Pages

Tuesday, March 14, 2023

誰一人取り残さないために 難民支援と社会貢献に広がりを 明大生が ... - 2030 SDGsで変える

2月16日、「SDGsミライテラス」の第11回目の生配信が行われました。持続可能な社会に向けて、ビジネスの中で展開されるSDGsについて話を聞くこの企画。今回は「国際社会と地域のために」をテーマに、社会貢献活動を行うつの企業や団体が取り組みを紹介しました。

(SDGsミライテラスのサイトはこちら

増える難民・国内避難民 世界で1億人超

イラク北部ドホーク郊外にある難民キャンプの子どもたち=2022年8月7日

現在、世界の難民と国内避難民の数は1億人を超えています。難民とは、人種、宗教、国籍などが理由で自国にいると迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れ、保護を必要とする人々のことを指します。難民の数は、国際情勢の影響を受けて年々増加。この現状は克服されるべきものであり、さまざまな利害関係者を持つ企業にとっては、ビジネスを行う上で世界の平和が必要とされます。その中で、本業を通じて社会に貢献している企業や団体があります。

服のチカラで難民支援 ファーストリテイリング

ユニクロやGUを展開するファーストリテイリングには、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」という企業理念があります。その理念に基づき社会貢献活動に取り組んでいます。とりわけ緊急支援、衣料支援、難民問題の啓発活動、難民雇用/自立支援の四つを柱に服を生かした難民支援に注力しています。2006年から2022年8月までに、80の国や地域に5050万点以上の衣料を届けました。ウクライナや近隣諸国、今年2月初旬に地震が発生したトルコやシリアにも、ヒートテック製品をはじめとする衣料を寄付しています。

ファーストリテイリングはUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)と、より恒久的な難民問題の解決をめざして2011年からグローバルパートナーシップを結んでいます。アジアの企業として初めてのことです。登壇したファーストリテイリング・サステナビリティ部の伊藤貴子さんが「このプロジェクトをしっかり推進していかなければならない」と力を込めて話したのは、コックスバザール難民キャンプにいる女性への自立支援についてです。

ファーストリテイリングの伊藤貴子さん(右)とMC根本美緒さん

隣国に身を寄せるロヒンギャ 難民の現実は? 

2022年の時点で、94万人の難民が過ごしているアジア最大の難民キャンプがバングラデシュのコックスバザール難民キャンプ。2017年、ミャンマー政府との対立を機に、ロヒンギャ難民が逃れてきた背景があります。そして、2017年から続く避難生活には多くの課題が。支援に必要な資金が不足していること、難民キャンプの中では働くことが許されていないこと、それゆえに生きるには配給物資に頼るしかないことなどが挙げられます。また、キャンプにいる難民の75%を女性と子どもが占め、そのうち30%がシングルマザーです。 

ロヒンギャ難民に縫製技術を教える様子 ©Fast Retailing /Saikat Mojumder

大切にしていることは「難民の方々が自立できるようにすることだ」と、伊藤さんは話しました。それは、ファーストリテイリングの 柳井正会長兼社長の「難民問題の最終的な解決はやはり自立しかない。本来、その人たちにはその人たちの活躍できる場があったはずだから難民問題は人的リソースの大損失でもある」という考えにも基づいています。難民がキャンプを出た後に継続的な収入を得て安定した暮らしを送るには、どのような支援ができるのかを考えたそうです。「何かのスキルがあると良いのではないか」「キャンプ内に必要なものを供給できるようにすれば良いのではないか」と思い、サニタリーナプキンとショーツの生産を通じて縫製スキルを身に付けてもらうプロジェクトを立ち上げました。2025年までに1000人の女性に縫製スキルを身に付けてもらい、キャンプ内でのサニタリーナプキンとショーツの供給率を100%にすることをめざしています。

伊藤さんが生産センターを訪問した際、ミシンを使って黙々と作業に取り組む女性たちの姿があったと言います。女性たちはボランティアワークで得た収入を子どもの教育や家計のために使用しています。「本当にこの仕事があって良かった」と、女性たちの胸中に触れた伊藤さんはこのプロジェクトの存在意義を身に染みて感じるとともに、このような女性たちの雇用拡大を図ることへの責任も感じたと語りました。

雇用も促進 自立支援の輪を広げよう

難民の方々が雇用や収入を手にできるような自立支援は店舗でも行われています。2022年4月時点で、8カ国124人がユニクロなどで働いています。ユニクロやGUの店舗には、衣料回収ボックスが設置されています。このボックスにはリユース、リサイクルしたい衣料を入れることができ、それらの服は支援を必要とする難民の元に渡ります。伊藤さんは「我々1社のみでは、できることが限られています。支援の輪を広げることにつながれば」と呼びかけました。

