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Friday, July 8, 2022

選挙カーの大音量は合法? 実は厳密なルールと意外に知らない音の規制 - BestCarWeb


 2022年6月22日に告示され、7月10日に投開票日を迎える参議院選挙。選挙のたびに気になるのは、大音量で朝から夜まで続く選挙カーによる選挙運動です。

 今回は、選挙カーが大音量で選挙活動をするのは違反ではないのか法律を読み解いてみましょう。また、選挙カーと同じように大きな音量で街を走る街宣車や広告宣伝車といった拡声器を使っている車の騒音問題や規制について考察します。

文/齊藤優太
アイキャッチ写真/hideyuki suzuki – stock.adobe.com
写真/Adobe Stock

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そもそも選挙運動とは?

選挙運動の時間について、午前8時〜午後8時までと規定されている一方で、選挙カーで候補者の名前を連呼する音量についての規制は特にない(molaw11 – stock.adobe.com)

 選挙運動とは、「公職選挙法」という法律に基づき行われ、候補者の当選を目的にした投票を勧める行為となります。そのため、朝から夜まで選挙カーを使って大音量で名前をアピールしたり、ポスターを貼ったりして、候補者が当選するよう運動しているのです。

●公職選挙法の規定されている選挙運動について

 選挙運動は、公職選挙法の規定により定められた範囲内で行わなければなりません。では、公職選挙法には、どのような規定がされているのでしょうか。ここからは、公職選挙法の一部を抜粋して紹介します。

 まず、選挙運動の期間です。選挙運動ができる期間は、立候補の届出が受理されたときから投票日の前日までとされています。この期間であれば、選挙カーを使った選挙運動や街頭演説などをすることができます。

 次に、選挙運動の時間についてです。公職選挙法には、選挙運動の時間について、午前8時〜午後8時までと規定されています。この規定があるため、朝から夜まで選挙カーが家の近所や街中などを走っているのです。

 そして、選挙カーで候補者の名前を連呼したり、街頭演説をしたりするときの音量についてですが、公職選挙法には音量に関する規制がありません。そのため、選挙運動で音がうるさいというのは、仕方ないことと言うほかないのです。

 しかし、公職選挙法をよく読んでみると第140条の2に「連呼行為の禁止」という条文があります。この条文には「選挙運動のため、連呼行為をすることができない」としっかり規定されていますが、これはあくまでも「連呼行為の禁止」の原則です。

 条文には例外として、選挙運動のために使用される自動車・船舶の上では、連呼行為をして良いと規定されています。そのため、選挙カーは、ひたすら候補者の名前を連呼しているのです。

 ただし、学校、病院、診療所、その他の療養施設の周辺では、静穏を保持するように努めなければならないと規定されています。よって、学校や病院などの付近では選挙カーは静かに走り、住宅街や商店街などでは大音量となっているのです。

●実際に住民からクレームはあるのか?

 選挙カーで候補者の名前を大音量で連呼することに対して、地域住民からクレームや批判などはないのでしょうか。各市町村のホームページなどを見てみると、「選挙カーがうるさい!」や「選挙カーを規制できないのか?!」といった意見が寄せられていました。

 しかし、選挙カーで名前を大音量で連呼するのは、法律により認められた行為であるため、選挙管理委員会も規制ができないというのが実情となっています。そのため、地域住民は、選挙期間中の選挙カーがうるさくても、午前8時〜午後8時までは耐えるしかないのです。

街宣車や広告宣伝車(アドトラック)はうるさくてもいいのか?

 選挙カーと同じように、街中を走る街宣車や広告宣伝車(アドトラック)は、大音量で音楽やメッセージを流しています。これらの車両は大音量でもよいのでしょうか。街宣車や広告宣伝車については、各自治体で「拡声機による暴騒音の規制に関する条例」という条例を定めていることがほとんどです。

 大阪府や東京都の条例によると、「音を発生させる装置から10m離れた地点で測定した場合の音量が85デシベルを超える音」を「暴騒音」と定めており、基本的に暴騒音を発生させてはならないとしています。つまり、拡声器から10m離れた場所で85デシベル以上の音量を発生させた場合、条例違反となるのです。

 ちなみに85デシベルとは、パチンコ店の店内、地下鉄の車内、救急車のサイレンなどの音量と同じ程度といわれています。つまり、一般的にうるさいと感じる音であり、会話するのも難しい音量が85デシベルなのです。

●「拡声機による暴騒音の規制に関する条例」の例外

「拡声機による暴騒音の規制に関する条例」には、例外があります。東京都の条例の例外を要約すると次のとおりです。

・公職選挙法に定められている選挙運動や選挙における政治活動で拡声器を使用する場合
・災害や事故などの発生により生命や身体などへの危害を防止するために拡声器を使用する場合
・国や地方公共団体の事業のために拡声器を使用する場合
・電気、ガス、水道、電気通信事業に係る緊急の広報活動のために拡声器を使用する場合
・学校や児童福祉施設などの授業や業務のために拡声器を使用する場合
・公共輸送機関における輸送業務のために拡声器を使用する場合
・祭礼や運動会など地域の行事を行うために拡声機を使用する場合
・公共の利益を実現するために拡声機を使用する場合

 つまり、選挙カーは85デシベル以上の音量で選挙運動をしても条例違反にならないということなのです。また、学校行事や祭礼なども85デシベル以上の音量で実施しても条例違反になりません。

広告宣伝車に関する調査で条例違反していることがわかった?!

 令和2年に渋谷区と富士通株式会社が実施した「アドトラック(広告宣伝車)走行実態調査について」によると、拡声器を使用する広告宣伝車の多くが騒音規制基準を超えていることがわかりました。

 この結果を受け、渋谷区は東京都と連携して条例を周知するとともに、「停車時には拡声器の音量を絞る」や「音量規制区域の上限を遵守する」といったガイドライン設定をするなどの対策を行う方針です。

 音量が大きすぎる街宣車や広告宣伝車(アドトラック)は、条例に違反している場合が多く、今後、規制が厳しくなったり、ガイドラインが策定されたりする可能性が高いでしょう。

●まとめ

 選挙カーをはじめ、拡声器を使って街中を大音量で走っている車は、誰もが一度は見かけたことがあるでしょう。これらの車は、法律上問題がない場合もありますが、各自治体ごとに定めている条例に違反しているケースもあります。

 いずれにしても、生活の騒音であることには変わりない大音量の車は、法律の改正や厳しい罰則がなければ、減少することはないといえるでしょう。

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