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Monday, April 18, 2022

鉄工会社「レタス生産」挑戦 - 読売新聞オンライン

 トラック部品の製造を手がける大田区羽田の鉄加工会社「大塚鉄工」が、人工光を駆使して屋内で野菜を生産する「植物工場」の経営に乗り出した。自動車業界では、ガソリン車より少ない部品で作れる電気自動車(EV)へ急速に移行が進む。本業の先行きが不透明感を増す中、事業の多角化で生き残りを図る。(中村俊平)

■「ものづくりと共通」  

同社の一室に設けられた野菜の試験栽培場では、発光ダイオード(LED)照明がともる多段式の棚の中で、生育具合や品種も様々なレタスやバジルが栽培されていた。本格栽培に向けて室温や湿度、光の強さを変えながら理想の味、食感を追求しているところだ。大塚章弘社長(39)は「野菜栽培の奥深さはものづくりと共通ですね」と笑う。

 1939年創業の同社は、金属にプレス機で圧力を加えて成形する「鍛造」の工法を得意とし、トラックや建設機械で使われる鉄製部品を製造している。中でも「トランスミッション」などエンジン関連を中心とするトラック部品が全体の売り上げの7割を占める。

 しかし、近年は脱炭素化への関心の高まりから大手自動車メーカーが次々とEVの生産強化を打ち出しており、EVが普及すれば、同社の部品の注文がほぼ消滅しかねないという。大塚社長は2年ほど前から、「いつ激動が起こるのかわからず、流れに身を任せていてはいつか 淘汰とうた される」と異業種への参入を模索。コロナ禍により元請け工場からの受注減、物流停止に伴う資材やエネルギーのコスト高に見舞われ、危機感はさらに高まった。

■事業の柱に  

 植物工場は屋内の温度や湿度、養分濃度など20近くの項目をセンサーで管理しながら、安定的な品質、生産を実現する。同社では本業でも製造機械の稼働状況をセンサーで確認しながら、故障の防止に役立てており、そうした経験も生きると考えた。天候に左右されずに生産が可能なことや、無農薬のため洗わずに食べられたり、大消費地の東京で収穫したばかりの農産物を提供できたりする点も強みと捉えた。

 昨秋には工場での野菜生産を研究する玉川大学農学部(町田市)の技術指導を受け、社内の一角に試験栽培場を設置し、技術習得に取り組む。また植物工場とするべく、京急大鳥居駅(大田区)近くの4階建てビルを取得。3月14日に同社の関連会社「ファームハネダ」の名称で法人化した。

 来年春頃までに本格栽培を始める予定。植物工場のビル1階に直売所を設けるほか、都内のスーパーなどにも販路を広げたい考えだ。大塚社長は「事業環境の変化で部品製造の仕事が減っても、それを補うだけの事業の柱に育てたい」と意欲を燃やしている。

 長引くコロナ禍で国内経済の回復が見通せない中、約4000の町工場が集まる大田区では、自ら新たな製品を開発するなど、事業を多角化しようとする動きが広がっている。

 区の外郭団体「区産業振興協会」は、区内中小・零細企業を対象に、新製品開発のための試作品製作費を最大500万円支給する「新製品・新技術開発支援事業」を進めている。同協会によると、コロナ禍前の2019年度は22件だった応募件数が、20年度は52件に拡大し、21年度も39件に上ったという。

 最近は助成金の応募以外にも、試作品を持ち込んで販路や商品化などの助言を求める町工場が相次いでいるといい、同協会は開発パートナーをあっせんするなどして後押ししている。同協会の担当者は「下請け一辺倒から、自助努力で業績を上げたいと考える企業が増えてきた」と話している。

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