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Sunday, March 26, 2023

データセンターとは:強固な建物と設備でBCPを後押し、用途や ... - 日経 xTECH Active

(出所:123RF)

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 ビッグデータ分析やIoT(Internet of Things)、AI(人工知能)の普及、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進などに伴って増加しているデータを処理するサーバーやストレージを格納する「データセンター」に注目が集まっている。

 本記事ではデータセンターとは何かを説明した後、利用するメリットとデメリット、データセンターの基本的な機能、料金相場、選択のポイントなどを日本データセンター協会(JDCC)の増永 直大氏と今村 圭氏が分かりやすく解説する。併せて、日経クロステック Activeの記事から、注目のデータセンターや代表的な事例などをまとめて紹介する。

初回公開:2022/3/27

*「1. データセンターとは」「2. データセンターのメリットとデメリット」「3. データセンターの基本的な機能」「5. データセンターの料金相場」「6. データセンターを選択する上でのポイント」は増永 直大氏と今村 圭氏が執筆

1. データセンターとは

 データセンターとは、「コンピューターシステムを格納し、停電や災害時などの不測の事態においても、継続してシステムの運用サービスなどを提供するための施設」である。

 企業のサーバーなどが24時間365日、安全かつ安定的に稼働できるようにするため、自家発電設備や無停電電源装置(UPS)、高度な空調設備、監視カメラやセキュリティゲートなどを備えている。またデータセンターの建物は、免震・耐震装置や消火設備などを備えた、耐災害性に優れた専用のビルが多い。

 データセンターには、具備すべき設備や規模に関して定めた基準はない。オフィスビルの1室にある数平方メートル程度のいわゆる「サーバー室」から、数十万台のサーバーを管理する建物まで多様である。

(出所:123RF)

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 企業へ各種サービスとして提供する事業者が構築したデータセンターは、全国に500~600カ所あると推測されている。ユーザー企業が独自に構築したデータセンター(いわゆる「サーバー室」も含む)は全国に数万カ所あると言われている。なお本稿では以降、各種サービスを提供する事業者のデータセンタ-を対象とする。

 表1に、データセンターの主要な設備をまとめた。建物は、サーバーやストレージなど多数のIT機器を配置しても稼働可能な強固な構造になっており、空調設備がある。耐震・免震・煙感知設備などの災害対策や停電対策を採り入れており、個人認証装置やセキュリティゲート、監視カメラといったセキュリティに関するシステムを備えている。データセンターは外部との通信が必須であるため、通信回線を引き込んでおり、ルーターやスイッチを中心とした通信機器が稼働している。

表1 データセンターの主要な設備

設備 要求機能 具体例
建物 振動、床荷重に耐えること 床免震装置、ビル型データセンター、コンテナ型データセンター
必要設備 電源設備 受電設備、非常用発電機、UPS(無停電電源装置)
空調設備 空冷、水冷などの空調設備(エアコン、チラー)
入退室管理設備 ID(個人認証装置)、セキュリティゲート、顔認証システム
監視設備 監視カメラ
消火設備 煙感知設備、消火システム(ガス)
通信設備 情報授受を実行する機器 サーバー、ストレージ、ルーター、通信回線など

(作成:日本データセンター協会)

2. データセンターのメリットとデメリット

 データセンターを利用する大きなメリットの1つは、耐災害性であろう。地震や台風、集中豪雨といった自然災害の多い日本で、企業にとってBCP(事業継続計画)対策は重要な経営課題であり、データセンターは強固な建物と設備でこの課題の解決を後押しする。

 前述の通り、データセンターの建物の多くは耐震または免震構造になっており、地震による被害を最小限にとどめられる。UPS(無停電電源装置)や非常用発電機を備えており、停電時にも自家発電によりシステムを継続して運用できる。

 平常時においても、サーバーの運用監視やサーバー室の適切な温湿度管理などをそれぞれの専門家が24時間365日で実施しており、安定したシステム運用を実現可能である。

 そのほか、例えばホスティングサービス(後述)の場合は、ユーザーがサーバーなどを準備する必要がないため、機器の調達・保守・運用といった手間やノウハウが不要であることも、データセンターを利用するメリットである。

 最近は、再生可能エネルギー(再エネ)を活用したデータセンターもある。こうしたデータセンターを採用する企業には、再エネ利用率の向上を図れるというメリットがある。

 マクロな視点からは、データセンターは多数のIT機器を集中的に運用管理することにより、消費電力や運用にかかる人員などを最適化している。そのため省エネルギーにも貢献している施設といえる。

 ただし、上記のメリットを享受するには、利用料を支払ってデータセンターを利用することになる。データセンターを利用するメリットの一つは災害などの時の保険のようなものであるため、通常運用の範囲だけで考えると、専属の運用人員を必要としないような小規模なシステムや重要性の低いシステム(必ずしも高可用性を求められないシステムなど)の場合はメリットを感じにくく、割高に感じるかもしれない。

