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Thursday, March 16, 2023

デュルバルマブと併用する新規抗CTLA-4抗体 - 日経メディカル

 2023年3月15日、抗悪性腫瘍薬トレメリムマブ(遺伝子組換え)(商品名イジュド点滴静注25mg、同点滴静注300mg)が薬価収載された。同薬は、2022年12月23日に製造販売が承認されていた。適応は「①切除不能な肝細胞癌、②(25mg製剤のみ)切除不能な進行・再発の小細胞肺癌」、用法用量は「①デュルバルマブとの併用において、成人に300mgを60分間以上かけて単回点滴静注。ただし、体重30㎏以下の場合の投与量は4mg/㎏(体重)とする。②デュルバルマブおよび白金系抗悪性腫瘍薬を含む他の悪性腫瘍薬との併用において、成人に1回75mgを3週間間隔で4回、60分間以上かけて点滴静注。その後、7週間の間隔を空けて、75mgを1回60分間以上かけて点滴静注」となっている。

 肺がんの80%以上は、非小細胞肺がんNSCLC)といわれており、多くは診断された時点で進行または転移が認められ、5年生存率も低い。従来から肺がん治療には、外科治療、薬物療法としてシスプラチン(ランダブリプラチン他)などのプラチナ製剤を含む細胞障害性抗がん薬、放射線療法がある。

 また、肝細胞がんHCC)は原発性肝がんの約90%を占めており、多くの患者は、C型肝炎、B型肝炎、アルコール性肝炎、脂肪性肝炎などの慢性肝疾患を有している。HCCは、通常は無症状のまま発症して進行することから、病期が後期になった段階で発見されることが問題となっている。さらに、HCC患者の多くは肝硬変を有しており、悪性腫瘍および肝臓の原疾患の両方を管理する必要があるため、HCCに対する治療は医療上複雑で困難であるといわれている。従来、HCC治療では外科治療、穿刺局所療法(ラジオ波焼灼療法)、肝動脈塞栓療法、マルチキナーゼ阻害薬のソラフェニブ(ネクサバール)による薬物療法、放射線療法などが行われていた。

 がん微小環境において免疫チェックポイント機構には、プログラム細胞死1(PD-1)、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)やヒト細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)などのT細胞表面分子を介した経路や制御性T細胞、骨髄由来制御性細胞など様々な因子が関与していることが解明されてきた。このことから、近年、NSCLCやHCCを含め、多くのがん治療のうち、薬物療法ではがん免疫療法、特に非特異的免疫調節制御因子に抑制的に作用する免疫チェックポイント阻害薬を中心とした治療が行われている。また、免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1/L1抗体と抗CTLA-4抗体とは免疫応答における作用点が異なりながらも相補的であると考えられ、併用により抗腫瘍効果の増強が期待されている。

 トレメリムマブは、CTLA-4に対するヒト型抗ヒトCTLA-4モノクローナル抗体であり、CTLA-4とそのリガンドである抗原提示細胞上のB7.1(CD80)およびB7.2(CD86)分子との結合を阻害することにより、活性化T細胞における抑制的調節を遮断し、がん抗原特異的なT細胞の増殖、活性化および細胞傷害活性の増強により腫瘍増殖を抑制すると考えられている。なお、同じ抗CTLA-4抗体としてイピリムマブ(遺伝子組換え)(ヤーボイ)が他の抗悪性腫瘍薬との併用における「切除不能な進行・再発のNSCLC」などにて使用されている。

 化学療法歴のない切除不能な進行・再発のNSCLC患者(日本人を含む)に、同薬、抗PD-L1モノクローナル抗体のデュルバルマブ(遺伝子組換え)(イミフィンジ)、プラチナ製剤を含む化学療法を併用投与した国際共同第III相試験(POSEIDON試験)において、有効性と安全性が確認された。また、全身化学療法歴のない切除不能なHCC患者(日本人を含む)に同薬とデュルバルマブを併用投与した国際共同第III相試験(HIMALAYA試験)において、有効性と安全性が確認された。海外では、2022年12月時点、米国およびアラブ首長国連邦で「切除不能なHCC」の適応で、加えて米国では「転移性NSCLC」の適応で承認されている。また、デュルバルマブは、同薬承認と同時に「治癒切除不能な胆道癌」および「切除不能なHCC」の適応追加が承認された。

 副作用として、主なものは発疹(21.6%)、そう痒症、下痢(各10%以上)などであり、重大なものは間質性肺疾患(3.2%)、大腸炎(3.3%)、重度の下痢(2.1%)、消化管穿孔(0.1%)、筋炎(0.8%)、心筋炎(0.4%)、膵炎(1.5%)、脳炎(0.1%)、インフュージョン・リアクション(2.6%)が報告されており、甲状腺機能障害、副腎機能障害、下垂体機能障害、肝機能障害、肝炎、腎障害、重度の皮膚障害、神経障害の可能性があるので十分注意する必要がある。

 薬剤使用に際しては、下記の事項についても留意しておかなければならない。

●投与により副作用が発現した場合は、添付文書の「用法及び用量に関連する注意」の記載を参考に、休薬などを検討すること

●承認までの治験症例が極めて限られていることから有効性および安全性に関するデータ収集のために、全症例で使用成績調査を実施すること

●医薬品リスク管理計画書(RMP)では、重要な潜在的リスクとして「胚・胎児毒性」「臓器移植歴(造血幹細胞移植歴を含む)のある患者での使用」が挙げられている

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