マイホームをリフォームする際に、工事費用や税金の負担が軽くなると嬉しいですよね。今回はリフォームを検討している方に向けて、リフォーム減税とはどのような制度か、2023年度における適用条件や制度概要を解説します。本記事を通して最新の情報を理解しましょう。
リフォーム減税とは
リフォーム減税とは、リフォームをおこなった場合に、税金の控除や減額などを受けられる制度です。対象となっている税金は主に所得税と固定資産税の2つですが、条件によっては贈与税や登録免許税、不動産取得税も減額できる可能性があります。次の項目からは、所得税と固定資産税、その他の減税の3種類に分けて、リフォーム減税の制度概要を解説します。
所得税が減額される
所得税の減税は「住宅ローン減税」と「投資型減税」の2種類があります。住宅ローンを借り入れてリフォーム資金を確保する場合は住宅ローン減税、自己資金による現金払いを選択する場合は投資型減税を利用します。
住宅ローン減税は、年末時点におけるローン残高の0.7%を10年間、所得税から控除できる制度です。返済期間が10年以上であることや、工事費用が100万円を超えることなど、複数の要件を満たさなければなりません。借入限度額(年末残高の上限)は2,000万円となり、ローン残高の0.7%を控除できるため、控除額の上限は年間14万円となります。したがって、10年間で最大140万円の所得税控除を受けられます。また、住宅の環境性能が認定された場合(認定長期優良住宅や認定低炭素住宅など)は控除期間が最大13年、借入限度額が3,000万円に引き上げられます。
投資型減税は、標準的な工事費用相当額の10%と、実額の5%が1年間のみ所得税から控除される制度です。2021年までは「ローン型減税」という種類もありましたが、2022年の税制改正によって投資型減税と統合されました。標準的な工事費用相当額には、実際にかかった工事費ではなく、国土交通省が定めた標準的工事費が適用されます。
固定資産税が減額される
リフォームの内容によっては、固定資産税が減額される可能性があります。対象となるリフォームの種類は、「耐震リフォーム」「バリアフリーリフォーム」「省エネリフォーム」「長期優良住宅化リフォーム」の4種類です。リフォーム工事をおこなった翌年の1年間のみ、固定資産税が減額されます。減額割合は以下の通りです。
リフォームの種類 |
減額割合 |
耐震リフォーム |
固定資産税額の2分の1 |
バリアフリーリフォーム |
固定資産税額の3分の1 |
省エネリフォーム |
固定資産税額の3分の1 |
長期優良住宅化リフォーム |
固定資産税額の3分の2 |
2024年3月末までに完工した住宅が対象で、工事完了後3か月以内に申告が必要です。期限が迫っているため、利用する場合は早めに動き出しましょう。
その他の減税
その他の減税対象となっているのは、贈与税、登録免許税、不動産取得税の3つです。
リフォームの資金の贈与を受ける方は、贈与税の非課税措置によって税金の負担をおさえられる可能性があります。たとえば年間110万円までの贈与には、贈与税がかかりません。祖父母や親からリフォーム資金の贈与を受けた場合は、一定の要件を満たしていれば最大1,000万円が非課税になる制度もあります。
リフォーム済みの中古住宅を購入する方は、登録免許税率の軽減を受けられる可能性があります。要件を満たすリフォームをおこなった既存住宅を取得・居住し、取得後1年以内に登記を受けた場合は、建物の所有移転登記にかかる登録免許税率が引き下げられるという特例措置です。
中古住宅を購入した後に耐震リフォームなどを実施した方は、不動産取得税の控除を受けられる可能性があります。耐震基準に適合していない既存住宅を取得し、耐震改修工事をおこなった場合に不動産取得税が控除されます。住宅の築年や取得日など一定の要件を満たすことが必要です。
リフォーム減税を受けられる工事とは
リフォーム減税を受けるためには、対象のリフォーム工事であることが前提です。次の項目からは、リフォーム減税の対象となる以下の5種類のリフォーム工事について解説します。
- 耐震リフォーム
- バリアフリーリフォーム
- 省エネリフォーム
- 同居対応リフォーム
- 長期優良住宅化リフォーム
耐震リフォーム
耐震リフォームとは現行の耐震基準に適合するためのリフォーム工事です。1981年5月31日以前に建築された旧耐震基準の住宅が対象です。木造住宅の場合、耐震基準に適合するリフォーム工事であるかどうかは、工事完了後に以下のいずれかの方法で確認します。
