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Monday, October 31, 2022

会社のビジョンに込める「物語」は、共同制作できない “自分たちらしさ”を定義する、会社の指針の作り方 - ログミー

人事施策の失敗は、いきなりバリューをトップダウンで決めた経験

司会者:では今の中平さんのご講演を踏まえて、これから弦さんと中平さんのディスカッションを始めていけたらと思います。弦さん、中平さん、よろしくお願いいたします。

田中弦氏(以下、田中):よろしくお願いします。中平さん、本当にありがとうございました。

中平健太氏(以下、中平):ありがとうございます。

田中:視聴者のみなさまも思ったと思うんですが、ガラパゴスさんの人事の徹底ぶりがすごいなと思います。ベンチャーならではなのかもしれないですけど、先進的な取り組みをどんどん試すことができているんじゃないかな? って、本当に思いました。

視聴者のみなさんは、この間にQ&Aをいただければと思います。最後のQ&Aコーナーや、このディスカッションの間で拾っていきたいなと思います。

まず気になったのは、うまくいかなかった経験。最終的にいろんな失敗とか反発とか、そういったのもあったのかな? って思ったんですけど(いかがでしょう)。

視聴者のみなさんも、人事施策を考えたり、実際その会社の人事施策で「ここはちょっと直したほうがいいんじゃないかな?」とか、いろいろ思ってる方もいらっしゃると思うので、「ここはスコープを外しちゃうとまずいよ」という考え方があれば、ぜひご教授いただきたいです。

中平:僕らのガラパゴスという会社は、2019年から急に会社のやり方を変えた時期があって。そこで僕自身も焦ってたんです。それまで大事にしていた文化だったり行動指針だったりを、チームのみんなの同意もなく「バリューはこうします!」って。

田中:基本的にはトップダウンで。

中平:それを2019年の終わりぐらいにやってしまったことがあって。「あしたからバリューはこれです!」って、トップダウンというか強引にドン! ってやったら、言われた側はやっぱり腹落ちしないじゃないですか。

「え、何? 昨日までのルールは? 急に何?」「何で? その背景は?」みたいな。説明もなくバン! ってやっちゃったことがあるんですよね。それで僕自身反省をしました。

ミッションとビジョンに意思をこめるのが経営者の仕事

中平:そもそも「行動指針とかバリューってみなさんものですよね」って言っときながら、急に僕の個人的な見解でボンって変えて。これはやっちゃいけなかったなって学んで、半年か1年前ぐらいに、ミッション、ビジョン、バリューを全部刷新しますというプロジェクトをやりました。そこではものすごく説明を重ねまして、まだ今もしている感じです。

田中:社員の人たちが参加して?

中平:作る部分に参加したのは、いわゆるSMGとか執行役員以上なんですよ。でも「何でこれに変えるんだっけ?」とか、「これを変えることによってどういういいことがあります」とか、そういうのをすごく丁寧に説明するように心掛けましたね。

田中:ありがとうございます。バリュー以外のビジョンとかパーパスとか、ちょっと上位概念の部分は中平さんが決めている? それともやっぱりある程度選んだ人たちと一緒にやっているんですか?

中平:90パーセントは僕が決めています。95パーセントぐらいかな? わかんないです(笑)。

田中:けっこう決めてるんですね?(笑)。

中平:ミッションとビジョンって、意思が込められていないと意味がないと思っていて。そこには物語があるはずだと思ってるんですよね。物語って、共同制作できない気がしていて。やっぱり誰かの意思、誰かの思いが言語化されるべきだと思う。それはやっぱり創業者の仕事なんじゃないかなと。

言葉尻とか表現の仕方はみなさんと一緒に作るんですけど、最後の魂みたいのは(創業者である)自分が込めなきゃいけないと思ってやっていました。みんなでやりながらも、「この物語を僕が作るんだ」っていう気持ちで、ミッションとビジョンとバリューを作りましたね。

ビジョン作りは経営者が“エゴ”を出してもいい

田中:ちなみにUnipos社は、1年前に会社名をがらっと変えて。

中平:そうだ!

