「私が年寄りだから無視するのかもしれないが、まだ生々しいです。ひとつひとつ全部記憶しています。こうした法律を作るなら私に尋ねるべきでしょう。いくら私がよくわからないといっても正しいか正しくないかはよくわかっています」。 慰安婦被害者の李容洙(イ・ヨンス)さんは怒った。慰安婦関連団体に対して事実を指摘する場合でも名誉毀損行為とみて禁止できる法案が発議されたというニュースが伝えられた23日の電話でだ。 ◇被害者も知らなかった被害者保護法 李さんの憤怒は大きく3通りだった。最初に、被害者の名誉を保護するために法律を改正すると言いながら被害者の意志は尋ねることもなかったという点。2番目に、その上で名誉を傷つけてはならない対象に慰安婦関連団体までそっと含めた点。3番目に、補助金管理法違反などの容疑で裁判を受けている無所属の尹美香(ユン・ミヒャン)議員が共同発議者として名前を上げた点だ。 法案の問題点を自らも否定できなかったのか、これを代表発議した与党「共に民主党」の印在謹(イン・ジェグン)議員は発議してから12日で法案を撤回した。各界から批判が提起され民主党が党レベルで発議した法案ではないと早くから「損切り」した直後だった。 ◇「撤回され幸い」そのままやり過ごすには… 結果的にはなかったことになったが、幸いだとそのままやり過ごすことではない。政府与党が強調してきた歴史問題解決の原則である「被害者中心主義」を自ら否定したのは深刻な問題であるためだ。 この法案が発議されたのは13日。慰安婦被害者をたたえる日でもある翌日に女性家族部の鄭英愛(チョン・ヨンエ)長官はSNSに「旧日本軍慰安婦問題を歪曲し被害者の名誉を傷つけようとする試みに対しては法改正などの措置を通じ厳正に対応していく」と明らかにした。 直後にあるメディアは印在謹議員の法案発議のニュースを伝え、女性家部関係者が「民法と違い一種の特別法の性格で慰安婦『個人』に対する名誉毀損と関係なく慰安婦問題に対する歪曲された事実を流布し歴史を歪曲する場合、厳格に処罰するということ」と話したと報道した。 今回の法案を単純に与党議員が自主的に発議したのでなく政府とも事前にある程度コンセンサスができていたという見る余地がある部分だ。 ◇最初から「被害者団体中心主義」だったのか 文在寅(ムン・ジェイン)政権が被害者中心主義を持ち出したのは前政権でなされた「2015年12月28日の韓日慰安婦合意を検証しながらだ。外交部長官直属で組まれた検証タスクフォースは当時の合意が被害者中心主義に反するため瑕疵が深刻だと結論を下した。 だがタスクフォースは検証過程で被害者ではなく関連団体の意見を主に聴取した。政府が指向するのは「被害者中心主義」ではなく「被害者団体中心主義」ではないのかという懸念が出てきた理由だ。 昨年5月に李容洙さんが初めて正義記憶連帯(旧韓国挺身隊問題対策協議会)と尹美香議員(元挺対協代表、正義連理事長)を批判したことも、本質は被害者中心主義と相対していた。代表的なのが、尹議員が2015年の慰安婦合意当時に日本が拠出する10億円に対し事前に知っていたという内容だ。 正義連の説明によると、尹議員は合意前日に外交部から10億円について伝え聞いた後、法律諮問委員会を招集した。そして関連判断を翌日に保留した。 ◇被害者のけ者にする権利、だれが与えたのか 単純にあらかじめ知っていながらなぜ後から違う話をしたのかということではない。合意の主要内容を事前に認知しながらなぜ被害者には知らせなかったのかということだ。10億円に対する判断は自分たちがすれば良いと考えてそうしたのなら、これは被害者をのけ者にしたのと変わらない。当時もいまも、李さんの憤怒はここから始まる。 事実今回問題になった法案の趣旨自体は望ましい。意図的に慰安婦被害と関連した真実を歪曲し、とても口にできないような虚偽で被害者と遺族の名誉を毀損できないようにしようということに反対する人はない。 だがおかしなことに慰安婦関連団体が含まれ、尹議員が参加したことでこうした本質は毀損された。 ◇「被告人尹美香」議論は予想できなかったか 該当事案に対して利害当事者も同然である「被告人尹美香」が共同発議者に含まれた時に起きる波紋と熱い議論を尹議員本人が果たしてわからなかったのだろうか。自身が主張してきた通り慰安婦被害者のために一生を捧げたというのならば、被害者のための気持ちが本当ならば、今回の法案と関連しては自ら一歩退くべきという指摘が出る理由だ。 「どうしてこんな行動をするのですか。どうして自分の思い通りにしようとするのですか。私は大きな声を出さないようにしていたが、とても恨めしくて…」。 国が守ることができずあんな目に遭った。ところが国を取り戻して76年が過ぎた今日まで、なぜ李容洙さんは恨めしくしなければならないのか。だれかが答えなければならない。
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