11月14日現在)」をもとに編集部作成

各年3月31日の定額郵便貯金(定額貯金)3年以上のものの利率を集計。

それぞれの利率で1,000万円を5年間預けた運用収益を見ると、1991年の利率で約350万円、2022年の利率では1,000円となる(図2)。単純に1991年の利率が続くとすると12年で元本が約2倍に増える計算だ。

図2:1991年と2022年の利率による運用収益
年(利率) 1991年(6.33%) 2022年(0.002%)
1年 633,000円 200円
2年 1,306,069円 400円
3年 2,021,743円 600円
4年 2,782,719円 800円
5年 3,591,866円 1,000円

野村證券「マネーシミュレーター みらい電卓 積立編」を使用して算出。このシミュレーションは、設定された条件を計算式にあてはめて計算したものであり、実際の投資結果とは異なります。複利計算をしています。手数料・税金などは考慮していません。計算結果は1円未満を四捨五入しています。

このように単純に金利だけで考えると、「預貯金しておけば、資産は自動的に増えていくので安心だ」といった考えは、もはや通用しなくなってきている。ライフステージごとに必要なお金や、ゆとりある老後を過ごすためのお金を金利をあてにして確保するのは難しいといえよう。

一方、野村総合研究所の調査(2021年12月)によれば、25~69歳の男女のうち、投資を行っている人は21.1%にとどまると推計される。つまり、残り約80%は投資を行っていないのだ。

なぜ日本人は投資をする人が少ないのか。日本証券業協会の調査によると、「損する可能性がある」、「価格の変動に神経を使うのが嫌」など、投資のリスクに対する不安感が大きな要因であることが分かった(図3)。

図3:証券投資が必要とは思わない理由(複数回答)

図3:証券投資が必要とは思わない理由(複数回答)

出典:日本証券業協会「証券投資に関する全国調査(調査結果概要)」をもとに編集部作成

日本全国の20歳以上の男女7000名を対象にした訪問留置法による調査。2021年6月11日~7月26日に実施。

リスクの軽減を図る投資手法:ドル・コスト平均法

投資に伴うリスクとは、「危険なこと」を指すのではなく、「リターンが不確実である(予測できない)こと」を意味する。これから投資を考えるなら、このようなリスクの軽減が期待できる手法を知ることで、投資に対する不安や戸惑いが和らぐだろう。

投資に伴うリスクを軽減する有効な方法として期待できるのが「分散投資」の考え方だ。分散投資は、「資産(銘柄)の分散」と「地域の分散」「時間(時期)の分散」という3つを組み合わせることだ(図4)。

図4:分散投資の例

図4:分散投資の例

出典:金融庁「投資の基本」をもとに編集部作成

図5:分散投資の方法
資産(銘柄)の分散 国内株式、外国株式、国内債券、外国債券、不動産など異なる値動きをする資産や銘柄を組み合わせて投資をする方法
地域の分散 国内と国外、先進国と新興国など、投資対象国の資産や銘柄、通貨を組み合わせて投資を行う方法
時間(時期)の分散 一時期にまとめて投資をするのではなく、時間をずらしながら投資を続けることによって購入価格を平均化し、価格変動リスクを避けるという方法

「時間分散」の代表的手法であり、一定金額ずつ定期的に購入し続ける投資手法を「ドル・コスト平均法」と言う。投資のタイミングを分散することで、1回あたりの購入単価を平準化する効果がある。売買のタイミングの見極めや、金融商品の短期的な価格変動に一喜一憂する必要もないことから、投資初心者におすすめといえるだろう。

「ドル・コスト平均法」を詳しく解説していこう。りんごの購入を例に、「毎月一定額」を購入する場合と、「毎月一定数」を購入する場合とで比較してみた(図6)。りんご1個の値動きは100円→150円→50円→100円となると仮定する。

「毎月一定額」1,000円ずつを購入する場合、全部で46.7個購入でき、平均購入単価は85.7円となる。一方、「毎月一定数」10個ずつを購入した場合、全部で40個購入でき、平均購入単価は100円のままとなるため、「毎月一定額」を購入するほうが、数で6.7個分の得をしたことになる。

つまり、「ドル・コスト平均法」は平均購入単価を下げる効果が期待でき、価格が下がったときに多くの口数(買えるりんごの個数)を購入できることがポイントだ。

図6:ドル・コスト平均法(定額購入法)と定量購入法のイメージ

図6:ドル・コスト平均法(定額購入法)と定量購入法のイメージ

出典:日本証券業協会「投資の時間 金融・証券用語集 定額購入法(ドル・コスト平均法)」をもとに編集部作成

積立投資なら非課税でお得な「つみたてNISA」と「iDeCo」

このように「ドル・コスト平均法」は、一定金額を中・長期間積み立てることでリスク軽減効果が望める。この仕組みを取り入れた制度が、金融庁が管轄する「つみたてNISA」と厚生労働省が管轄する「iDeCo(個人型確定拠出年金)」(図7)。国が用意した非課税で投資ができる制度だ。

「つみたてNISA」は、毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品から得られる運用益が非課税になる制度だ。投資初心者や、無理なく投資を続けたい人に合った少額投資非課税制度としてさまざまなメディアでも大きく取り上げられている。また、経済的な理由などにより、一定期間の停止や解約が自由にできるといった点もメリットとして挙げられるだろう。

「iDeCo(個人型確定拠出年金)」は、自分が拠出した掛金を自分で運用し、資産形成を図るもう1つの年金制度といった位置付けだ。毎月の掛金額は公的年金と同様に全額所得控除の対象となり、所得税・住民税が軽減される。積み立てるだけでお得という点が、他の制度とは異なる特徴だろう。

図7:つみたてNISAとiDeCoの違い

図7:つみたてNISAとiDeCoの違い

出典:金融庁「つみたてNISAの概要」および「教えて虫とり先生」、国民年金基金連合会「iDeCoってなに?」をもとに編集部作成

低金利が続くといわれる時代、資産形成を行うことが求められている。「長期・積立・分散投資」という方法は初心者でも試しやすいといえるだろう。「つみたてNISA」と「iDeCo(個人型確定拠出年金)」を活用して、ライフステージごとに必要な資金の確保に役立てたい。

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