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Monday, June 26, 2023

Pixel Foldは二つ折りという名のミニタブレットである ... - AV Watch

Pixel Fold。色はObsidian

Googleの二つ折りスマートフォン「Google Pixel Fold」のレビューをお届けする。

二つ折りスマホの登場から数年が経過した。高価であるため誰もが使っている……とは言えないが、珍しい存在というわけでもない。

中国メーカーは積極的に作っているのだが、日本市場で購入できる、となると、やはり業界最大手であるサムスンの「Galaxy Fold」シリーズが中心となるだろうか。

筆者も「Galaxy Z Fold4」を持っており、日常的に使っている。

比較用に用意した「Galaxy Z Fold4」

また、二つ折りではないが「2画面スマホ」として、マイクロソフトの「Surface Duo 2」も持っている。

「2画面スマホ」の「Surface Duo 2」も用意

これらの製品は、どれもスマホの画面が狭いことをカバーするために「開く」機能を持ったものだ。一方で、画面の縦横比やソフトウエア的な実装などに違いも多く、そこが好みや使い勝手に影響している。

では、Pixel Foldはどのような存在なのか?

手元にある「Galaxy Z Fold4」「Surface Duo 2」、そして小型タブレットの代表格である「iPad mini(第6世代)」と比較しつつ解説してみよう。

小型タブレットの代表として「iPad mini(第6世代)」とも比較

コミックに最適な縦横比

同じことを電子書籍で比較してみよう。アプリとしてはKindleを使っている。

文字ものを表示する場合、そこまで大きな差はない。ページが分かれてしまうSurface Duo 2は不利だが、それ以外は「どれも読みやすい」と思う。片手での持ちやすさで言えば、幅が狭い分、Galaxy Z Fold4が最も有利、と感じるくらいだ。

Kindleアプリで拙著「ネットフリックスの時代」を表示。どれもみやすいのだが、Surface Duo 2は中央の「切れ目」が気になる。Galaxy Z Fold4は横幅が狭くなるので持ちやすい

だが、コミックになると話が変わってくる。コミックの縦横比を考えると、2つの大きな問題が出てくる。

まず「見開き表示」の問題。大きな画面を使うメリットは、コミックを1P単位でなく見開きで楽しめる、ということだ。もちろん、細かな字を読むには少しつらいサイズではあるのだが、それでも、見開きの方が読みやすいことに違いはない。

Kindleで鈴木みそ氏のコミック「銭」を、著者から許諾を得てテストに使用。Galaxy Z Fold4のみ、単に開いただけでは「1P表示」になってしまう

しかし、Galaxy Z Fold4の場合、普通に開いた状態では「縦長の画面」と判断され、1P表示になってしまう。横に倒せば見開き表示も可能だが、それにはやっぱりひと手間かかる。

同じものを、Galaxy Z Fold4のみ横にして「見開き」に。表示サイズ的にはかなり近い

実のところ、iPad miniも「見開きでコミックを表示する」と左右の余白は意外と大きく、Pixel Foldとの表示サイズ差が縮まって行くのも興味深い。

iPad miniとPixel Foldで見開き表示。iPad miniは横の余白が大きく、表示サイズ差がかなり小さいものになった

このように、表示バランスをどう設計するかによって、コンテンツ視聴の快適さは大きく変わってくる。動画とコミックのニーズが高い日本において、Pixel Foldはかなり絶妙なバランスであることがよくわかる。

スマホ専用アプリの表示に難あり

このようなサイズバランスになったのは、前述のように、Pixel Foldが「折りたためるミニタブレット」として設計されているためだ。

この点は、Galaxy Z Foldが「基本はスマートフォンだが、広げた時にはタブレットとしても使える」という設計思想に近いこととは対照的だ。

そしてこの設計思想の違いは、「どんなシーンでもPixel Foldのやり方が正しい」ことを示すものではない。

最もわかりやすい違いは「スマホ専用アプリ」の扱いだろう。

Pixel Foldもスマホなのに何を言っているのか……? と思われそうだが、前出のように、Pixel Foldは実質的に「開いて使う時にはミニタブレットである」と割り切った設計がなされている。そのため、ちょっと変わった現象が起きる。

Androidアプリの中には、画面サイズに合わせてデザインが変化するものもあれば、使うデバイスを「スマホ」と規定しており、縦長の画面レイアウトのみを想定しているものもある。この種のアプリにはSNSやメッセンジャー系が多く、TwitterやFacebook、LINEなどが該当する。

これをPixel Foldで起動するとどうなるのか?

以下の写真の通りだ。アプリが全画面に広がらず、偏って表示されてしまう。本体を90度傾ければ、フル画面表示になる。

スマホに特化したTwitterアプリなどは、画面が全体に広がらず、偏って表示される

一方でGalaxy Z Fold4では、同じような問題は起きない。コミックを読む時、Galaxy Z Fold4では「画面を横にしないと見開き表示にならない」という話をしたが、Pixel Foldの場合には、逆にメッセージ系アプリなどでPixel Foldの方が不利になるのだ。

アプリ側がタブレットを想定して作られていれば、こうした問題は起きにくい。だがPixel Foldはスマホでもあり、メッセージング系アプリはスマホでこそ使いたいものだ。

解決方法はないわけではない。

もしWeb版が使えるなら、それを「Webアプリ化」して使ってしまえばいいのだ。Pixel Foldは画面も広いので、「Webをそのまま使う」ことが相応に現実的ではある。

Webアプリを使うという解決策もある。画面はTwitterの場合。こちらなら使い勝手などにも問題はない

ただ、「スマホとして使うときに、Pixel Foldには制約もある」ことは頭に入れておきたい。

「小さなタブレット」そのものであることが利点であり欠点

UI的にも、Pixel Foldはほぼ「タブレット」だ。アプリを画面分割して使う際のUIは、Pixel Tabletのものにそっくりだ。

またWeb表示も、デフォルトではスマホ表示になっているが、PC版のWebを表示した方が読みやすくなっている。

Webをスマホ設定(標準設定)で表示
WebをPC設定で表示。画面が広いのでPC表示の方が見やすくなるのは、他のタブレットと同様だ

Galaxy Z Fold4などでは「スマホとして使うために、広い画面でどうアプリを表示するか」などの設定が用意されているが、Pixel Foldは非常にシンプルな構成だ。「これはタブレットである」とGoogleが割り切っているのが透けて見えてくる。

アプリを「分割表示」する操作などは、Pixel Tabletとほぼ同じ。Googleがこの製品を「タブレットである」と考えているのがわかる
画面を2つのアプリで分割し、見比べながら作業できるのは快適

この点は、シンプルに使える良さがある一方で、前述のような「スマホとしての使い勝手」の面ではマイナスだ。Surface Duo 2に存在する「アプリを必ず二つ並べて開く」設定もないので、アプリを並べて操作性を上げるには、毎回自分で「並べる操作」をしなくてはならない。

コンテンツを見たり、アプリを複数立ち上げて作業するには、Pixel Foldはとても良い製品だ。その上で「スマホ専用のアプリ」の表示で割り切るか、Webアプリなどの併用を考えるか、という工夫が必要になる。

その工夫が気に入らないなら、Galaxy Z Foldの方がいいだろう。ただ筆者は、画面の広さを活かすならPixel Foldの方が良い、と感じる。

どちらを優先にするのか、そこが分かれ目だ。

まあ、GoogleもAndroidの開発元なのだから、「スマホ専用アプリをどう見せるか」には何か工夫をすべきだと思う。彼らとしては、タブレットに対応したバージョンのアプリが増えてくれた方が嬉しいのだろう、とも邪推はしてしまう。

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