Googleの二つ折りスマートフォン「Google Pixel Fold」のレビューをお届けする。
二つ折りスマホの登場から数年が経過した。高価であるため誰もが使っている……とは言えないが、珍しい存在というわけでもない。
中国メーカーは積極的に作っているのだが、日本市場で購入できる、となると、やはり業界最大手であるサムスンの「Galaxy Fold」シリーズが中心となるだろうか。
筆者も「Galaxy Z Fold4」を持っており、日常的に使っている。
また、二つ折りではないが「2画面スマホ」として、マイクロソフトの「Surface Duo 2」も持っている。
これらの製品は、どれもスマホの画面が狭いことをカバーするために「開く」機能を持ったものだ。一方で、画面の縦横比やソフトウエア的な実装などに違いも多く、そこが好みや使い勝手に影響している。
では、Pixel Foldはどのような存在なのか?
手元にある「Galaxy Z Fold4」「Surface Duo 2」、そして小型タブレットの代表格である「iPad mini(第6世代)」と比較しつつ解説してみよう。
コミックに最適な縦横比
同じことを電子書籍で比較してみよう。アプリとしてはKindleを使っている。
文字ものを表示する場合、そこまで大きな差はない。ページが分かれてしまうSurface Duo 2は不利だが、それ以外は「どれも読みやすい」と思う。片手での持ちやすさで言えば、幅が狭い分、Galaxy Z Fold4が最も有利、と感じるくらいだ。
だが、コミックになると話が変わってくる。コミックの縦横比を考えると、2つの大きな問題が出てくる。
まず「見開き表示」の問題。大きな画面を使うメリットは、コミックを1P単位でなく見開きで楽しめる、ということだ。もちろん、細かな字を読むには少しつらいサイズではあるのだが、それでも、見開きの方が読みやすいことに違いはない。
しかし、Galaxy Z Fold4の場合、普通に開いた状態では「縦長の画面」と判断され、1P表示になってしまう。横に倒せば見開き表示も可能だが、それにはやっぱりひと手間かかる。
実のところ、iPad miniも「見開きでコミックを表示する」と左右の余白は意外と大きく、Pixel Foldとの表示サイズ差が縮まって行くのも興味深い。
このように、表示バランスをどう設計するかによって、コンテンツ視聴の快適さは大きく変わってくる。動画とコミックのニーズが高い日本において、Pixel Foldはかなり絶妙なバランスであることがよくわかる。
スマホ専用アプリの表示に難あり
このようなサイズバランスになったのは、前述のように、Pixel Foldが「折りたためるミニタブレット」として設計されているためだ。
この点は、Galaxy Z Foldが「基本はスマートフォンだが、広げた時にはタブレットとしても使える」という設計思想に近いこととは対照的だ。
そしてこの設計思想の違いは、「どんなシーンでもPixel Foldのやり方が正しい」ことを示すものではない。
最もわかりやすい違いは「スマホ専用アプリ」の扱いだろう。
Pixel Foldもスマホなのに何を言っているのか……? と思われそうだが、前出のように、Pixel Foldは実質的に「開いて使う時にはミニタブレットである」と割り切った設計がなされている。そのため、ちょっと変わった現象が起きる。
Androidアプリの中には、画面サイズに合わせてデザインが変化するものもあれば、使うデバイスを「スマホ」と規定しており、縦長の画面レイアウトのみを想定しているものもある。この種のアプリにはSNSやメッセンジャー系が多く、TwitterやFacebook、LINEなどが該当する。
これをPixel Foldで起動するとどうなるのか?
以下の写真の通りだ。アプリが全画面に広がらず、偏って表示されてしまう。本体を90度傾ければ、フル画面表示になる。
一方でGalaxy Z Fold4では、同じような問題は起きない。コミックを読む時、Galaxy Z Fold4では「画面を横にしないと見開き表示にならない」という話をしたが、Pixel Foldの場合には、逆にメッセージ系アプリなどでPixel Foldの方が不利になるのだ。
アプリ側がタブレットを想定して作られていれば、こうした問題は起きにくい。だがPixel Foldはスマホでもあり、メッセージング系アプリはスマホでこそ使いたいものだ。
解決方法はないわけではない。
もしWeb版が使えるなら、それを「Webアプリ化」して使ってしまえばいいのだ。Pixel Foldは画面も広いので、「Webをそのまま使う」ことが相応に現実的ではある。
ただ、「スマホとして使うときに、Pixel Foldには制約もある」ことは頭に入れておきたい。
「小さなタブレット」そのものであることが利点であり欠点
UI的にも、Pixel Foldはほぼ「タブレット」だ。アプリを画面分割して使う際のUIは、Pixel Tabletのものにそっくりだ。
またWeb表示も、デフォルトではスマホ表示になっているが、PC版のWebを表示した方が読みやすくなっている。
Galaxy Z Fold4などでは「スマホとして使うために、広い画面でどうアプリを表示するか」などの設定が用意されているが、Pixel Foldは非常にシンプルな構成だ。「これはタブレットである」とGoogleが割り切っているのが透けて見えてくる。
この点は、シンプルに使える良さがある一方で、前述のような「スマホとしての使い勝手」の面ではマイナスだ。Surface Duo 2に存在する「アプリを必ず二つ並べて開く」設定もないので、アプリを並べて操作性を上げるには、毎回自分で「並べる操作」をしなくてはならない。
コンテンツを見たり、アプリを複数立ち上げて作業するには、Pixel Foldはとても良い製品だ。その上で「スマホ専用のアプリ」の表示で割り切るか、Webアプリなどの併用を考えるか、という工夫が必要になる。
その工夫が気に入らないなら、Galaxy Z Foldの方がいいだろう。ただ筆者は、画面の広さを活かすならPixel Foldの方が良い、と感じる。
どちらを優先にするのか、そこが分かれ目だ。
まあ、GoogleもAndroidの開発元なのだから、「スマホ専用アプリをどう見せるか」には何か工夫をすべきだと思う。彼らとしては、タブレットに対応したバージョンのアプリが増えてくれた方が嬉しいのだろう、とも邪推はしてしまう。
からの記事と詳細 ( 「Pixel Fold」は二つ折りという名の「ミニタブレット」である ... - AV Watch )
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