「『これは自分が好きなものだろうか』
『他の可能性があるのではないだろうか』
『これでいいのだろうか』
独創的な作品を作るためには
自分に問いかけ、解決していくしかない」
坂本龍一氏=チェ・ソンヨル「シネ21」記者//ハンギョレ新聞社
作曲家兼歌手のユ・ヒヨル氏が、日本の世界的な映画音楽の巨匠であり作曲家である坂本龍一氏の曲を盗作したという疑惑が最近明らかになった。これについて、坂本氏が本紙のインタビューに直接答えた。
坂本氏は「盗作(かどうか)の線引きは、専門家でも一致した見解を出すのが難しい」と明らかにした。そして、「音楽の知識と学習からは独創性を作りだすことはできず、独創性は自分の中にある」と強調した。
ユ・ヒヨル氏は昨年9月、「生活音楽」のプロジェクトの一環として出したピアノ演奏曲「とても私的な夜」が、坂本氏が1999年12月に発表したピアノ演奏曲「Aqua」に似ているという議論について、先月、「類似性を認める」と謝罪した。これについて坂本氏は、会社を通じて出した声明文で、「類似性を確認したが、盗作ではない」と明らかにした。
坂本氏は最近行われた本紙との単独書面インタビューで、「盗作の判断基準は何か」という質問に対し、「(作曲家は)音数の制限された音階に基づいてメロディーと和音を作るため、必然的に多くの曲は似たものになる」と述べ、基準を明らかにすることに対する難しさを露わにした。
作品が似たようなものになっていく具体的な例として、「ある作品は不可抗力で似てしまうこともあり、ある作品は明らかに似させたり、またある作品はそのまま書き写した曲ということもあるだろう」と指摘した。しかし、「その(盗作かどうかの)線引きをどのように判断するかは、専門家でも一致した見解を出すのは難しいと思う」と述べた。
坂本龍一氏=チェ・ソンヨル「シネ21」記者//ハンギョレ新聞社
これに先立ち、坂本氏は声明文を通じて「すべての創作物は既存の芸術からの影響を受ける。そこに自分の独創性を5~10パーセント程度加味すれば、それは立派であり感謝すべきこと」だとしたうえで、「私も、尊敬するバッハやドビュッシーから強い影響を受けている曲がいくつかある」と明らかにしている。
これについて坂本氏は、自分も他の作品からどれくらい影響を受けたのか、それを乗り越えるためにどのような努力をしたのかを打ち明けた。坂本氏は「私の場合、音楽的な素養の90パーセントは洋楽からきていると思う。それ以外には、現代ポップスやロック、日本の伝統音楽の影響も何パーセントかはあるだろう」と述べた。
さらに、「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)を始めた時は洋楽の伝統知識を用いたが、その後、これではだめだという思いから、学んだことを忘れようと努めた」と語った。YMOは1978年にデビューした日本の3人組みバンドで、坂本氏がキーボード、日本ロックの伝説と呼ばれる細野晴臣氏がベース、高橋幸宏氏がドラムを担当した。ポップスとロックンロールに基づく電子音楽に現代音楽の要素も加味するなど、実験的な音楽を追求し、日本のポップスの歴史で一時代を画したという評価を受けている。彼らの曲「Behind the Mask」は、マイケル・ジャクソンやエリック・クラプトンがリメイクしたほど、大変な人気を集めた。
坂本氏は「それまで学んだことを忘れるために接したジャンルが『レゲエ』だった」という。「レゲエは洋楽にはない単純な音楽だが、レゲエの音の森の中には、驚くほど複雑な風景が広がっていることを知った」とし「その複雑さは、決して(たやすくは)姿を現さない」と語った。単にジャンルを変えたからといって独創性をたやすく得られるものではないという話だ。
2018年に韓国で開かれた「Ryuichi Sakamoto Exhibition: LIFE,LIFE」を訪れた坂本龍一氏=Glint提供//ハンギョレ新聞社
坂本氏は、独創的な作品を作ることについて話を続けた。「音楽にはスタイルがあるので、知識と学習で習得することはできる。つまり、才能がなくても知識と技術で作曲はできる」という。しかし、「すべての知識は過去の集積であるため、そこには独創性はない」とし、知識と独創性の間に一線を引いた。
そして、「独創性は自分の中にあるもの」だと語った。坂本氏は「(作品を作るたびに)常に『これでいいのだろうか』『他の可能性があるのではないだろうか』『これは自分が好きなものだろうか』と問いかける。(独創的な作品を作るためには)そのようなかたちで自分に問いかけ、一つひとつ解決していくしかないと思う」と強調した。
坂本龍一氏=チェ・ソンヨル「シネ21」記者//ハンギョレ新聞社
作品で独創性を維持することは、芸術家によって異なるだろうが、坂本氏はそれほどつらいとは感じないと語った。その理由は「新しい響きやメロディーが生まれた時の喜びは格別であるため」だという。また「(独創性を作る過程が)いかに苦しかったとしても、創作の喜びで(苦しさが)消えてしまうため」だと強調した。
1952年生まれの坂本氏は、東京芸術大学の作曲科と大学院を修了した後、『戦場のメリークリスマス』(1983)をはじめ、『ラストエンペラー』(1987)、韓国映画『天命の城』(2017)など、多くの映画音楽に携わった。『ラストエンペラー』ではアジア人としては初めて、米国のアカデミー音楽賞とグラミー賞を受賞した。
坂本氏はステージ4のがん診断を受け闘病中だ。現在、日本の文芸雑誌「新潮」でがん闘病記『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』を連載している。
チョン・ヒョクチュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
訳M.S
からの記事と詳細 ( [単独インタビュー]盗作論争を越えて…坂本龍一氏「私はいつも自分に3つを問う」 - The Hankyoreh japan )
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