稲盛和夫「オンボロ会社入社が贈り物」だったワケ | 稲盛和夫のことば 混迷の時代を生きる | 稲盛和夫 - 毎日新聞

稲盛和夫のことば（32）

大学卒業後、つぶれかけた会社にようやく入社することができました。それは神様がくれた最高の「贈り物」でした。

「『成功』と『失敗』の法則」致知出版社（123～128ページ）

挫折続きの人生に終止符

　大学卒業後、私は松風工業というつぶれかけた会社に、ようやく入社することができました。そんな私を見て、周囲は「稲盛君はかわいそうだ。 大学でよく勉強し、成績もよかったはずなのに、オンボロ会社にしか入れなかった。 彼の人生はどうなっていくのだろう」と言っていました。

　しかし、いま思えば、それは神様がくれた最高の「贈り物」だったのです。私を赤字会社にしか行けないようにし、ファインセラミックスの研究開発という仕事に打ち込むしかできないようにした――そのことが挫折続きの人生に終止符を打ち、新しい人生の扉を開いてくれたのです。

　私は不十分な設備しかない研究室で、当時未（いま）だ注目されていなかったファインセラミック材料の研究に、寝食を忘れ一心不乱に打ち込みました。その結果、新しい材料の開発に成功するなど、素晴らしい成果をあげることができました。 しかし、新たな技術開発をめぐり、上司と対立し退社せざるをえなくなってしまいました。

　そして、そのような私を支援してくださる方々が、京セラをつくってくださいました。といっても、できたばかりの会社はいつつぶれるか分かりません。社員を路頭に迷わせないためには、以前にも増して、必死に働くしかありませんでした。

　そんな私を見て、周囲の人々はこう評しました。

　「あいつは運のない男だ。27歳という身空で、先行きの知れない会社の先頭に立ち身を粉にして…

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