田中:「Unipos1本にします」ってやった時の最初のミッションは、僕が作りました。バリューは15人ぐらいの有志の社員と一緒に作って、その1年後、この4月に僕がパーパスを考えましたね。

中平:パーパスの立ち位置とミッションの立ち位置は、何か違うんですか?

田中:パーパスは存在意義です。ミッションはどっちかっていうと目的、「こういう目的があります」って設定するものかなと。パーパスのほうが上位概念になっていますね。呼び方は違いますけど、作り方はけっこう似てる気がしました。

中平:失敗体験で、昔ビジョンを創業者4人で一緒に創作したことがあるんですよね。その時にやっぱり何か、同意はするんだけど魂がこもってる感じがしなかったんですよね。

田中:それは4人で一緒に考えるプロセスが失敗だったってことですか?

中平:そうそう。どこか委ねちゃってる部分があったし、遠慮してる部分もあったなと思っていて。やっぱりそこはエゴを出していいとこなんじゃないかな? と僕は思ってますね。

田中:そうですね。僕も役員合宿でビジョンとかミッションを作ろうと思って、「こんな感じで俺いきたいと思うんだけど」って言ったら、みんな「それでいいんじゃないっすか」っていう反応で、ディスカッションにならず(笑)。

中平:(笑)。

田中:いきなり決まったという過去があります。そこは創業者とか、思いがある人が責任持ってやるのが重要なのかなと思います。

「ガラパゴスの人ってこういう人」を表す、3つの素養

田中:行動指針は「社員の行動」なので、ある程度みんなと丁寧にディスカッションしたりとか、浸透に時間かけたりとかしたほうが、腹落ち感がある感じはしますけどね。

中平:うん。僕らのミッション、ビジョン、バリューなんですけど、ミッションに「プロセスとテクノロジーで」と入っています。プロセスをハックして効率化して、あいた時間で人がよりヒトらしい仕事をすることが、未来を明るくすると思っているんです。なのでバリューのど真ん中のコアバリューに、「プロセスハック」を置いてるんですね。

下3つがガラパゴスらしさとか、ガラパゴスの在り方で、「ガラパゴスの人ってこういう人だよね」というものなんですね。チームを尊重してチームで成果を出しにいく「チームドリブン」。「オープン&フェアネス」で、誠実に。「フェイル&グロウ」で、失敗を恐れず、早く失敗して早く成長しよう。

僕は、この3つはあとから変えられるものじゃなく、素質とか素養みたいなものだなと思っています。こうじゃない人って、ガラパゴスにくるときついんですよ。だから採用の時にこの3つをめちゃくちゃ見て、計らせていただいてるんですよ。

入る段階でガラパゴスらしい人じゃないと、入ったあときつくて、その人も不幸になっちゃうので。

ミッションで定めた「やり方」と「在り方」

田中:今「計る」とおっしゃいましたけど、採用面接中に実際に計測するんです? それとも点数をつけたりするんですか?

中平:5段階で評価をさせていただきます。それを「HRMOS」にどんどん(記録して)、前の人はどう思ったかとか、各個人のチームドリブンとかオープン&フェアネス、その点数をつけていくんです。だいたい過去に行動した事実を聞くんですよね。それで僕たちが判断させていただいたり。

あとはバリューの上3つは「やり方」だと思っていて、プロセスハックするには、課題のセンターピンを見極めましょう。センターピンを見極めるには、時には俯瞰してバードビューで見ればいいし、わかんなくなったら、その対象相手に憑依しましょうっていう。これはやり方なので、あとからいかようにも得られるスキルだと思っていて。

田中:じゃあ、上と下でけっこう違うんですね?

中平:そうです。上がやり方で、下が在り方なんですよね。だから採用の時は下、マネジメントの時は上と、そういう役割分担をしてたりする感じですね。

マネジメントの定義を作る「教科書」ができるまで

田中:ありがとうございます。ちなみに一番最初にきている質問は、たぶんみなさんめちゃくちゃ気になったんだろうなと思うんですけど、「『マネジメントの教科書』、『1on1の教科書』を作るのに、相当時間も情熱もコストもかけないとなかなかできないんじゃないかなって思ったんですけど、どうやって時間かけて、メンテナンスしたりしているんですか?」と。

みんな(教科書が)欲しいと思ってると思うんですが(笑)、それはさすがにないと思うので、参考までに共有していただいてもいいですか?