- 一般診断法による上部構造評点が1.0以上で、地盤と基礎が安全であること
- 精密診断法による上部構造耐力の評点1.0以上で、地盤と基礎が安全であること
- 耐震改修がおこなわれた後に住宅の品質確保の促進等に関する法律に規定される住宅性能評価書の交付を受け、その耐震等級にかかる評価が等級1、等級2または等級3であるもの
バリアフリーリフォーム、省エネリフォーム、同居対応リフォームとあわせて実施する場合は、あわせて所得税の控除を受けられます。すべて併用した場合、控除対象限度額は950万円です。太陽光発電設備工事がある場合は、控除対象限度額が1,050万円まで引き上げられます。
バリアフリーリフォーム
一定のバリアフリーリフォームは、リフォーム減税の対象です。所得税と固定資産税の減税対象となる工事内容は、具体的に以下の8つです。
- 通路等の拡幅
- 階段の勾配の緩和
- 浴室改良
- 便所改良
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 出入口の戸の改良
- 滑りにくい床材料への取替え
対象となる工事は国土交通省の告示や通達にて定められており、「高齢者等居住改修工事等」と呼ばれています。介護保険法で定められた住宅改修費等の支給対象とは異なる点にも注意しなければなりません。
居住者の要件も定められていて、要介護または要支援の認定を受けている方や高齢者、障害者が居住している場合に限られます。
省エネリフォーム
省エネ性能が上がるリフォームは、減税を受けられます。対象工事を挙げると、以下の通りです。
- 窓の断熱改修工事(必須)
- 床・天井・壁の断熱工事
- 太陽光発電設備設置工事
- 高効率空調機設置工事
- 高効率給湯器設置工事
- 太陽熱利用システムの設置工事
所得税および固定資産税の減税を受ける場合は、窓の断熱改修工事をおこなうのが必須で、あわせておこなう他の工事も対象になります。以前は所得税を減税する場合、全居室の全窓の断熱改修工事が要件となっていましたが、2022年度税制改正によって一部の窓の断熱改修工事に緩和されました。省エネ改修部位がいずれも2016年の省エネ基準相当に新たに適合することなども条件になります。
同居対応リフォーム
同居対応リフォームとは、親・子・孫の三世代同居に対応したリフォームです。同居に適した住環境を整備することで、世代間で助け合いやすくなります。所得税の減額を受けられる同居対応リフォームは、国土交通省の告示や通達に定められた以下の工事です。
- 調理室を増設する工事
- 浴室を増設する工事
- 便所を増設する工事
- 玄関を増設する工事
調理室にはミニキッチンも含まれます。浴室は浴槽がないシャワー専用の浴室でも問題ありません。リフォーム後、調理室・浴室・便所・玄関のうちいずれか2つ以上あることが必要です。
長期優良住宅化リフォーム
建物の耐久性を高めるためのリフォームを長期優良住宅化リフォームといいます。リフォーム後の住宅が長期優良住宅(増改築)認定を取得することが必要です。認定を受けるにあたっては、住宅のインスペクションを受けることになります。
所得税の減税対象となる長期優良住宅化リフォームの工事内容は、以下の11種類です。建物の構造によって対象工事が異なるため、注意しましょう。
|
木造 |
鉄骨造 |
鉄筋コンクリート造 |
小屋裏の換気性を高める工事 |
〇 |
〇 |
― |
小屋裏の状態を確認するための点検口を天井または小屋裏の壁に取り付ける工事 |
〇 |
〇 |
― |
外壁を通気構造等とする工事 |
〇 |
― |
― |
浴室または脱衣室の防水性を高める工事 |
〇 |
― |
― |
土台の防腐または防蟻のためにおこなう工事 |
〇 |
― |
― |
外壁の軸組などに防腐処理または防蟻処理をする工事 |
〇 |
― |
― |
床下の防湿性を高める工事 |
〇 |
〇 |
― |
床下の状態を確認するための点検口を床に取り付ける工事 |
〇 |
〇 |
― |
雨どいを軒または外壁に取り付ける工事 |
〇 |
― |
― |
地盤の防蟻のためにおこなう工事 |
〇 |
― |
― |
給水管、給湯管または排水管の維持管理または更新の容易性を高める工事 |
〇 |
〇 |
〇 |
