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Monday, August 21, 2023

鉄道会社・車両メーカーのつながり深い日本 ヨーロッパも同様? 10年が読めない「鉄道メーカー市場」を考える - au Webポータル

鉄道会社と車両メーカーの強固なつながり

総合車両製作所製の東急電鉄2020系。かつては東急グループの東急車輛製造だったがJR東日本へ事業譲渡した(画像:橋爪智之)

総合車両製作所製の東急電鉄2020系。かつては東急グループの東急車輛製造だったがJR東日本へ事業譲渡した(画像:橋爪智之)

 日本の鉄道車両メーカーは、基本的に特定の鉄道会社とのつながりが深い会社が多い。よほど、契約上の大きなトラブルでも起こしたり、メーカーそのものが消滅したりしない限り、各鉄道会社は継続的に同じメーカーへ車両を発注する傾向が強い。

 鉄道会社側にとっては同じメーカーから新車を導入することによって規格や構造が同じ車両に統一することができ、保守管理がしやすいというメリットがあるため、当然の結果といえるだろう。

 また、なかにはメーカーそのものが鉄道会社系列の場合もある。例えば愛知県名古屋市に本拠地を構える日本車輌製造は、現在はJR東海の連結子会社となっており、一部を除いたJR東海向けの大半の車両を製造しているほか、民営、公営を問わず多くの鉄道会社の車両を製造している。

 総合車両製作所(神奈川県横浜市)は、もともと東京急行電鉄の子会社であった東急車輛製造をJR東日本へ事業譲渡し、現在はJR東日本の完全子会社となって、同社のみならず、かつての親会社だった東急電鉄を筆頭に、多くの鉄道会社へ車両を納入している。近畿車輌も近鉄グループのメーカーだ。

 川崎車両(東京都港区)や日立製作所(千代田区)は、鉄道会社との関係がない、完全独立系のメーカーであるが、同様に多くの鉄道会社から注文を受けている。この2社製の車両を好む鉄道会社も多い。

 日本市場は、基本的にごく限られた小規模な市場で、規格も類似こそしていても各鉄道で仕様が細かく異なるため、鉄道会社とメーカーの結びつきは今も昔も非常に強い。見方を変えれば、日本以外の外国メーカーが今から参入するのは困難な、非常に特殊な市場でもある。

欧州市場の現況

ボンバルディア買収により業界2位となったアルストム。最新のTGV-Mは同社を支える屋台骨となれるか注目される(画像:橋爪智之)

ボンバルディア買収により業界2位となったアルストム。最新のTGV-Mは同社を支える屋台骨となれるか注目される(画像:橋爪智之)

 一方で外国を見てみると、例えば欧州市場は、一部の工業水準が低い国を除き、過去には日本と同じように、それぞれ地場の鉄道メーカーが存在して、自国向けの車両を製造していた。

 ところが20世紀後半頃からメーカー同士の統合が進み、大きなメーカーへと集約されていった。2010年代に入ると、いわゆる「鉄道メーカーのビッグスリー」と呼ばれた、

・アルストム
・シーメンス
・ボンバルディア

が業界を席巻し、一時はこの3社だけで世界市場の過半数を占めることもあった。

 しかし、この3社の天下も長くは続かなかった。中国の国策で、国内メーカーを全て集約し、世界シェアトップとなる巨大企業、中国中車(CRRC)が誕生したからだ。売り上げの9割が国内市場向けで、今も急成長を遂げている中国国内の高速列車需要があるとはいえ、世界シェアトップという事実に変わりはない。

 その後、アメリカやアジアでも徐々に受注を獲得するようになっていくなか、ビッグスリーは1位の座を完全にCRRCへ明け渡し、他のメーカーにも後れを取るようになっていった。

 2021年1月には、ビッグスリーの一角であったボンバルディアがアルストムへ買収され、その名が業界から姿を消すことになった。ただし、かつての業界トップ3だった2社が一緒になったことで、CRRCに次ぐ業界シェア2位に返り咲いたことは朗報だったといえる。

 日本という特殊な市場から飛び出し、あえて群雄割拠する困難な欧州市場へと足を踏み入れた日立製作所は、安定と信頼を武器に、現在は世界シェア10位以内に入るなど、着実に存在感を示しつつある。

 英国での成功を足掛かりに、現在は欧州大陸側へも進出。業績不振となっていたイタリアメーカーのアンサルドブレダを買収し、信号・通信における最大手企業だったグループ企業アンサルドSTSの株式も取得。

 手始めにイタリア国内向け車両を中心に製造し、現在は電気・バッテリー・ディーゼルのトライブリッド車両「マサッチョ」の量産も開始。今後の成長が期待される。

先が読めない鉄道メーカー市場

日立躍進の急先鋒(せんぽう)ともいえる英国の800系列(Class800)。今や英国全土でその姿を見ることができる(画像:橋爪智之)

日立躍進の急先鋒(せんぽう)ともいえる英国の800系列(Class800)。今や英国全土でその姿を見ることができる(画像:橋爪智之)

 ほんの十数年前までは業界トップ3だった企業が買収によって消滅するなど、この先10年が全く読めない鉄道メーカー市場。

 注目すべきは国内市場が一段落後のCRRCがシェアを維持できるか、シェアで2位以下を大きく引き離しているとはいえ、国内の高速列車需要もいずれは頭打ちになることが考えられ、他国への進出が大きなカギを握ることになるだろう。

 もちろん、いまだに実現していない欧州市場への本格進出と、同地域の企業買収についても見逃すことはできない。CRRCほどの企業規模であれば、現地メーカーを買い取れば進出の大きな足掛かりとなることは間違いない。

 CRRCの脅威に、欧州メーカーが立ち向かうことができるのかも注目だ。中国企業に立ち向かうため、場合によってはアルストムとボンバルディアのような大きな合併や買収が再び起こる可能性も0ではないだろう。欧州にはほかに、急成長している

・シュタドラー
・CAF

といった企業もあるので、こうしたメーカーの動向も見逃せない。

 そして日本の日立製作所だが、英国およびイタリア市場で確かな足跡を残した今後、どのような方向性へ進んでいくのか。

 英国の高速鉄道2期区間となるHS2向け車両に加え、台湾新幹線(台湾高鐵)用新型車両も東芝との連合で受注した。世界市場でのさらなる飛躍のために、これからが日立にとっての正念場といえるのかもしれない。

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