マサチューセッツ工科大学(MIT)を中心とする研究チームは、生体組織や臓器に粘着テープのように貼り付けて傷口を塞ぐ医療用パッチを開発した。貼り付けるだけで利用でき、従来の縫合糸に代わる組織修復剤として期待できる。研究成果は『Science Translational Medicine』誌に2022年2月2日付で公開されている。
開発した医療用テープは「ダクトテープのようなものだ」と研究チームは述べている。ダクトテープはアメリカで一般的に用いられている粘着力が強いガムテープで、応急的な補修作業などに使用される。開発した医療用テープは粘着面と非粘着面で構成されており、使用前の粘着面は乾いているが、水分を含む組織に接触すると数秒で強く結合し、1カ月以上保持される。柔軟性があるため臓器の動きに合わせて伸縮し、傷が完全に治癒すると徐々に分解するという。
この医療用テープは、研究チームが2019年に開発した両面テープを基にしている。この両面テープは、オムツに使用される吸収性材料ポリアクリル酸を含んでおり、水分を吸収すると一時的に組織に付着する。ポリアクリル酸により付着している間にNHSエステルが組織中のタンパク質と反応して、より強固に結合するという原理だ。またテープの形状を維持するために、ゼラチンやキトサンのよう天然成分を添加している。
この両面テープは異なる組織を強力に結合するが、実際に2つの組織を重ねて結合する機会は少ないため、片面テープにして消化管の漏出や裂傷の修復に利用することを目指した。新しい片面テープは、ゼラチンなどの代わりにポリビニルアルコールを使用し、腸の傷が治癒するのに十分な期間である1カ月以上は維持することとした。また、周囲の組織に付着しないように、非粘着面を作った。非粘着面はポリウレタンでできており生分解性を有する。組織より硬いと腸のぜん動運動を阻害し、また柔らかすぎると組織が破裂する恐れがあるため、非粘着面は腸の組織とほぼ同じ伸縮性と硬さを持つように調整した。また粘着層を少し伸ばした状態で非粘着層と重ね合わせることで、水分を含んで粘着面が膨張した際に非粘着層との大きさに差が出ることを防いでいる。
ラットの大腸や胃、小腸、ブタの大腸の傷を塞ぐ実験で、この医療用テープは傷が治癒するまで強い接着力を維持した。縫合糸による手法と比べて、傷跡や炎症は最小限に抑えられた。またラット皮下に埋没する試験では、約12週間で生分解し、毒性が認められないことを確認している。
研究チームは、この医療用テープが消化管の傷を安全に修復できる可能性があるとして、FDAの許可を得て臨床試験に進みたいと考えている。また消化管だけでなく他の臓器に応用できる可能性があるとしている。
関連リンク
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An off-the-shelf bioadhesive patch for sutureless repair of gastrointestinal defects
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