中平:知り合いで元リクルートグループの方がいて、その方にファシリテーションをしてもらい、うちの人事の責任者とその方が作戦会議をしながら、週に1回、1.5時間くらい、7人ぐらいのボードメンバーが計3ヶ月ぐらいかけてやりましたね。

田中:1.5時間を毎週3ヶ月......けっこうやってますよね。

中平:けっこうやりました。当時人事企画だった責任者とその元リクルートの方に「そもそもガラパゴスの考えるマネジメントとは何か?」っていうところから、「マネージャーの役割とは何か?」といったところをまとめてもらったんです。毎回1時間半の中でみんなでディスカッションするんですけど、だいぶ違うので。

田中:人によって?

中平:みなさん社会人経験が10年とか15年あるメンバーじゃないですか。そうするといろんな流派があって、いろんな考え方があるので、それをぶつけ合いながら、「でもガラパゴスってこうだよね」っていうのを教科書にしました。1回作っちゃえば5年ぐらい使えると思うんで。

自分たちの会社の「マネジメントスタイル」を話し合うことで得る気づき

中平:このメンテナンスはどうやっているのかというと、金曜日に1時間、幹部7〜8人のGMSっていう会議体があるんですよ。そこで直近の「マネジメントの配置転換どうしよっか?」みたいな具体の話と、抽象的なこの教科書の話を、毎週1時間枠をとって毎週毎週ディスカッションするんです。

直すところがあれば人事企画が直して、またマネージャーやユニットリーダーにインストールしていくっていうことを繰り返しやっています。

田中:ベンチャーじゃない会社と比較する意味はないと思うんですけど、「自分たちの会社のマネジメントスタイルってこうだよね」ってどれぐらい時間かけて話をしてるのかって、けっこう耳が痛いなって、僕も含めて思うんです。

そう思う方は視聴者にもいっぱいいらっしゃるんじゃないかなって思います。本当にマネジメントスタイルは人によってもぜんぜん違いますもんね。バックグラウンドにしても。

中平:そう。そもそも僕は社会人を3年やったあと、27歳で会社を作ったわけじゃないですか。だから僕自身がマネジメントを学んだことがなくて。

田中:なるほど(笑)。

中平:その毎週の1時間半の時間が、すごい楽しかったんですよ。「あ、そういうことなんだ! へぇ!」「会社の要請と個人の欲求の統合だ!」って。そういうことがベースにありましたね。

称賛とは「会社にとっていい行動」をみんなで共有すること

田中:なるほど。あとでQ&Aのコーナーがあるので、ほかのQ&Aのご質問も拾いたいと思いますが、ちょっと先に申し訳ないんですが、Uniposの宣伝をさせてください。

中平:あ、そうだ。そうだ。

田中:我々のサービスは、「心理的安全性を高め、挑戦できる風土をつくる」というサービスをやっております。

先ほどガラパゴスさんのプレゼンにもあったとおり、(重要なのは)称賛だと思うんです。正直僕は、感謝じゃなくて称賛がすごく重要だと思っています。感謝って、言ってみれば「お茶持ってきてくれてありがとうございます」ってことだと思うんですよ。一方で、「お茶を持ってきてくれてありがとうございます。称賛します」って、ちょっとおかしい響きに聞こえませんか?

つまり称賛は、すてきな行動とか、会社にとっていい行動を、みんなで共有することだと思うんですよね。

今、だいたいUniposの月間アクティブユーザーは80パーセントで、要は80パーセントの人たちが称賛を送り合うと何がいいかっていうと、結局、会社の風土が変わるということです。

社内報って、多分5パーセントくらいの人しか見ないと思うんですけど、(Uniposでは)80パーセントくらいの方を巻き込むっていうことができるようになります。

僕と中平さんには実は共通点がいっぱいあるという話を、初対面の時からいっぱいしてたんですけど、続々と共通点が見つかっていて。さっきのプレゼンでも「galapo(ガラポ)」の原形の投票箱のお話がありましたね。僕も投票箱をつくったのが「Unipos」の原形でした。

