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Friday, December 30, 2022

“幻の味”来春復活 「たまりせんべい」の江川米菓店(福島県喜多方市) 「みそだまり」入手 創業130年契機に - 福島民報

「みそだまり」を使い、試作品作りに励む村井さん
「みそだまり」を使い、試作品作りに励む村井さん

 福島県喜多方市を代表する土産品「たまりせんべい」を製造する江川米菓店は来年春ごろに130年前の創業当時の煎餅を復活させる。みそを仕込んだ際に出るしょうゆのような液体「みそだまり」を煎餅に塗って仕上げる製法で、強い甘みとコク、ほのかにみその風味が感じられる「幻の煎餅」になる。5代目社長村井法子さん(44)は「みそと煎餅という日本伝統の食文化を掛け合わせ、創業時の味を再現したい」と決意を新たに、試作品作りを進めている。

 1892(明治25)年創業の江川米菓店は創業時、家庭用のみそを造っており、醸造過程で出る、みそだまりを煎餅に塗って販売していたという。2016(平成28)年に店を継いだ村井さんは新工場の設立による販路拡大など「たまりせんべい」の魅力を広めてきた。「店の原点となった煎餅を作り、次世代につなげたい」。2022(令和4)年に創業130年の節目を迎えたのを機に、復活へ動き出した。

 ただ、みそだまりはうま味成分の塊で販売している会社が少なく、入手は困難を極めた。それでも粘り強く全国のみそ醸造会社に問い合わせ、見つけ出したのが秋田県湯沢市の石孫本店だった。石川裕子代表(73)は、直接店を訪ね、たまりせんべいの歴史を熱く語る村井さんの姿に共感し、依頼を快諾した。

 みそだまりの再現は創業家の3代目故江川治三郎さんへの恩返しの意味もある。村井さんが4代目の父五十嵐利光さん(75)とともに“師匠”と慕う3代目から、煎餅の乾燥時間や焼き方のこだわり、職人としての心意気など数多くの教えを授かった。ケアマネジャーの仕事を辞めて煎餅作りの世界に飛び込んだ村井さんが壁にぶつかる度に、「楽しそうに作っているから、この仕事に向いているよ」と背中を押してくれた。再興への思いは人一倍強い。

 現在進めている試作品作りでは、熟成期間の違うみそだまりを使用したり、両面・片面塗りを試したりしている。当時の味に近づけようと試行錯誤する日々が続く。

 多くの人に味を知ってもらおうと、各種イベントなどで無料配布する予定だ。パッケージも当時に近いデザインを考えている。「煎餅を喜多方ラーメンや日本酒に負けない物産に育てていく」。老舗5代目の表情に強い覚悟がにじんだ。

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