 自社でデータセンターを保有・運用しようとすると、設備面や運用管理人員において、かなり大規模なシステムではない限りは、コストや効率面で大きな負担となる場合が多い。またIT機器は非常に早いサイクルで性能向上が進むため、10年後のシステムがどうなっているか、そのためのデータセンターはどうあるべきかを想定することが非常に難しい。従って、災害対策だけでなく、システムを含めた全体の設備や運用管理の長期的なコスト効率(ライフサイクルコスト)を分析し、データセンターを利用するかどうか検討することを勧めたい。

(出所:123RF)

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3. データセンターの基本的な機能

 データセンターが提供するサービスは、主に「コロケーション(ハウジング)」「ホスティング」「クラウド」の3種類である(表2)。

表2 データセンターで提供されている主なサービス

サービスの種類 サービス概要 メリット デメリット
コロケーション(ハウジング) ユーザー企業が所有するサーバー機器を持ち込み、データセンター事業者はサーバー機器を設置する場所、ネットワーク回線、その他付随するサービス(機器LEDの目視監視など)を提供する ・使用したいハードウエアやOSを自由に選択し利用可能
・ハードウエアなどは自分専用であるため、安心感がある
・自社でハードウエアなどを管理しなければならない
・処理能力が自社のハードウエアの範囲内に制限される
ホスティング データセンター事業者がデータセンター内に設置したサーバー機器をユーザー企業が借りる。データセンター事業者は、コロケーションに加え、サーバー環境そのものも管理する ・ハードウエアなどを管理する必要がない ・選択可能なハードウエアやOSが制限される
・処理能力が契約したハードウエアの範囲内に制限される
クラウド(IaaS、PaaS、SaaS) システムを構築する環境、またはデータを処理するサービスを提供する。ユーザーは、用意された環境またはサービスの中から、利用したいものを選択して利用する ・ハードウエアなどを管理する必要がない
・使用するリソース(メモリー、CPU)をある程度自由に拡張・縮小できる
・選択可能なハードウエアやOSが制限される
・ユーザーは、システムが稼働するリージョンについて意識する必要がある

(作成:日本データセンター協会)

 コロケーションは、データセンターの場所(床)を貸すサービスであり、顧客企業がサーバーやラックなどをデータセンターに持ち込んで利用する。

 ホスティングは、データセンター事業者が用意したサーバーを貸すサービスである。例えばWebサイトの公開・運用などをするための環境を提供している。最近は、同様のクラウドサービスもある。

 クラウドは、システム構築環境や、情報サービスそのものを提供するサービスである。その提供内容により、さらにIaaS(インフラ)、PaaS(プラットフォーム)、SaaS(情報サービス)に分類される。AWS(米Amazon Web Services)やAzure(米Microsoft)などの外資系クラウド事業者が提供するサービスが多い。外資系クラウド事業者の台頭が目覚ましく、データセンター市場の過半をこれらの事業者が占めている。

(出所:123RF)

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4. 代表的なデータセンター

 国内では、多数の事業者がデータセンターでサービスを提供している。ここでは、JDCCのWebサイトの「データセンター一覧」(https://www.jdcc.or.jp/dclist/)に掲載されている、提供施設数が多い事業者(4施設以上)をピックアップした(日経クロステック Active調べ)。なお、JDCCのアンケート調査に回答していない事業者のデータセンターは載っていない。

(1)IDCフロンティア IDCフロンティアのデータセンター紹介ページ
(2)アット東京 アット東京のWebサイト
(3)伊藤忠テクノソリューションズ
   伊藤忠テクノソリューションズのデータセンター紹介ページ
(4)インテック インテックのデータセンター紹介ページ
(5)エクイニクス・ジャパン エクイニクス・ジャパンのWebサイト
(6)SCSK SCSKのデータセンター紹介ページ
(7)NTTコミュニケーションズ
   NTTコミュニケーションズのデータセンター紹介ページ
(8)NTTコムウェア NTTコムウェアのデータセンター紹介ページ
(9)NTTデータ NTTデータのデータセンター紹介ページ
(10)MCデジタル・リアルティ MCデジタル・リアルティのWebサイト
(11)KDDI KDDIのデータセンター紹介ページ
(12)さくらインターネット さくらインターネットのWebサイト
(13)シーイーシー シーイーシーのデータセンター紹介サイト
(14)TIS TISのデータセンター紹介ページ
(15)NEC NECのデータセンター紹介ページ
(16)野村総合研究所 野村総合研究所のデータセンター紹介ページ
(17)NTT東日本 NTT東日本のデータセンター紹介ページ
(18)日立製作所 日立製作所のデータセンター紹介ページ
(19)富士ソフト 富士ソフトのデータセンター紹介ページ
(20)富士通 富士通のデータセンター紹介ページ
(21)ブロードバンドタワー ブロードバンドタワーのWebサイト
(22)三菱電機インフォメーションネットワーク
   三菱電機インフォメーションネットワークのデータセンター紹介ページ
(23)両備システムズ 両備システムズのデータセンター紹介ページ

