料理好きな俳優・渡辺早織さんが心に寄り添った手料理を紹介する新連載です。ほろ苦かったり、甘酸っぱかったり、思い出とつながったご飯は何だか忘れられません。明日を頑張るあなたの活力になりますように……。そんな思いを込めた料理エッセーです。今回、詳しい作り方はフォトギャラリーでご紹介します。
とっておきの朝のにおい。
淹(い)れたてのコーヒーの香ばしいにおい。
窓を開けると飛び込んでくる太陽を含んだ生き生きとした緑のにおい。
人それぞれ、特別な気持ちをもたらしてくれる朝のにおいはきっとある。
いつからか、私にとって朝の時間は大切なものになっていて、受験生の時も夜な夜な勉強するのは苦手で早朝にしていたし、今でも家の周りをくるりとランニングする時は決まって朝だ。
芸能活動をはじめて、オーディションで朝の生放送番組が決まった時も、「夜番組じゃなくて良かった」と妙に安心したのを覚えている。
私の朝型は、まぎれもなくうちの母に由来するものだ。
朝が楽しみになる魔法のにおい
料理好きな母は、私が高校生くらいの時だったか、朝からふわふわのシフォンケーキをよく焼いてくれた。
私はその甘くやさしい香りで目を覚ますこともしばしば。「今日はコーヒー味かなぁ」と答えあわせをしに、台所に駆けて行くのだった。
ひとつのことに凝り出すと止まらない母が焼くシフォンケーキは、1台でとどまらず、だいたい2台焼いてあって、しかもそれが毎朝のことだった。
年頃の娘たちはかわいげもなく「毎日ケーキを食べたら太るから嫌だ」なんて、いかにも反抗期らしい態度だったけれど、やっぱりとても嬉(うれ)しかった。
だからシフォンケーキの焼けるにおいは、私にとって特別な朝のにおい。
目覚まし時計が必要なくなるくらい、朝が楽しみになる魔法のにおいなのだ。
ふと、シフォンケーキを作ってみたくなる。
思い返すと、最近全然食べていない。
自分1人ではおそらく作ったことがないシフォンケーキ。
明日の朝はシフォンケーキを焼こう!
からの記事と詳細 ( 目覚まし時計×夏みかんのシフォンケーキ 懐かしくてやさしい母の味 - 朝日新聞デジタル )
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