やっぱり創業者の役割って、自分の理想とする組織はこうだっていうのを、実現していくことだと思うんです。僕は、実はいろんな人が黙っちゃっていて、その人の発言とか活躍を知らないということが、非常に企業にとっては問題なんじゃないかなって思ってます。

「シーン現象」が起きるのは、心理的安全性が低いから

田中:最近「シーン現象」という造語を僕がつくったんですよ。何かというと、会議をしてて、終わる10分前に「何か質問とか意見とかありますか」って、やさしい人は聞くじゃないですか。でもだいたい、シーンとしてるんですよね。なんでかというと、怖いんですよね。心理的安全性が低いってことだと思います。

何か意見を言ったら「若造が」って言われたり、もしくは上司を飛び越えちゃったら出世に響くかなとか。いろんなリスクを想像しちゃうので、言えなくなっちゃう。

自分が言えないんだったら誰が一番言いやすいのかっていうと、やっぱり他人だと思うんですよね。他人が、「あの人、こういうの実はやってたんですよ」「すごい行動してたんですよ」ってシェアする会社であればあるほど、会社の雰囲気が変わるんじゃないかなって思って、「Unipos」というサービスをやっています。

実際、アース製薬さんとかでも、実は「離職」のところで結局効いてきます。「離職率を減らすサービスです」って話じゃないんですけど、先ほど中平さんの話にもありましたが、人間関係は土台なので、「承認」をちゃんとしてあげて「称賛」を会社の中で巻き起こせば、会社はきっと変わっていくと僕は信じているんです。

称賛の共有で作る「人間関係の土台」

田中:あとおもしろいなと思うのは、心理的安全性をいきなり上げようととか、人的資本価値をいきなり上げようとかって、正直危ないと思っています。

なんでかというと、土台がないのに、シーンってしてる状態でいきなり心理的安全性を上げよう、そのために努力しようってやると、すごいつらくなっちゃう。

ましてや最近、人的資本経営って言われていて、いろんなことを開示しようってなってると思うんですけど。開示したあと、悪くなっちゃうこともあるわけですよね。

なので伸ばすためにどうするって考えると、結局「土台」が必要だと僕は思っています。なので「人間関係の土台」をつくるためのサービスをやらせていただいてます。

今、おかげさまで約350社までいきました。継続率は99パーセントくらいになっています。飽きずにずっと続けていけるようなサービスにだんだんなっていったかなと思います。まだ開発中なので、だんだんよくなってきています。

ベンチャーとか製造メーカーとか、いろんな会社さんで今使っていただいています。正直、どこの業種が強いですっていうよりも、まんべんなく全部、さまざまな業種です。

結局のところ、人間関係に悩んでいない会社ってないと思うんですよね。ましてや距離が離れちゃったり、リモートワークの人もいればそうじゃない人もいれば、働き方が多様になってきています。

そうなってくると、称賛をちゃんと共有して、会社をマネージしていくことが必要になっているんじゃないかなと思っています。ぜひ、「Unipos」をご検討いただけるとうれしいなと思っています。

心理的安全性を高めたほうが、マネジメントも楽になる

田中:今ざっくりお話しましたけど、今後も心理的安全性やパーパスについて、そもそもパーパスってどうつくるのかといった、専門的なウェビナーもこれから開催いたしますので、ぜひよろしくお願いします。

あと本(『心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100』)ですね。昨日10月12日に発売されました。ありがとうございます。大きめの本屋さんに行くと、今だと1週間くらい平積みになってると思いますので、ぜひお手に取っていただきたいなと思ってます。

僕も昔は“詰め詰め社長”だったので、心理的安全性が高いとはとても言えなかったと思うんですけど、僕なりに反省して、失敗して。明らかに心理的安全性を高めていったほうがマネジメントも楽になると思っています。ぜひパラパラッとお手に取って見ていただけると幸いです。

中平:みなさまぜひ、アンケートのご回答のほどよろしくお願いします。

田中:ありがとうございます。僕らだけじゃなくて、ご登壇者の方もフィードバックをはじめ、コメントをいただくとうれしいので、ぜひよろしくお願いいたします。

<続きは近日公開>

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