多様な人材 各地へ医療援助 国境なき医師団

次に登壇したのは、非営利団体「国境なき医師団」です。この団体は、緊急医療援助や人道援助を行っています。難民キャンプや紛争地、病院がない地域など、72の国と地域で活動しています。緊急事態が発生してから48時間以内に活動を始めることを指針としていますが、機動力の裏には、全スタッフの約半数を占める「非医療スタッフ」の存在もあります。登壇した森川光世さんもその一人です。

視聴者からの質問に答える森川光世さん

森川さんが国境なき医師団を志したきっかけは、中高一貫校で英語の教師をしていた頃にさかのぼります。社会問題を題材とした授業の準備を進めるうちにその世界に興味を持ち転職を決意。医師団での活動を見据え、フランスに語学留学した後、国境なき医師団の日本事務局に入りました。初めは寄付者の対応業務を行っていましたが、寄付者と接するうちに、「自分の目で見たことを伝えられるようになりたい」と思い現場に出ることを希望したそうです。

スーダン、ダルフール地方。国内避難民のための医療援助活動で©MSF

非医療スタッフの役職や業務内容は多岐にわたります。現地でのインフラの確保、スタッフの住まいの管理、それらに必要な会計処理など、あらゆる面で活動を支えています。診療を行うまでの過程に欠かせない存在であることが分かりました。「働く上で自身の過去の経験から何か生きたことはありますか?」と尋ねられた森川さん。「結局、何もなかったんですよ」とほほ笑みながら話しました。スキルや経験について「ないからダメというよりは、必要になったときにないのであれば身に付けようでいいかなと思います」。大人になっても自らの意思の赴くままにキャリアを切り開いていく森川さんなりの考え方がありました。

日本に住む外国人に母国語の絵本を 伊藤忠商事

伊藤忠商事の中村賢司さん

最後に登壇したのは伊藤忠商事サステナビリティ推進部部の中村賢司さんです。伊藤忠商事は、持続可能な社会のために取り組んでいることの情報を開示し、グローバルネットワークを生かして社会に貢献しています。中村さんは、その一つとして2021年度から始まった外国絵本寄贈プロジェクトを紹介しました。創業地である滋賀県には、外国籍労働者が多いものの外国語の絵本の入手が難しい現状があることを知り、会社が持つネットワークを生かして絵本を集めることに。2021年度は22カ国から18言語、合計326冊を滋賀県の図書館に寄贈しました。この活動を通じ、子どもに外国語の絵本を読ませたい親のニーズに応えることがかないました。

視聴者から質問 費用対効果は?との問いも

登壇者は発表後、それぞれの取り組みに関心を持った視聴者からの質問に応じました。「直接的な利益を生まない活動だと思うが、コストや人材確保は負担ではないのか」という質問が寄せられました。ファーストリテイリングの伊藤さんは、衣料の運送にかかる費用は自社で負担しているとした上で、「こういった取り組みというのは費用対効果(の問題)ではないかな、と思っています。効果という意味では民間企業としての効果はたくさんあると思っていて、新入社員の中には『ユニクロが難民支援をしているからこの会社に入りたいと思いました』と言ってくださる方もいます」と、難民支援に意義を見いだしている様子や企業が得る効果がうかがえました。

また、「難民問題をなぜやっているのか」という問いには、「服のチカラ」を考えるきっかけにもなりますし、グローバルでビジネスをしているところに目を向ける機会にもなると思っています」と答えました。取り組みを経て社員に新たな気付きがもたらされることもある、ということが分かりました。

紹介された取り組みの規模を踏まえると、大きな企業や団体だからこそ実現できるものだと感じるかもしれません。しかし、お話を伺う中で森川さんからは「一人一人が小さくても初めの一歩を。少しずつ力を合わせて世界を良くしていけたらいいなと思います」と、人々の協力を望む声が聞かれました。終盤には、今回の視聴者の多くが10~20代であることを受け、「若いうちにできることは何か」を司会者から尋ねられる場面も。中村さんは「歴史、特に近現代史の勉強を一生懸命すること」、伊藤さんは「まずは知ること。ワードを検索することから」と、将来に役立つこととして知識や情報を蓄えることの大切さをメッセージとして残しました。

1時間ほどのイベントを通じて、企業の取り組み、自分たちにできること、大人の方々の思いなどを知ることができました。衣料回収ボックスに服を持って行くなどの実践が望まれますが、このイベントを通じて知ったことを家族や友人などに広めることも自分にできることだと考えます。口伝えもできるほか、SNSをはじめとして、大人数に言葉を伝えるツールはそろっています。それらを用いて自ら発信することで、別の角度から貢献することもできるのではないでしょうか。社会貢献に関する情報を受け取るだけではなく、自ら発信することも社会を良くすることにつながるかもしれません。

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 誰一人取り残さないために 難民支援と社会貢献に広がりを 明大生が ... - 2030 SDGsで変える )
https://ift.tt/sG9MbSF

No comments:

Post a Comment