固定資産税の減額対象となる長期優良住宅化工事は、耐震改修または熱損失防止改修工事をおこなったうえで、増改築による長期優良住宅の認定を受けている必要があります。
リフォーム減税の申請手続き
リフォーム減税の適用を受けるためには、期限内に自主的に申請することが必要です。次の項目からはリフォーム減税の申請手続きについて解説します。
所得税は確定申告が必要
所得税の減額を受ける場合は、確定申告の手続きが必要です。確定申告のタイミングは、リフォームの工事完了日か工事契約書のいずれかに記載された日の翌年です。2月16日〜3月15日の期間中に申告書と必要書類を税務署に提出しましょう。
住宅ローン減税は1年目の確定申告が必須です。会社員など給与所得がある方は勤務先に必要書類を提出することで、2年目以降は年末調整で対応できます。
固定資産税は減額申請が必要
固定資産税を減額するためには、都道府県・市区町村に申請をおこないます。固定資産税減額申告書の提出が必要で、納税者や家屋の情報を記載することになります。
申請のタイミングはリフォームの工事完了後3か月以内です。期限を過ぎてしまうと、減額を受けられないため、早めに準備しましょう。
申請時の必要書類
所得税の確定申告や固定資産税の減額申請をする際は、必要書類もあわせて提出しなければなりません。必要書類は、減税制度の要件を満たしているか証明するための書類です。リフォーム工事ごとの必要書類は以下の通りです。自治体によって必要書類が異なる場合があるため、詳細は自治体に確認しましょう。
リフォームの種類 |
必要書類 |
耐震リフォーム |
住宅特定改修特別税額控除額の計算明細書
登記事項証明書
源泉徴収票
工事請負契約書の写し
補助金等の額が明らかな書類
増改築等工事証明書または住宅耐震改修証明書 |
バリアフリーリフォーム |
住宅特定改修特別税額控除額の計算明細書
リフォームローン等の年末残高証明書
登記事項証明書
源泉徴収票
工事請負契約書の写し
介護保険の被保険者証の写し
補助金や居宅介護住宅改修などの額が明らかな書類
増改築等工事証明書 |
省エネリフォーム |
住宅特定改修特別税額控除額の計算明細書
登記事項証明書
源泉徴収票
工事請負契約書の写し
補助金等の額が明らかな書類
増改築等工事証明書 |
同居対応リフォーム |
住宅特定改修特別税額控除額の計算明細書
登記事項証明書
源泉徴収票
工事請負契約書の写し
補助金等の額が明らかな書類
増改築等工事証明書 |
長期優良住宅化リフォーム |
住宅特定改修特別税額控除額の計算明細書
登記事項証明書
源泉徴収票
工事請負契約書の写し
補助金等の額が明らかな書類
長期優良住宅の認定通知書の写し
増改築等工事証明書 |
2023年最新版リフォームで使える補助金・助成金
減税制度以外にもリフォームをおこなう際に使える補助金・助成金があります。次の項目からはリフォームで使える補助金・助成金について最新の情報をお伝えします。
こどもエコすまい支援事業
こどもエコすまい支援事業とは、子育て支援と2050年カーボンニュートラルの実現を目的とした事業です。子育て世帯や若者夫婦世帯が、こどもエコすまい支援事業者と工事請負契約を結び、対象工事をおこなった場合に補助金が支給されます。
対象工事は「開口部の断熱改修」「外壁、屋根・天井または床の断熱改修」「エコ住宅設備の設置」のいずれかが必須工事です。必須工事とあわせて実施する「子育て対応改修」「防災上向上改修」「バリアフリー向上改修」「空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置」「リフォーム瑕疵保険等への加入」も補助対象となります。
上限は原則1戸あたり30万円で、工事内容などに応じて最大60万円まで引き上げられます。交付申請期間は2023年3月31日から遅くとも2023年12月31日までです。予算上限に達し次第終了するため、早めの申請をおすすめします。
既存住宅における断熱リフォーム支援事業
既存住宅における断熱リフォーム支援事業は、エネルギー消費効率の改善と低炭素化を促進する断熱改修を支援する事業です。既存住宅で高性能建材を用いた断熱改修をおこなった場合に補助金が交付されます。
対象工事は省エネ効果(15%以上)が見込まれる高性能建材を用いた住宅の断熱リフォームです。断熱材、ガラス、窓を用い住まい全体で断熱改修する「トータル断熱」と、窓を用い居間をメインに断熱改修する「居間だけ断熱」の2種類の公募枠があります。