5. データセンターの料金相場

 富士キメラ総研の調査によると、コロケーション(ハウジング)の料金相場は、最も高額な東京都心部でおよそ20万~21万円/月・ラック(契約電力4kVAの場合)程度である(表3)。契約ラック数が多いほど、また都心部から遠くなるほど安価になる傾向がある。

 最近の電力料金高騰の影響により、現在は上記の料金よりも高額になっているケースもある。下記は電気代を含む契約の相場だが、電気代が別料金となっている場合もあるため注意が必要だ。

表3 データセンターの料金相場(2023年予測。単位は万円/月・ラック)

4kVA 6kVA 8kVA
東京都心 21.2 27.4 30.5
首都圏(都心以外) 20.0 25.1 29.4
大阪都市内 19.1 24.4 28.7

(富士キメラ総研「データセンタービジネス市場調査総覧2023年版」をもとに日本データセンター協会が作成)

(出所:123RF)

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6. データセンターを選択する上でのポイント

 システムを預ける目的や要件によって、適したデータセンターは変わってくる。以下にポイントをまとめた。

(1)利用サービス

 構築するシステムの規模や要件によって、適したサービスが異なる。データセンター事業者がシステムの稼働環境を提供するホスティングを利用するのか、自らのサーバー機器などを持ち込んで利用するコロケーション(ハウジング)を利用するのかを決める必要がある。

 システムの運用や稼働監視、バックアップあるいはプリント(ログなどを印刷するためのもの)、システム障害発生時の対応を、サービスとして提供している事業者がある。これらが自社の選定要件ならば、サービスとして提供しているデータセンターを検討すべきだろう。

(2)データセンターの場所

 通常運用のシステムであれば、システムのメンテナンスやトラブル時の対応を考慮して、オフィスの近くのデータセンターが良いと考えられる。その一方で近年は、災害対策を中心として、遠隔地のデータセンターを選ぶケースも見られる。

 クラウドサービスを利用する場合は、データセンターの場所を意識することなく、クラウド事業者が提供する「リージョン」(サービス提供拠点となる地域であり、国内では東京または大阪リージョンが多い)から選択することになる。DRを意識して、複数リージョンにシステムを分散させるケースもある。

(3)ネットワーク接続

 データセンターによって、IX(インターネットエクスチェンジ)への接続性、クラウドサービスへの接続性といったネットワークサービスの特徴が異なる。

 例えばIXへの接続性が高いデータセンターには、そのIXにつながったプロバイダーなどのユーザーがデータセンターで稼働するシステムへストレスなくアクセスできるというメリットがある。よってインターネットを活用したWeb系のサービスを提供しようとする場合は、IXへの接続性が良いデータセンターを選択することが選択肢の1つになる。

 クラウドサービスへの接続性が高いデータセンターの場合は、データセンターで稼働するシステムとクラウドサービスが連携しやすいというメリットがある。

(出所:123RF)

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7. データセンターの代表的な事例

8. 注目のデータセンター

 データセンターを活用するには、様々な手助けをしてくれる製品やサービスを利用するとよりスムーズに進む。以下では、注目の8. 注目のデータセンターとそのサービスを紹介する。

シュナイダーエレクトリック

NTTPCコミュニケーションズ

9. データセンターの新着プレスリリース

増永 直大(ますなが なおひろ)

増永 直大(ますなが なおひろ) 日本データセンター協会(JDCC)事務局長を10年以上務める。増永コンサルティング代表取締役社長。JEITAデータセンター省エネ専門委員会委員およびJTC1/SC39 国内委員会委員、JISA環境タスクフォース委員。富士通でネットワーク関連の開発に従事した後、野村総合研究所にてネットワーク事業部長、基板サービス事業部長などの立場で、国内初の大規模ビルLANシステムの導入や運用自動化システムの開発などを手がけた。最近はシステムアーキテクチャーの変遷に興味があり、データセンターを含めた社会に与えるインパクトを分析。自称「日本でデータセンターを一番多く見た男」。

今村 圭(いまむら けい)

今村 圭(いまむら けい) 日本データセンター協会(JDCC)事務局、運営委員。JDCCの運営に携わるとともに、三菱総合研究所の主任研究員として、データセンターや無線通信等の社会インフラ、インターネット技術、サイバーセキュリティ、オープンデータ・データ活用などに係る技術動向・市場動向等の調査研究業務に従事。

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