交付される補助金の額は、対象工事にかかる経費の3分の1以内です。補助上限額は戸建て住宅の場合、1戸あたり120万円に設定されています。直近の公募は2023年6月16日で終了し、次回は2023年6月23日〜8月10日の期間で実施される予定です。
次世代省エネ建材の実証支援事業
次世代省エネ建材の実証支援事業は、新しい省エネ建材の効果の実証を支援する事業です。高性能断熱材や蓄熱・調湿建材など必須製品が決められているため、リフォームの内容にいずれかの必須製品を導入する必要があります。
補助対象経費の2分の1以内が補助金として交付され、改修方法は「外張り断熱(外断)」「内張り断熱(内断)」「窓断熱(窓断)」の3種類です。戸建て住宅1戸あたりの上限額は、外断は400万円または300万円、内断は200万円、窓断は150万円に設定されています。
2023年度のスケジュールは一次公募期間が5月8日~8月25日、二次公募期間が9月4日〜11月30日となっています。審査期間を経て補助金の交付が決定する流れです。工事完了後には実績報告書を提出しなければなりません。
長期優良住宅化リフォーム推進事業
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、既存住宅の長寿命化や省エネ化に資する性能向上リフォームや子育て世帯向け改修を支援する事業です。
特定の性能項目を一定の基準まで向上させる工事が補助金の対象になります。特定の性能項目とは戸建て住宅の場合、「構造躯体等の劣化対策」「耐震性」「省エネルギー対策」「維持管理・更新の容易性」です。他にも「バリアフリー改修工事」「インスペクションで指摘を受けた箇所の補修工事」「テレワーク環境整備改修工事」「高齢期に備えた住まいへの改修工事」が性能向上リフォームに含まれます。さらに「三世代同居対応改修」「子育て世帯向け改修」「防災性の向上・レジリエンス性の向上改修」も対象です。
補助対象リフォーム工事費用の3分の1が補助されます。補助上限額は長期優良住宅(増改築)認定を取得した場合は、1戸あたり200万円です。さらに省エネ性能が認められた場合は、上限額が1戸あたり250万円まで引き上げられます。交付申請期間は2023年12月22日までです。
介護・バリアフリーリフォーム補助金
一定の基準を満たすバリアフリーリフォームをおこなう際に、介護保険を活用して補助金を受け取ることができます。
対象工事は「手すりの取り付け」「段差の解消」「滑りの防止および移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更」「引き戸等への扉の取替え」「洋式便器等への便器の取替え」などが該当します。
上限額は支給限度基準額20万円の9割にあたる、18万円です。要支援・要介護の認定を受けていることや、被保険者の住所と改修住宅の住所が一致していることが条件になります。
各自治体のリフォーム関連助成金
自治体によって独自の補助金制度を設けている場合があります。利用できる補助金制度がないか、事前に確認しておきましょう。
たとえば愛媛県には「耐震シェルター設置工事補助制度」や「松山市木造住宅耐震改修等補助事業」などがあります。耐震シェルター設置工事補助制度は、木造住宅の一室に耐震シェルターを設置する工事に対して40万円を補助する制度です。松山市木造住宅耐震改修等補助事業は、木造住宅の耐震改修工事費用や瓦屋根の耐風改修工事費用が補助されます。
まとめ
マイホームのリフォームをおこなう場合、所得税や固定資産税などの減税を受けられる可能性があります。対象となる工事は耐震リフォーム・バリアフリーリフォーム・同居対応リフォーム・長期優良住宅化リフォームなどです。工事内容によって減税割合が増えたり補助金の適用を受けられたりするため、制度概要を理解して賢く活用しましょう。
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上場企業の財務経理・事業部の管理を約10年勤めた後、2023年4月税理士事務所を開業。
税務申告業務はもちろん、原稿執筆やセミナーなど、税務に関する仕事を幅広く対応している。
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更新日:2023年09月01日